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大ザッパ論2

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『大ザッパ論2』著者からのメッセージ

     2002年1月8日 (火) 夜


 「ウィー・ウィル・ミート・アゲイン(また会おうや)」と言って友人がレーザーディスク・プレーヤーをわが家に置いて帰ったのは、『大ザッパ論2の本当の物語』となる日記をつけ始める四日前のことであった。その友人は筆者に昔、真新しいヴィデオやカメラもくれたことがある。それはまだ現役で使用に耐えているが、今回のプレーヤーはソニーの89年製で、もう長年使用していなかったそうだ。「埃を払ってスイッチを入れてみるとゴトゴト音がするけど、どうにか作動することがわかったんや。それでゴミとして捨てるよりかは大山のところへ持って行こうと考えたわけや。CDもCDVもかけられるで。DVDはあかんけどな」。この友人の言葉に「ゴミをくれるとは、ワシは産廃業者か!」と心思わないでもないが、CDプレーヤーにもなるのならありがたいし、レーザーディスクもどういうわけか美空ひばりのものを1枚所有していたことを思い出し、「ま、置き場所はどうにかなるし、もらっておこう」と決めた。友人はプレーヤーと一緒にポール・マッカートニーの『ヤア! ブロード・ストリート』のレーザーディスクも持参してくれたが、これは昔ヴィデオを買って所有しているので、さほどありがたみはない。それはそうとして、『大論2』は去年12月の12日頃には店頭に並び、工作舎初のダウンロード・ブックになる『大論2の本当の物語』も早々に申し込みがあったらしい。その『本当の物語』は11月8日の日記分で終えたが、その後の1ヵ月間はまたいろいろなことがあった。日記をもう1ヵ月延長して、本発売直前の12月8日まで書いておけば、『本当の物語』は1000枚くらいになったはずだが、もっと面白い読み物になったと思う。少々残念だ。しかしその1ヵ月は主な行動や出来事を毎日ごく簡単にカレンダーにメモしておいたので、今から日記風に再現できないこともないが、それでは捏造になるし、第一思い起こして書く時間が今はない。ひとつだけ書くと、筆者のCDプレーヤーは『本当の物語』を書き終えて数日して壊れてしまった。スイッチを入れても液晶表示が光らず、作動もしない。パイオニアの高級機で、CDプレーヤーとして初めて買ったもの、もう10数年も使用している。2度修理に出したこともあり、そろそろ寿命かと思いながら、やはり愛着がある。「ウィー・ウィル・ミート・アゲイン」と機械に内心囁きながら、11月17日、四条寺町の大きな電気店に持参して修理に出した。1万円以上かかるようなら、産廃物として処分してもらうことを伝えた。それにしても『大論2』を書き上げた直後で本当によかった。修理中は仕事部屋のステレオ装置でCDは楽しめないなと思っていたが、9月に友人からもらったレーザーディスク・プレーヤーの存在を思い出した。だが機械が古いせいか調子がよくない。CDによっては音が途切れたり、ひどい雑音が始終入ったりする。一方、修理に出したプレーヤーは1ヵ月経っても電気店から修理完了の電話がない。ついに12月中旬に連絡があって引き取りに行くと、修理代は無料。修理伝票を見ると、スイッチ部のハンダが割れていて、それを直しただけ。それでサーヴィスしてくれたかなと思い、厳重なダンボール箱に入ったプレーヤーをそのまま持って帰った。ところが蓋を開けてびっくりのたまたまの箱。プレーヤーの両側には茶色の化粧板がついているが、その片側の下方が無残に壊れて、白木が剥き出しになっている。明らかに機器を落下させたことがわかる。かわいそうに、修理に出してさらなる修理が必要な羽目に遭遇したようだが、この化粧板の在庫はなく、それで修理代を無料にしたらしい。翌日電話で確認するとやはりそうであった。多少立腹したが、ま、その話はもうよい。不細工に壊れたプレーヤーだが、再会できたし、いちおう調子よく動いている。それよりもこのようにちょうど2ヵ月ぶりに『本当の物語』の後日談を書く羽目になった経緯について書かねばならない。実は発売して1ヵ月経たない『大論2』の第2章『ランピィ・グレイヴィ』の曲目解説に大きなミスを発見した。

