工作舎ロゴ

土星の環インタビュー

HOME > Webマガジン > 土星の環インタビュー 一覧

 


土星


#002

ルネサンス思想史家 ヒロ・ヒライさんに聞く
 キルヒャー、パラケルスス、カルダーノ…

魔術的ルネサンスの魅力

キルヒャーパラケルススカルダーノ


ヒロ・ヒライさんは、オランダ・ナイメーヘン大学研究員として国際的に活動する一方、1999年より学術ウェブサイト「bibliotheca hermetica(ビブリオテカ・ヘルメティカ、略称BH)」を主宰し、日本の若手研究者たちを牽引する。
ヒライさんにご協力いただき、2013年7月より紀伊國屋書店新宿本店にてフェア「初期近代精神史研究」を勁草書房と工作舎の合同企画で開催(9/16まで)。工作舎との関わり、BHの活動についてお聞きした。

紀伊國屋書店新宿本店「初期近代精神史研究」フェア20130716 紀伊國屋書店新宿本店「初期近代精神史研究」フェア20130820
紀伊國屋書店新宿本店「初期近代精神史研究」フェア(左は7/16、右が8/20撮影)

 —— 『普遍音楽』は、刊行前からヒライさんに宣伝をしていだたきました。

『普遍音楽』はキルヒャーのはじめての邦訳ですから、刊行を待ち望んでいました。一度キルヒャーの魅力にとりつかれた人たちは、何が書いてあるか知りたいと楽しみにしていたはずです。
僕のキルヒャーとの出会いは、工作舎のジョスリン・ゴドウィン『キルヒャーの世界図鑑』です。今でもクリスマスなどで誰かにプレゼントするときにはこの本を選んでいます。ビジュアルが多いので、学者ではない一般の方にアピールできることがいいですね。キルヒャーの想像力について荒俣宏さんが書いていたと思いますが、常人では考えられないような発想の展開をするところが魅力だと思います。

普遍音楽 キルヒャーの世界図鑑

 —— 学術的にはどうですか、ヒライさんはキルヒャーについての論文(*1)を海外で発表していますが?

キルヒャーを研究する人は非常に限られていて、研究がそれほど進んでいないともいえます。僕が書いたキルヒャーについての学術論文は、少ないのでいろいろな人に引用されますが、逆にキルヒャーを研究して何になるんだという冷ややかな意見もあります。ニュートンのように後の近代科学をつくる思想ではない、と色眼鏡で見るんですね。
僕が研究しているインテレクチュアル・ヒストリーは、例えば、このキルヒャーという人物を現代の価値から見るのではなくて、なぜキルヒャーがこのようなことを考えてこのように書いたのかを、キルヒャーの生きた時代に置き直して、その知的な世界を理解しようという試みなんです。キルヒャーの百年前を生きた医師にして占星術師カルダーノもそうです。現代の医学や科学から考えると、カルダーノの意味は見えにくくなります。


■ 工作舎の本との出会い

 —— インテレクチュアル・ヒストリーについて教えてください。

英語のインテレクチュアル・ヒストリーIntellectual Historyは、精神史と訳したり、人によっては知性史と訳しています。これは哲学と歴史学のちょうど中間にあたる学問です。ある歴史的なテクストの背景、例えば著者の人間的な関係や、著者がどのような本を読んでいたのかなど、そのテクストを取り巻く状況を僕はカッコつきで「知のコスモス」と呼んでいるのですが、そういったものを解明することに重点を置きます。僕の関心領域は、16〜17世紀のルネサンス時代、初期近代の精神史です。

 —— 固有名詞をあげると、パラケルススやキルヒャーになるのですね。ヒライさんが主宰されているBHサイトは、工作舎に縁あるものが多いので驚きました。

昔から僕の興味は工作舎の本とフィットしています。一番最初の出会いは『大博物学者ビュフォン』『ライプニッツの普遍計画』です。もともと18世紀のフランスの博物学から研究生活をスタートさせたんです。修士課程を終えた頃で、インテレクチュアル・ヒストリーに進むきっかけになりました。

 —— ビュフォンやライプニッツの伝記のどのような点が?

