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夢先案内猫[詳細]

20世紀が生んだ
最も独創的な空想力を誇り得る
幻想画家の巨匠

渋澤龍彦(『幻想の画廊から』より)



■目次より

1章 猫は私の上に乗っかり、私に枕のひとつを取るのを許すと、
   すかさずこう話しかけてきた
   「私は夢先案内人だ……」


2章 婦人は私の脚に軽く触れながら、
   猫の背中や腹部への愛撫を止めなかった。
   そして、「私の所へいらっしゃいな……」


3章 しかも彼女が猫を自分にくれとでも言いだしたかのように、
   私は内心いわれのない恐怖心に
   さいなまれるのだった。


4章 私は猫に夢の内容を話して聞かせた。
   猫は注意深く話に聴き入った。
   「それらの意味するものは明らかだ……」

5章 フリオは裸になって皮の長椅子の上に横たわり、
   その上に猫が坐り、少年の胸、腹、
   そして下腹部といった具合に順々になめていた。


6章 猫が姿を消してから七日目に、私は発熱した。
   だが、それにもかかわらず、
   私は彼女に同行する準備をしていた。

7章 その後、全員が顔をあげ、
   前方の小舟の形をした玉座に視線を向けた。
   そこには静かにそして晴れやかに、「猫」が坐っていた……。




■著者紹介:レオノール・フィニ Leonor Fini 1908-96

アルゼンチン人を父に、イタリア人を母に、南米ブエノス・アイレスで生まれる。幼年時代はトリエステで過ごし、17歳で個展を開いたのを機に家族と離れ、単身パリに出て、第二次世界大戦直前までとどまる。
エリュアール、エルンスト、キャリントン、バタイユらと親交を結ぶが、シュルレアリスムのグループに属することはなかった。その後、ローマ、パリ、コルシカと移り住みながら、幻想性に富んだ絵画をはじめ、バレー、オペラ、映画などの衣裳や装置のデザイン、宝石デザイン、小説など、幅広い芸術活動をすすめる。




■関連図書

恐怖の館 世にも不思議な物語 レオノーラ・キャリントン 2600円
夢魔のレシピ 眠れぬ夜のための断片集 レメディオス・バロ 2500円
星界小品集 ゼンマイ仕掛けのスペースオペラ パウル・シェーアバルト 1600円
超人の午餐 ファンタスティック・リアリズム ルイ・ポーウェル 1600円
花の知恵 小さな命の神秘世界 モーリス・メーテルリンク 1600円
ムットーニ・カフェ 24個の機械仕掛けの夢 武藤政彦 2900円
メランコリー・ベイビー 星降るマントの空の下 高泉淳子 1500円



■書評

『NEKO』(2005.8月)
「…フラゴナール、マネ、スタンラン、ルノアール、ピカソ、ボナール等々の絵の中の猫がいっせいに動き出す描写は圧巻で、それぞれの元絵をすべて見たくなる。奔放なイメージで繰り広げられる、魅惑的で官能的なファンタジー」

中条省平氏(『マリ・クレール』1990年2月)
「シュルレアリスム周辺の美人芸術家といえば、ジュリエット・グレコに似た美貌の画家レオノール・フィニを忘れることができない。彼女は小説も書く才女で、本書は猫への〈愛〉をめぐる幻想小説。谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)やボードレールの「猫」詩篇と同じく、ここでも猫は〈女〉の隠喩である。ただし、前二者とちがって『夢先案内猫』の主人公は女性である。したがって、この物語の猫への愛はまた〈レスビアニズム〉の隠喩でもあるのだ。主人公と猫との交流もなんともエロティックだが、登場するレスボスの女たちもじつに淫靡だ」



■関連情報

2005.6.18〜フィニ展、待望の開催!

パリ、ロンドン、ニューヨークで活躍した女性シュルレアリスト、レオノール・フィニ(1907-1996)の油彩・水彩をはじめ、オペラやバレエの舞台衣装や仮面など、約100点の作品を通して、フィニの瞑想と沈黙の世界を紹介。

・6月18日〜7月31日   Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
・8月31日〜9月11日   大丸ミュージアム・梅田(大阪・梅田)
・9月23日〜11月3日   群馬県立近代美術館(高崎市)
・11月11日〜12月25日 名古屋市美術館



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