工作舎ロゴ 書籍解説

HOME > 書籍 > ジャンル一覧新刊一覧 > ホロン革命/基本データ




ホロン革命JANUS[詳細]

目次著者紹介関連図書書評



人間[ホロン]のおぞましさ & 創造性

「それだけでは自律的存在とは言えない
断片的で不完全なもの」を暗示する「部分」と
「それ自体完全でそれ以上説明を要さないもの」とされる「全体」。
生物、社会、あるいは宇宙全体において、
絶対的な「部分」や「全体」はまったく存在しない。
有機体は部分と全体の両面をもつ「ホロン」からなる多層システムなのである。
「ホロン」の創造性の鍵は、「部分」としての自己規制と
「全体」としての自律性のダイナミクスにある。




■目次

プロローグ◎新しい暦

1 ポスト・ヒロシマの課題
2 借りものの時間のなかの虚構
3 ホモ・サピエンスの四つの症状
4 ワニとウマとヒトが同居する人間の脳の矛盾
5 人間の悲劇を生む過剰な献身
6 もっとも恐るべき兵器「言語」
7 死の発見と死の拒絶
8 人間の創造性と病は動物に還元できない

第一部 システムとは何か

第1章◎ホロンがつくる開かれたシステム

1 還元主義は疲れた旅人を救わない
2 還元主義とホーリズム(全包括論)を超える第三の方法
3 〈ホロン〉が層をなす有機体のヒエラルキー
4 一般システム論の登場
5 部分と全体の二面の顔をもつホロン
6 ホロンが構成するホラーキー構造
7 ホロンはあらゆるシステムに適用できる
8 固定された規則と柔軟な戦略
9 個体発生のゲームの規則と戦略
10 進化の規則と戦略
11 意識と心の謎を解く規則と戦略
12 ヒエラルキー・システムの相補性原理〈樹枝化〉と〈網状化〉
13 経験によって強化されるアブストラクト的記憶の貯蔵法
14 情動を反映するスポットライト型記憶
15 自意識過剰なムカデの苦境
16 存在のホラーキーは両端が開いている

第2章◎エロスとタナトスを超えて

1 ホロンの統合傾向と自己主張傾向
2 人間ホロンの情動の二面性
3 物質界をつらぬく二面性
4 自己主張傾向の保守性と統合傾向の未来指向性
5 フロイトのエロスとタナトス説の限界
6 ルイス・トマスの共生進化説

第3章◎イマジネーションと情動の三次元

1 情動をいろどる三変数
2 純粋な情動を切りとることはできない
3 同情と共感の情動プロセス

第4章◎善意にみちた集団精神の恐怖

1 〈真の宗教〉の破壊性
2 利他主義が集団のエゴイズムを生む〈悪魔の弁証法〉
3 真理追究のためのおぞましい実験
4 人間はたまたま属した集団のために戦争する
5 社会的ホロンとしての人間
6 集団は情動を喚起し知性を単純にする
7 古い脳と新しい脳

第5章◎絶望の彼方に

1 救済は生物学研究所から
2 「大衆ニルヴァーナ」という幻想
3 問題は理性と和解しない情動にある
4 人間の本質を操作する可能性
5 ホモ・マニアカスからホモ・サピエンスへ

第二部 創造的精神

第6章◎ユーモアとウィット

1 創造性の深奥に通じる裏口
2 ぜいたくな反射作用、笑い
3 ユーモアの論理構造
4 情動のダイナミクス
5 思考に見捨てられた情動の解放
6 ジョークや風刺のゲームの規則
7 人間をとりまくさまざまな笑い
8 ユーモアを左右する三つの基準
9 科学・芸術・ユーモアをつなぐスペクトル

第7章◎科学における発見術

1 科学的創造性の本質
2 道化師と芸術家のはざまで

第8章◎芸術と科学の創造性

1 笑いと泣きの対照
2 神秘体験につながるAh…反応
3 創造の源はひとつしかない
4 悲劇作家、コメディアン、医者の創造活動
5 悲劇と日常性のバイソシエーション
6 無意識は創造性を手引きする
7 創造的ジャンプのための撤退
8 科学と芸術の相補性
9 科学と芸術の進化サイクル

第三部 創造的進化

第9章◎崩れゆく砦

1 ネオ・ダーウィニズムの矛盾
2 自然淘汰と適者生存の堂々めぐり
3 だれが進化のルーレットに賭けるか?
4 行動の進化の謎
5 ダーウィンのためらいとメンデルの夜明け
6 サミュエル・バトラーの嘆き
7 遺伝子の原子論のあやまち
8 遺伝子のミスプリントを修正するもの