ビュフォンにしてもライプニッツにしても、宇宙の中の人間というように、自然や人間を語るときに非常に大きな視点で観ているんですね。そして彼らは多岐にわたる分野に手をつけるんですよ。例えばライプニッツなら数学だけではなく地質学や中国学なども。そういったところに惹かれたのかもしれません。専門に特化した科学者とは異なる万能人です。

大博物学者ビュフォン ライプニッツの普遍計画

■ 「石が生きている」

 —— ルネサンスへは?

博物学的興味から「石が生きている」(*2)という考えに辿り着きました。調べていくと、そのアイデアの元は18世紀よりもむしろ、17世紀、16世紀にさかのぼるとわかりました。16世紀というと、もうルネサンスなんです。それでルネサンス思想をもっと知りたいと思い、薔薇十字やパラケルスス、ケプラーなどに行き当たりました。だから本当に工作舎の本は僕にとってはど真ん中だったんです。

 —— それは何年頃ですか?

1990年代前半ですね。日本ではその頃、ルネサンスの魔術に関わる本が数多く出版されていました。平凡社でも編集者の二宮隆洋さん(*3)が「ヴァールブルク・コレクション」を精力的に出していました。工作舎の一連の本と二宮さんの本が、僕の本棚の中の一番の核になりました。今もそうです。


「ヴァールブルク・コレクション」(平凡社/すべて品切)

 —— 当時はこのジャンルの本が次々と刊行されていました。「石が生きている」という魅力的なテーマをご説明ください。

「石が生きている」というアイデアがどのようにできたのかということから、石にも植物のような種子があった、石が植物のように育っていくというアイデアがだんだん見えてきて、だったらこの「種子」というアイデアについて研究を深めたいと思って博士論文のテーマに選びました。
一番影響力があったのはプラトン主義と、その中心人物のフィチーノ。それからパラケルススと、パラケルスス主義者。そこから錬金術に近づいていき、魔術的なものも調べるようになりました。その中で『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』(邦訳は2010年刊行)も洋書で出会い、大きな刺激を受けました。


ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統
『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』邦訳(左)と洋書ペーパーバック(右)

■ ルネサンスの魔術的側面

 —— 『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』はイエイツの初期の代表作ですね。

この間、学習院女子大学で「ルネサンスの科学と魔術」というテーマで特別授業をしました。ブルーノに影響を与えたフィチーノとヘルメス的展開をベースにした内容だったので、ちょっと難しすぎるかなと思ったんですけど、学生さんたちは非常に熱心にノートをとってくれました。学生には新鮮だったようです。

 —— 一般の方にとってルネサンスはいまだダ・ヴィンチなどのイメージでしょうから。

そういうイメージをひっくり返そうとは思わない。でもルネサンスにはもうひとつ、オカルト的側面があると紹介することが、僕の使命だと思っています。
当時イエイツの本をたくさん読みました。邦訳では工作舎の『薔薇十字の覚醒』 、晶文社『世界劇場』など重要な本が刊行されていました。今はそのほとんどが品切れですが、パオロ・ロッシの『普遍の鍵』(国書刊行会)が復刊したように、いつか復活させたい。「イエイツ全集」ができれば素晴らしいのに。

薔薇十字の覚醒

■ フランセス・イエイツ、その評価

 —— 「イエイツ全集」ですか! そんなに評価されるべき存在ですか?

オカルトや魔術だけではなく、シェイクスピアやヴァロワ・タピスリーに関する本もあります。それから歴史小説に限りなく近いような、手に汗にぎる彼女独特の語り口もある。学者然としていないところも魅力なんだと思いますよ。

 —— 一方で、イエイツはオカルトに走りすぎているという批判もありますが?

残念ながら僕は記憶術自体に詳しくないので確かなことは言えませんが、でもイエイツはルネサンスの新たな面のパイオニアです。ある意味、パオロ・ロッシと彼女しかいなかった、そこを切り開いていったことは大きく評価するに値すると思います。

 —— 先のお話では研究者の中でも、色眼鏡で見る人がいるということでしたが。

今年2月に東大で講演し(日本学術振興会賞受賞記念講演「ルネサンスの生命と物質」)、「石が生きている」という話も織り込んだんですが、そこにいた幾人かの科学者は、それはいかがなものかと思われたようですね。
学者の中でも懐が深く、ある歴史現象を歴史として見ることができる人もいれば、どうしても現代の価値判断で見てしまう人もいます。一歩さがって客観的に自分とは違う時代の人間なんだという距離感がもてない、だから「石が生きている」という考えはあり得ないと断罪してしまう。僕は歴史現象として研究したのであって、それが正しいとか間違っているとか価値判断をはさむつもりはありません。

