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周期律[詳細]

目次著者紹介関連図書書評




イタリア文学の至宝

イタロ・カルヴィーノ、ウンベルト・エーコ絶賛!
収容所での体験を書いた『これが人間か──改訂完全版アウシュヴィッツは終わらない』の著者が、
科学と文学を高純度に融け合わせた逸品。
「メンデレーエフの周期律こそが一篇の高貴な詩である。それは韻すら踏んでいた……」



■目次

1 アルゴン Argon/2 水素 Idrogeno/3 亜鉛 Zinco/4 鉄 Ferro/5 カリウム Potassio/6 ニッケル Nichel/7 鉛 Piombo/8 水銀 Mercurio/9 燐 Fosforo/10 金 Oro/11 セリウム Cerio/12 クロム Cromo/13 硫黄 Zolfo/14 チタン Titanio/15 砒素 Arsenico/16 窒素 Azoto/17 錫 Stagno/18 ウラニウム Uranio/19 銀 Argento/20 ヴァナディウム Vanadio/21 炭素 Carbonio




■著者紹介:プリーモ・レーヴィ Primo Levi

1919年、イタリア北部の工業都市トリーノで、ユダヤ人の家系に生まれる。祖父は銀行家、父は技師で、恵まれた知的環境の中で育つ。37年、トリーノ大学に入学し、化学を専攻する。43年9月、イタリアがドイツ軍に占領された際、レジスタンス活動に参加するが、12月に捕えられ、アウシュヴィッツ強制収容所に抑留。45年1月、ロシア軍により奇跡的に救出される。

 帰国後、化学工場に勤めながら作家活動を開始。収容所での体験を書いた『これが人間か』(邦訳:旧題『アウシュヴィッツは終わらない』、朝日新聞出版、2017)Se questo è un uomo(1947)で高い評価を得る。この本は世界中で、ファシズムの暴虐を告発する記録文学として、『アンネの日記』と並んで読み継がれている。その後、『博物誌』(邦訳:『天使の蝶』、光文社文庫、2008)Storie naturali(1967)、『形の欠陥』Vizio di forma(1971)などでは作風を一変させ、幻想小説風のアプローチで現代文明の病を諷刺。その背後にはアウシュヴィッツで得た人間存在への深い洞察が感じ取れる。1979年には『星型のスパナ』La chiave a stella(1978)で、イタリアで最も権威ある文学賞のひとつであるストレーガ賞を受賞。

 本書『周期律』Il sistema periodico(1975)のほか、代表作に、『休戦』(邦訳:岩波文庫、2010)La tregua(1963)、『リリス』(邦訳:晃洋書房、2016)Lilìt e altri racconti(1981)、『今でなければ いつ』(邦訳:朝日新聞社、1992)Se non ora, quando?(1982)、『溺れるものと救われるもの』(邦訳:朝日新聞出版、2014)I sommersi e i salvati(1986)、インタビュー集に『プリーモ・レーヴィは語る』(邦訳:青土社、2002)Conversazioni e interviste1963-1987(1997)がある。創作活動が円熟の極みに達した87年4月、投身自殺を遂げた。


■訳者紹介:竹山博英(たけやま・ひろひで)

1948年、東京生まれ。78年、東京外国語大学大学院言語科学研究科博士課程前期課程修了。79〜81年、ローマ大学留学。立命館大学文学部教授を経て立命館大学名誉教授。イタリア現代文学・民俗学専攻。

著書に『シチリア 神々とマフィアの島』(朝日新聞社、1985)、『マフィア シチリアの名誉ある社会』(朝日新聞社、1988)、『マフィア その神話と現実』(講談社現代新書、1991)、『マフィア戦争』(集英社、1991)、『シチリアの春』(朝日新聞社、1994)、『ローマの泉の物語』(集英社新書、2004)、『イタリアの記念碑墓地』(言叢社、2007)、『プリーモ・レーヴィ アウシュヴィッツを考え抜いた作家』(言叢社、2011)など。

