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身体化された心[詳細]
Embodied Mind

目次著者紹介書評


認知科学、AI、現代進化論批判、構造的カップリング、ナーガールジュナ

認知=行為にはじまる




■目次より

序論

第1部 出発の根拠

 第1章 根元的な循環性:反省する科学者の心
     既定条件
     認知科学とは何か?
     循環する認知科学
     本書のテーマ
 第2章 「人間経験」とは何か
     科学と現象学的な伝統
     現象学の瓦解
     非西洋的な哲学伝統
     三昧(マインドフルネス)/覚(アウェアネス)の方法を用いた経験の検討
     経験の分析における反省の役割
     実験と経験分析

第2部 認知主義の多様性

 第3章 記号:認知主義の仮説
     不確かな基礎
     認知主義仮説の定義
     認知主義の現れ
      人工知能における認知主義/認知主義と脳
      心理学における認知主義/認知主義と精神分析
     認知主義と人間経験
     経験と計算する心
 第4章 嵐の私(I:アイ)
     「自己」の意味
     五蘊のなかに自己を捜すこと
      色蘊:身体
      受蘊:感受作用
      想蘊:表象
      行蘊:形成作用
      識蘊:意識
     刹那と脳
     自己のない五蘊

第3部 創発の多様性

 第5章 創発特性とコネクショニズム
     自己組織化:ある選択肢の根源
     コネクショニストの戦略
     創発と自己組織化
     今日のコネクショニズム
     ニューロンの創発
     記号の退場
     記号と創発を関連づけること
 第6章 自己のない心
     心の社会
     対象関係論の社会
     縁起(共依存的な生起)
      1.無明(無知)
      2.行(意思作用)
      3.識(意識)
      4.名色(みょうしき)(心身の複合体)
      5.六処(六入、六つの感覚)
      6.触(接触)
      7.受(感覚)
      8.愛(渇望)
      9.取(執着)
      10.有(転成)
      11.生(誕生)
      12.老死
     ダルマ分析
      1.触(接触)
      2.受(体感)
      3.想(識別)
      4.思(意思)
      5.意(注意)
     三昧と自由
     自己のない心:分割されたエージェント
     世界に留意(マインド)すること

第4部 中道へのステップ

 第7章 デカルト主義の不安
     不満の感覚
     表象再考
     デカルト主義の不安
     中道へのステップ
 第8章 行為からの産出:身体としてある認知
     常識の回復
     自己組織化の再検討
     ケーススタディとしての色
      色の出現/知覚される属性としての色
      色はどこにあるのか/カテゴリーとしての色
     身体としてある行為としての認知
      ハイデガー流の精神分析
     自然選択への退却
 第9章 進化の道程とナチュラル・ドリフト
     適応主義:生物変移の考え方
     様々なメカニズム
      連鎖と多面発現性/発生/ランダム遺伝子ドリフト/平衡状態/選択の単位
     斬新な進化/認知観を求めて
     進化:生態学と発生の同調傾向
     ナチュラル・ドリフトとしての進化から学ぶこと
     エナクティブ・アプローチの定義
     エナクティブ認知科学
     結論

第5部 根拠なき世界

 第10章 中道
     無根拠性の喚起
     ナーガールジュナと中観派の伝統
     二つの真理
     現代思想における無根拠性
      間(entre‐deux)の欠如/
      解釈主義/
      変容の可能性
 第11章 踏みしめつつ道をつくること
     循環している科学と経験
     ニヒリズムと惑星思考の必要性
     西谷啓治
     倫理と人間の変容
      社会科学からの視点/       慈悲:根拠なき世界
      結論

訳者あとがき
付録/注/参考文献/索引



■著者紹介:フランシスコ・ヴァレラ Francisco Varela

1946年、チリに生まれる。生物学者(認知科学)。フランス国立科学研究センター研究部長。邦訳書に『オートポイエーシス』『知恵の樹』(共にマトゥラーナとの共著)がある。2001年5月、パリにて死去。

:エヴァン・トンプソン Evan Thompson

カナダ・ヨーク大学の哲学科助教授。専門は認知科学の哲学的基礎の研究。著書に、Colour Vision:A Study in Cognitive Science and the Philosophy of Perception(1955)がある。

エレノア・ロッシュ Eleanor Rosch

アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授。




■書評

2007.9.16 中日新聞・東京新聞にて西垣通氏紹介
テーマで読み解く現代 情報学2 人工知能より人知
…(オートポイエーシス理論は)まさに21世紀の鍵をにぎる思想と言えるだろう。一つのポイントは「身体」である。心は生きた身体を離れて存在することはできない。オートポイエーシス理論の創設者の一人である数理生物学者フランシスコ・ヴァレラは、90年代に入るとさらに進んで、新たに「エナクティブ認知科学」を提唱した。『身体化された心』にはその魅力的な思想が語られている。安易に人工知能を語る西洋流合理主義の限界を指摘し、仏教思想にまでおよぶその議論の射程はおそろしく長い。…

2006.1.8 読売新聞・「空想書店」1月店主 西垣通氏紹介
思索する生物学者ヴァレラが最後にたどりついたのは何と、先端認知科学と仏教思想との橋渡しだった

bk1 金沢創氏(三菱化学生命科学研究所研究員)の連載コラムにて書評
…21世紀の新しい心の科学のための、もっとも重要な本の1冊であると考えている。おそらく、今後、大流行の予感すらある、新しいアプローチをこの本は予見しているように思えるのである。そのアプローチとは何か。彼らの言葉でいえば、「行為からの産出(enaction)」ということになる。エナクション。この聞きなれない言葉こそ、私自身も同意する、新しい心理学、あるいは認知科学のキーワードと思われる。

*金沢創のコラム「サルの意識・機械の知覚」第16回 エナクション:普遍的な心の科学へ

bk1ブックナビゲーター 宇波彰氏(札幌大学教授) 書評
現代の認知科学の第一人者が、西欧の知の根拠の欠如を自覚し、仏教に救いを求める。 bk1サイト全文

「現代思想2001.10月号 特集:オートポイエーシスの源流 F・ヴァレラの思想圏」
マトゥラーナとの共著『オートポイエーシス』で名を馳せたヴァレラですが、その思想の到達点が『身体化された心』です。 

bk1 「人文書 とれたて新刊!レジ前コーナー」 書評
「仏教と認知科学をつなぐ、オートポイエーシス理論家の快心作」「近年の人文書・理学書において決定的に重要な著書である」と。(人文書コーディネーター・小林浩氏)




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