第10章◎ラマルク再訪

1 遺伝学的原子論の滅亡
2 獲得形質の遺伝をめぐる攻防
3 覆されたセントラル・ドグマ
4 ラマルキズムの意味するもの
5 獲得形質を保護する要因

第11章◎進化における戦略と目的

1 生命界の相同現象
2 有袋類と有胎盤類の驚くべき相似
3 ゲーテの原型論の系譜
4 進化の目的を設定するのはだれか?
5 進化を推進する生命の独創力
6 サルの胎児とヒトはなぜ似ているのか?
7 科学や芸術における幼形進化
8 ヒトデからヒトにいたる再生能力
9 エントロピーとシントロピー

第四部 新しい地平

第12章◎自由意志とヒエラルキー

1 人間をロボットに変える習慣のワナ
2 精神的人間と機械的人間の相補性
3 「自分」と自分の果てしない鬼ごっこ
4 自由意志と責任感

第13章◎物質と精神の対話

1 ESPは非科学的か
2 現代物理学が描く物質のイメージ
3 量子論のパラドックス
4 確率的世界像
5 創造的アナーキーの時代
6 ブラック・ホールと超空間
7 精神化する物理学と現実化する超心理学
8 テレパシーよりも神秘的なユングの同時性(シンクロニシティ)
9 カンメラーの連続性の生物学とパウリの非因果的な物理学
10 因果性を超える宇宙観
11 無秩序から秩序への流れ
12 ESPのフィルター装置

第14章◎宇宙的作用につつまれて

1 人間の脳にひそむ潜在能力
2 崩れゆく合理主義者の幻想
3 地球愛国主義を超えて
4 高次のリアリティからの信号
訳者あとがき
参考文献
著者・訳者紹介



■著者紹介

アーサー・ケストラー Arthur Koestler(1905 - 1983)

ユダヤ系ハンガリー人の父とオーストリア人の母のもと、ブダペストに生まれる。ウィーン工科大学を中退後、シオニズムに関心を寄せてパレスチナへ入植。20代半ばから後半にかけてはウルシュタイン社のフランス支局特派員やベルリン本社での科学欄編集長として活躍するも、共産党に入党して同社を解雇される。その後、ソ連や内乱中のスペインに身を置いて後に作品として発表することになる諸事象を体験する。
フランコ政権批判の書『スペインの遺書』(1938; 新泉社 1991)に続いて発表したスターリンの粛正裁判をテーマにした小説『真昼の暗黒』(1940; 角川文庫 1960; 岩波文庫 2009)で世界的な注目を浴びる。 1948年、イギリスに帰化。『夢遊病者たち』(1959;第四章邦訳『ヨハネス・ケプラー』河出書房新社 1971; ちくま学芸文庫 2008)では創造プロセスと科学と宗教の綾に光をあてる。
1968年、オーストリアのアルプバッハで、心理学者のJ・ピアジェ、V・フランクル、経済学者のF・ハイエク、生物学者のC・H・ウォディントンをはじめとする各界の先鋒を集めたシンポジウム『還元主義を超えて』を開催し、その成果を刊行(1969; 工作舎 1983)。新しい人間学への視点を示し、次世代に多大な影響をおよぼした。
邦訳された著書は前出のほかに、『神は躓く』(ぺりかん社 1969)、『機械の中の幽霊』(ぺりかん社 1969; ちくま学芸文庫 2008)、『創造活動の理論』上下(ラティス 1966/67)、『偶然の本質』(蒼樹書房 1974; ちくま学芸文庫 1995)、『サンバガエルの謎』(サイマル出版会 1975; 岩波現代文庫 2002)、『ケストラー自伝 目に見えぬ文字』 (彩流社 1993) など。 1983年3月、シンシア夫人とともに自殺。