 —— 近代科学への流れの中でぬけ落ちて研究されなくなっただけで、実は現代に生きてくる研究になるかもしれません。

イエイツは、魔術思想は近代科学が生まれる過程において重要な役割を果たしてきたと提唱しています。その後いろいろな論争を生みましたけれども、歴史家として非常に価値がある視点だったと思います。


ヘルメス・トリスメギストス
魔術の象徴的存在
ヘルメス・トリスメギストス


■ 学術ウェブサイトbibliotheca hermetica(BH)

 —— その後、海外に?

このテーマに関する本は、邦訳も、日本で手に入る洋書も限られていて、僕が読みたい本は読み尽くしてしまったんです。それで海外に出ないといけないかなと思ったのが93年。94年にベルギーのリェージュ大学に留学しました。
そのとき本は1冊も持っていかなかったんですよ、だってどれくらいベルギーにいられるかもわからなかったんですから。はじめは3ヶ月でも半年でも行って拠点を作って、帰って来てお金を貯めてからまた行ければいいかなという軽い気持ちでした。それが1年が2年になり、2年が3年になり、もう20年になりました。

 —— BHのきっかけは?

99年に博士論文を書き終わり、提出して審査を待つ間、さてどうしようかと考えたんです。ちょうどインターネットが普及しはじめて、ホームページをつくる人がまわりに出てきて、自分もやってみようと思いました。博士論文で勉強したマテリアルをテーマ別に配列し直して、資料室をつくりました。資料室だから名前は「bibliotheca hermetica」、ヘルメスの図書館(*4)という意味です。バーチャルな図書館を目指しました。

bibliotheca hermetica

 —— サイトでは「初心者の部屋」などを設けて入りやすいですね。

まずは日本語で何が読めるかを示すことを基本方針にしました。新しくこの分野に分け入る人が勉強しやすいような環境をつくりたかったんです。訪問者数を増やすにはどうしたらいいかと考えて、読書日記をつけはじめました。すると、メールでコンタクトしてくれる人が増えてきて、こちらにはこういう人がいるよと、研究者同士をつなぐ橋渡しをするようになり、ネットワークが徐々に徐々にできあがっていきました。

 —— ネットの付き合いが、若手の学術研究会に?

メールをいただいた人たちに会ってみたいという気持ちが嵩じ、年に一度日本に帰ってミーティングをはじめました。食事をするだけではつまらないので、みなで今何を研究しているかを紹介し合ったんです。どういうわけか東大生が多く、世話をしてくれた人も東大の方だったので、第1回のBHミーティングは駒場キャンパスの教室で行いました。みんなまだ博士課程をはじめるかはじめないかの若い人でした。


■ 大御所、伊東俊太郎氏も興味をもつ

 —— 2004年パラケルススの『奇蹟の医の糧』を刊行した直後に、BHミーティングで販売させてもらいました。そのときは科学史家の伊東俊太郎さん(*5)もお見えになって大盛況でしたね。

どのように伊東さんがお知りになったのかわからないですが、どこかで告知をみて興味をもたれたんだと思います。いつもはだいたい20人くらいですが、あのときは予想以上に増えて40人くらいが集まり、東大駒場の教室を急遽変更してもらいました。確かに若手が中心なんですが、ベテランの方でもオープンマインドでアンテナの感度が高い方が参加してくださいます。

奇蹟の医の糧

 —— 2004年に続く規模のミーティングは?

2012年7月の立教大学のシンポジウム「人知の営みを歴史に記す 中世・初期近代インテレクチュアルヒストリーの挑戦」です。大学の公式行事として2日間にわたり開催し、書籍化が進んでいます。
今年7月に行った学習院女子大学の国際会議「西欧ルネサンスの世界性と日本におけるキリシタンの世紀(1550-1650)」も、科学研究費プロジェクトで、来年も開催します。

 —— 学習院女子大学の国際会議は発表も質疑応答も英語なので驚きました。

海外の研究者を招いての会議ですから。海外で得た経験をどのように日本のみなさんに還元できるか、それをいつも念頭に置いています。


■ 伝説の論集『ミクロコスモス』

 —— BHメンバーで論集を刊行されましたね?