P・レーヴィ関連の訳書に『これが人間か(旧題:アウシュヴィッツは終わらない)』(朝日新聞出版、2017)、『今でなければ いつ』(朝日新聞社、1992)、『溺れるものと救われるもの』(朝日新聞出版、2014)、『休戦』(岩波文庫、2010)、『リリス』(晃洋書房、2016)など。

その他の訳書にO・ファラーチ『生まれなかった子への手紙』(講談社、1977)、L・シャーシャ『真昼のふくろう』(朝日新聞社、1987)、G・レッダ『父 パードレ・パドローネ』(朝日新聞社、1995)、L・カンフォラ『アレクサンドリア図書館』(工作舎、1999)、F・フェリーニ他『フェリーニ、映画を語る』(筑摩書房、1985)、『映画監督という仕事』(筑摩書房、1996)、B・ベルトルッチ『ベルトルッチ、クライマックス・シーン』(筑摩書房、1989)、C・ギンズブルグ『ベナンダンティ』(せりか書房、1986)、『神話・寓意・徴候』(せりか書房、1988)、『闇の歴史』(せりか書房、1992)、『ピノッキオの眼』(せりか書房、2001)、G・アヤーラ他『マフィアとの死闘』(NHK出版、2000)、C・レーヴィ『キリストはエボリで止まった』(岩波文庫、2016)、編訳『現代イタリア幻想短編集』(国書刊行会、1984)などがある。




■工作舎関連図書

  • 賢治と鉱物 加藤碵一+青木正博 3200円
  • 夜の魂 チェット・レイモ 2000円
  • 星投げびと ローレン・アイズリー 2600円
  • コッド岬 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー  2500円
  • 花の知恵 モーリス・メーテルリンク 1600円
  • ケプラーの憂鬱 ジョン・バンヴィル 工作舎



  • ■書評

    [海外の評価]

    イタロ・カルヴィーノ
    …… 「われらの時代におけるもっとも才能ある作家の驚くほど魅惑的な本!」

    ウンベルト・エーコ
    …… 「イタリア文学の至宝のひとつだ。」

    ソール・ベロー
    …… 「ほんの数頁めくっただけで引き込まれてしまった。本書には余分なところがまるでない。あらゆるものが本質の輝きを帯びている。」

    フレデリック・デイントン(「ニュー・サイエンティスト」誌)
    …… 「各篇に元素の名前がつけられた短編集とはいかなるものか。大いに興味をもって読み始めたのだが、もののみごとに魅了された。だが、私には本書の魅力を正しく語る自信がない。形式的には散文なのだが、魔術的な特質をもった物語詩なのだ。」

    [国内の声]

    2023.8.13 読売新聞「空想書店」藤井光氏
    8月の店主、アメリカ文学者・翻訳家の藤井光さんが「店主の1冊」として選んでくださいました。 「ホロコーストから生還した作者が、想像の物語や戦時の記憶を元素に託して語る。戦争で失われたものの巨大さと同時に、かつてあったものを言葉にとどめようとする努力に胸を打たれる。竹山博英訳。」

    NHK教育ETV2003「アウシュビッツ証言者はなぜ自殺したか」(2003年3月5、6日/再3月29日深夜)
    徐京植氏が『周期律』を感慨をこめて朗読。

    筒井康隆氏(「本の森の狩人」『読売新聞』1992年10月19日)
    「……この有名なイタリアの作家のもうひとつの顔は、大学で化学を専攻し、鉱山や薬品会社や塗料の工場で技師として働き、分析を請け負う試験所を自分でやったりもした化学者なのだ。
     第1章の「アルゴン」は先祖及び一族の話である。「怠惰なもの」というギリシャ語の語源を持つ不活性ガスのアルゴンをユダヤ人である自分の一族に結びつけているのである。第2章「水素」から自伝に移り、ここでは友人と一緒にその兄の実験室に忍びこみ、水素を爆発させた思い出が書かれている。以下各章が元素にかかわるそれぞれ異なった工夫の凝らされたエピソードであるが、「鉛」「水銀」「硫黄」「チタン」の四種は創作で、それぞれの短篇が書かれた時期に相当する場所におさまっている。中でも「水銀」は傑作で、名短篇といっていいだろう」




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