翻訳者紹介
:田中三彦 TANAKA, Mitsuhiko

1943年、日光市生まれ。1977年に原発設計技師として9年間勤務した民間会社を退社後、吉福伸逸主宰のC+Fコミュニケーションズに席を置き、主として「ニューサイエンス」の海外書籍の翻訳や、米国の科学雑誌Popular ScienceやOMNI の日本語版の編集や執筆に携わる。88年C+F解散後は、科学系の翻訳、評論、執筆活動を展開。2011年12月〜12年7月、福島原発事故に対する国会事故調委員として原因調査にあたった。2013年、居を東京から八ヶ岳北横岳山麓に移す。
著書に『原発はなぜ危険か』(岩波新書 1990)、『科学という考え方』(晶文社 1992)など。
訳書(含共訳)にF・カプラ『タオ自然学』(工作舎 1979)、J・グリビン『タイムワープ』(講談社ブルーバックス 1981)、C・ウィルソン『スターシーカーズ』(平河出版社 1982)、F・カプラ『ターニング・ポイント』(工作舎 1984)、B・スウィム『宇宙はグリーンドラゴン』(TBSブリタニカ 1988)、M・ワールドロップ『複雑系』(新潮社 1993)、A・ダマシオ『感じる脳』(ダイヤモンド社 2005)、同『デカルトの誤り』(ちくま学芸文庫 2010)、同『意識と自己』(講談社学術文庫 2018)、L・ムロディナウ『たまたま』(ダイヤモンド社 2009)などがある。

:吉岡佳子 YOSHIOKA, Yoshiko

1952年、滋賀県生まれ。京都大学農学部食品工学科卒業後、生物学を基軸として翻訳業に従事。また、手話学習および通訳活動を経て一橋大学大学院言語社会研究科博士課後期課程修了。博士(学術)。
著書に『ろう理容師たちのライフストーリー』(ひつじ書房 2019)。
訳書にA・モンタギュー+F・マトソン『愛としぐさの行動学』(海鳴社 1982)、A・ケストラー編著『還元主義を超えて』(共訳、工作舎 1983)、W・H・ソープ『生命=偶然を超えるもの』(海鳴社 1984)、などがある。




■関連図書(表示価格は税別)

  • フリッチョフ・カプラ『タオ自然学』 定価 本体2200円+税
  • フリッチョフ・カプラ『新ターニング・ポイント』 定価 本体1900円+税
  • J・ラヴロック『ガイアの時代』 定価 本体2400円+税
  • ポール・D・マクリーン『三つの脳の進化』 定価 本体3400円+税
  • アントニオ・リマ=デ=ファリア『生物への周期律』 定価 本体4800円+税
  • フランシスコ・ヴァレラほか『身体化された心』 定価 本体2800円+税



  • ■書評

    成定薫氏(「1985年の科学技術」『1986年版百科年鑑』平凡社所収)
    「アカデミズム科学者や運動家の危惧や反発にもかかわらず、ニューサ イエンス・パラダイムは一般の人々の好意的な反応を獲得している(カプラやケストラーなどニ ューサイエンス関連の書物はしばしばベストセラーになる)だけでなく、しだいにさまざまな分 野に属する専門家の真剣な討議の対象になりつつある」と ホロン革命にはじまる「ニューサイエンスの潮流」総括。 全文はこちら>>>

    矢部初男氏(『目黒会報』第12-2号 電気通信大学発行 2000年8月1日)
    「本書の特筆すべきポイントの一つに和訳文章の素晴らしさがある。……簡明で音楽的リズムを感じさせる文章表現でどのページを開いても刺激的、発見的であり、目から鱗の連続である。「ものの時代から心の時代へ」といわれる今日、人間にスポットを当てた本書『ホロン革命』は、現代人にパラダイムの転換を迫る必読書である。強く一読をお勧めしたいが、密かに一人占めしたいとも思う。本書そのものがホロンであり、ヤヌスの双面を持つのであろうか」

    黒岩惠氏(e-Business forum「トヨタのIT化への挑戦〜そのDNAとオリジン」2001年12月13日)
    「ホロンとは一言でいえば「すべてのものには「部分性」と「全体性」が存在する」という考え方であり、この概念を発表した『ホロン革命』は、システム設計者の必読の書と言われておりました。全体と部分のバランスで物事は動いていく。本フォーラムで、石井東京大学教授が、フラクタルの話をされておりましたが、それと似た世界でございます」

    竹中工務店(WEB HOLONOC TOWERより)
    「21世紀以降の社会では、個人レベルでの生活観がますます多様化してきます。さらに、人間は経済的にも文化的にも豊かさを求め続け、同時に自然との日々の触れ合いも要求します。このような状況下で、竹中の設計家や技術者が、「個と全体の調和を表す概念=ホロン」に出会った時、夢に近かった超々高層ビル計画は、にわかに現実性をおび、研究開発のスピードが増しました。その成果が、この地上600mの超複合立体建築HOLONOC TOWERなのです」






    ALL RIGHTS RESERVED. © 工作舎 kousakusha