 この件に関しては筆者がさきほど石原さんにファクスで知らせ、2時間ほどして電話があった。石原さんは「読者からの指摘があってから、工作舎のホームページで告知することにしましょう」という考えだ。しかしどのような文章になるだろう。筆者がそれを書くのがよいと思える。それで早速このようにしてワープロに向かって文章を打っている。この文章をそのまま『本当の物語』の末尾に加えるのもよいが、それだけの措置では、お金を払ってそれをダウンロードする人だけが知ることになって具合はよくない。『本当の物語』のサンプルとしてこの文章全体をホームページに掲げるのが筋と思うが、さてどうなるかはわからない。ただし読者からの間違いの指摘がある前に筆者自身が気がついただけでも恥の度合いは少ないと自分を慰めよう。「爺言う、自慰罪」ではあるが、仕方がない。さてミスに気づいた経緯についてだ。今朝、MSIのOさんは親切にも予告なしに、年末に出たスティーヴ・ヴァイのボックス・セット中の2枚目であるザッパCDやその他の資料を速達で送ってくれたのだが、それに添えた手紙に「ザッパのロキシーのDVDが春に発売される予定云々」と書いてあった。DVDが発売されても、筆者は機械を持っていないので楽しむことができないが、レーザーディスク・プレーヤーではなぜ駄目なのだろうと思いながら、おもむろにその解説書を手にした。するとその表紙の目次中に「自由にインデックスをつけるには」という見出しがあることに気がついた。「インデックス?」。この言葉で急に思い出したのは、ブーレーズ指揮のヴァレーズのCDだ。84年発売でアンサンブル・アンテルコンタンポランが演奏している。この6曲目は「オフランド」という曲で、収録曲目に違いがある90年に発売されたブーレーズ/ヴァレーズのCDでも、この「オフランド」は同じ演奏が収められている。ところが90年盤ではこの曲は4、5曲目として収録されているのに対して、84年盤ではあくまでも1曲表示で、「INDEX」という記号がついて前半と後半とに分けられている。つまり90年盤のようには後半の頭出しはできないのだが、後半部はこのタイム表示以降であることはわかる。たぶんCDプレーヤーの機種によっては、設定したタイム表示からスタートさせることのできる機能がついているのだろうと、昔からぼんやりと考えていたが、それ以上に積極的に確かめようとしたことはなかった。筆者のは8万以上したのにその機能がない。インデックス機能のついたCDプレーヤーがどれほど存在するのかはわからない。とにかく他に筆者が所有する全CDに同じような記号はどこにもなく、ブーレーズ指揮の同アルバムの解説書にもその記号の説明はなく、この「INDEX」記号は長年謎のままであったのだ。しかし、今日は「ひょっとすれば」と思い、レーザーディスク・プレーヤーで84年盤の「オフランド」をかけてみると、何と演奏中に6−1と6−2という液晶表示が現われた。疑問は氷解した。と同時に胸騒ぎがした。『ランピィ・グレイヴィ』の裏ジャケットにも「INDEX」という文字があった。もしやと思いながら承認盤CDをかけてみると、やはり。裏ジャケットには「パート1」「パート2」とも各曲のタイトルのみの表示で、演奏時間表示はないから、以前からてっきり各曲の区切りは推察するしかないと思っていたのだったが、実際は違った! 1−1や1−10といった各曲の区切りが表示されるではないか! ♪Oh No! I don’t believe it! ♪ああああああやんなっちゃったーああああああ驚いたー。