論文を持ち寄って一冊の本をつくることにしました。しかし、僕らは学生中心なので出版社にコネがない。平凡社を離れてフリー編集者になっていた二宮さんが、我々の熱意をかってくれ、いろいろな出版社にあたってくれたんです。おかげで月曜社に決まり、2010年2月に『ミクロコスモス—初期近代精神史研究』が出ました。

 —— 紀伊國屋書店新宿本店での刊行記念トークイベント(2010年3月)も満員となり、『ミクロコスモス』は瞬く間に品切れに。

2ヶ月くらいで売り切れてしまいました。早かったですね。10年以上BHを続けていたのでファンの方がいたでしょうし、初版コレクターもいたでしょう。また、ブームが一段落したルネサンス思想というジャンルで若い研究者が論集をつくったということに、好奇心をもった方もいたでしょう。みなさんの期待に沿う内容だったと自負しています。論文だけではなくて海外の研究動向を紹介したり、原典の翻訳も掲載して工夫しました。


■ 編集の愉しみとこだわり

 —— 編集構造はヒライさんが考えたのですか?

そうです。編集ははじめてでしたが、ふだん読んでいる論集をみて自分なりの理想像があったので、それになるべく近づけたい、という思いはありました。

 —— 二宮さんのアドバイスは?

構成についてはないですね。二宮さんの関心はカタカナや人名の表記と漢字でした。全体構造についてはフリーハンドで、僕のやり方を尊重してくれていました。

 —— 編集的な才能がおありになったんですね。

それは根っから好きだったんだと思います。人をコーディネイトすることも好きです。この研究をやっているこの人と、あの研究をやっているあの人がつながったら面白いんじゃないかとひらめき、引き合わせてみたくなるんです。『天才カルダーノの肖像』について言えば、カルダーノ研究の第一人者である榎本恵美子さんの原稿に、カルダーノの敵、スカリゲルを専門とする若手研究者の坂本邦暢君が解説を書くと面白いだろうと思ったんです。案の定、坂本君が最新動向も書いてくれて、補い合う形になりました。

天才カルダーノの肖像

■ BH叢書はじまる

 —— この『天才カルダーノの肖像』は勁草書房さんから2013年7月に刊行したBH叢書第1弾ですね。ヒライさんが叢書監修、第1巻の編集も担っています。BH叢書についてお話ください。

シリーズで出版を、というお話を勁草書房さんからいただいて実現しました。第1弾の榎本さんは論文として活字になったことで満足されていましたが、これは世に出さないともったいないと思い、書籍化をお願いしました。年代もさまざまな論文だったので、表記のユレなど一字一句直しました。少数の専門家に向けて書くよりは、もっと一般の人を巻き込んで、好奇心をもった読者に届くような本にしましょう、ということからはじめています。漢字の開き具合も、2012年に亡くなった二宮さんの遺言だと思って、こだわりました。この叢書では読みやすさを最優先に編集しています。

 —— なぜそこまで読みやすさを?

読者がはじめて出会うテーマや概念はそれだけで話が複雑ですから、日本語が複雑だと読者がついていけない。読みやすい、わかりやすい、明快な文章であるように、非常に気をつけました。

 —— 叢書のラインナップは他に6点が決まっているのですね。

この帰国中にも続々と増えています。次は菊地原洋平君の『パラケルススと魔術的ルネサンス』が年内に刊行予定です。ラインナップはルネサンス/初期近代がメインですが、それに限らず中世や古代、あるいは18世紀のものも幅広く入れていくつもりです。ルネサンスを知るためには、その時代だけを調べればいいわけではありませんから。空間的にも影響があったでしょうから、西洋に限らず日本も取り込んでいくつもりです。

BH叢書パンフレット 初期近代精神史研究ブックリスト
BH叢書パンフレット(左)とヒライさん選書の初期近代精神史研究
ブックリスト。ともに紀伊國屋書店フェアで配布(9/16まで)。

 —— 『天才カルダーノの肖像』と『普遍音楽』が同じ7月刊行になったため、紀伊國屋書店で合同フェアの開催となりました。核となるヒライさん選書にも『普遍音楽』をとり上げてくださるなど、ご自身の新刊がありながらも工作舎の本も応援していただき、深く感謝しております。

ルネサンス/初期近代の精神史というジャンルは大きくはありません。どこの出版社から出版されようと、いっしょに盛り上げていくのが当然です。


■ 「ヘルメスの図書館」の編集者

 —— BH叢書にヒライさんご自身の執筆は?