  友人からプレーヤーをもらった時はもうすでに『大論2』のゲラ待ち段階に入っていたが、まともにプレーヤーを見ることもスイッチを入れることもせず、またCDプレーヤーを修理に出している間の使用中も解説書を見なかった。それが運命の分かれ目。大ザッパ大雑把論を地で行ってしまった。わははははは、母々、歯々々などと笑えば、読者から毒の刃を突き当てられるか。『大論2』では筆者の推察による「パート1」「パート2」の曲目区切りを行なって各曲に解説を加えたが、全部ではないにしろ、区切りはあちこちずれていることがわかった。ただし承認盤は「パート1」の区切りは実際は12曲であるべきところが10曲となっているから半ば出鱈目だ。しかも先の84年盤ブーレーズ/ヴァレーズの「オフランド」のような特殊記号の「INDEX」ではないし、そもそもジャケット裏面に各曲のタイトルのみを表示して、演奏時間を記していないのは、ザッパとしても区切りは聴く者が自由に判断してよいと考えたふしがある。実際テープつなぎの箇所は各曲本位で見ても数ヵ所ずつ存在するから、区切りはあまり重要ではない。以上のことから、生前のザッパが各曲のタイトルをつけると同時に時間の区切りまで行なったのかどうか疑問は残る。またいちおう正しいと思われる区切りがディスクに情報として搭載されたのは、去年9月下旬に発売された紙ジャケット・シリーズ盤が最初で、ザッパ没後8年を経ている。それはいいとして去年10月にでもレーザーディスク・プレーヤーのインデックス機能に気づいておれば、最終校正段階でぎりぎり原稿を訂正することができたはずなのに、Hot Rats! 読者には申しわけない。『大論2』の初版がそそくさと完売になり、しかも再版の話が出た時には第2章は可能な限り書き替えたい。ここでは緊急にディスクから読み取れる各曲の分離時間を以下記しておく。1、2秒の差はディスク違いによるもので問題はない。「パート1」の冒頭曲からいきなりずれていて、オレの見たところでは、十二指腸潰瘍になってしまいそうだが、他の曲はさほど問題とはならないとも思う。それにしてもこんな形で「ウィー・ウィル・ミート・アゲイン」なんてことにならないようにしたいものだ。「わははははの母の歯並び刃のごとし」山甲日(さんこうか:ただし、これは「大山甲日」のペンネームのひとつで、詳しくは『大ザッパ論2』を読んでください)

曲目        紙ジャケCDでの表示       『大論2』での表示
パート1−1、   0′00″〜 0′06″     0′00″〜 1′37″
  〃  2、   0′06″〜 1′38″     1′37″〜 2′07″
  〃  3、   1′38″〜 3′41″     2′07″〜 3′40″
  〃  4、   3′41″〜 5′17″     3′40″〜 3′58″
  〃  5、   5′17″〜 5′46″     3′58″〜 5′45″
  〃  6、   5′46″〜 6′18″     5′45″〜 6′16″
  〃  7、   6′18″〜 6′43″     6′16″〜 6′35″
  〃  8、   6′43″〜 7′12″     6′35″〜 6′57″
  〃  9、   7′12″〜 8′25″     6′57″〜 9′18″
  〃 10、   8′25″〜11′06″     9′18″〜10′49″
  〃 11、  11′06″〜12′00″    10′49″〜11′59″
  〃 12、  12′00″〜15′48″    11′59″〜15′48″


パート2−1、   0′00″〜 1′33″     0′00″〜 1′19″
  〃  2、   1′33″〜 3′55″     1′19″〜 3′55″
  〃  3、   3′55″〜 5′28″     3′55″〜 5′27″
  〃  4、   5′28″〜 6′26″     5′27″〜 6′26″
  〃  5、   6′26″〜 7′39″     6′26″〜 7′37″
  〃  6、   7′39″〜 8′21″     7′37″〜 8′20″
  〃  7、   8′21″〜 9′19″     8′20″〜 9′08″
  〃  8、   9′19″〜10′17″     9′08″〜 9′25″
  〃  9、  10′17″〜13′58″     9′25″〜13′57″
  〃 10、  13′58″〜15′51″    13′57″〜15′51″



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