翻訳はありますが、自分の研究と編集作業で精一杯なので書き下ろしはしません。榎本さんの本を準備しているとき、昼夜を問わず編集作業に明け暮れ、嫁には申し訳ない思いをさせました。電車に乗っていても飛行機に乗っていも原稿を直していて、それは大変でした。叢書のラインナップは増えているので、このままでは手が回らなくなってしまいます。

 —— ヒライさんの夢は?

叢書をもつという夢が実現しました。次の夢は、叢書の学術編集ができる人間が育って、リードしてくれるようになってほしいということです。せっかく立ち上げた叢書ですから、長く続けたい。やはりBHは図書館ですから、書籍にはこだわります。しかし紙ではなく電子書籍でもいいんです。自分の好きな本を集めていましたが、今は好きな本をつくりながら集めているのでしょうね。

 —— どうもありがとうございました。


紀伊國屋書店新宿本店フェア前のヒライさん
ヒライさんは7月の帰国直前に足を骨折し、車イスで東京や大阪の講演をこなした。
紀伊國屋書店フェアにも車イスで参上。


ヒロ・ヒライさんと奥様のクレアさん
ヒロ・ヒライさんと奥様のクレアさん

ヒロ・ヒライ
ルネサンス思想史。1999年より学術ウェブサイトbibliotheca hermetica(略称BH)を主宰。同年にフランスのリール第三大学にて博士号(哲学・科学史)取得。博士論文にて2001年、国際科学史アカデミー新人賞受賞。その後、欧米各国の重要な研究機関における研究員を歴任。現在、オランダ・ナイメーヘン大学研究員。Early Science and Medicine誌副編集長。2012年に第九回日本学術振興会賞受賞。
第1著作『ルネサンスの物質理論における種子の概念:フィチーノからガッサンディまで』(ベルギー、ブレポルス書店、2005年2月、仏語)。これはスペイン AZOGUE 誌『2005年度ブック・オヴ・ザ・イヤー』賞受賞、フランス医学史学会、第1回スルニア賞を受賞。第2著作は『医学的人文主義と自然哲学:質料、生命、霊魂についてのルネサンスの論議』(ライデン・ボストン、ブリル書店、2011年、英語)
さらに詳しくはBHサイトのプロフィール欄へ。




*註1 キルヒャーについての論文:ヒロ・ヒライ「アタナシウス・キルヒャーにおける天地創造のキミア的解釈と生命の粒子論的起源」(2007)BHサイトへ

*註2 石が生きている:「生気論」の考えのひとつ。「生気論 vitalism」とは、広義には、あらゆるものの中に機械論的に説明しえない生気(ラテン語でvita)を認める立場をいう。その原始的形態はアニミズムで、あらゆる自然物の中にアニマ(霊魂)の存在を認める考え方である。それは活動力ないし対話の対象とみなされたので、エネルギー概念および情報概念の先駆とも見られる。この思想的伝統はヘルメス思想の中に生き続け、ライプニッツの活力説(彼は力=エンテレキアentelechiaを実体とした)を経て、19世紀ドイツの〈自然哲学〉にまで及んだ。(世界大百科事典 第2版より)

*註3 二宮隆洋:1951-2012。編集者。平凡社在籍中(1976-1999)に、『中世思想原典集成』「クリテリオン叢書」「ヴァールブルク・コレクション」『西洋思想大事典』など、およそ200点の人文書を公刊。フリー編集者になってからも、イエイツ『ジョン・フローリオ』(中央公論新社 2012.3刊/共訳)など意欲的に出版物を世に送り出した。2012年4月、胃癌のため永眠。

*註4 ヘルメス:ルネサンス思想でヘルメスといえば、ヘルメス・トリスメギストスのこと。錬金術師の祖。ヘルメス・トリスメギストスを中心とした錬金術的、魔術的、神秘思想を指すことも多い。

*註5 伊東俊太郎:日本を代表する科学史家。1929年生まれ。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授、プリンストン高等研究所客員研究員、日本科学史学会会長(2001年度-2008年度)などを歴任。主な著書『十二世紀ルネサンス』(講談社学術文庫)、『近代科学の源流』(中公文庫)、『新装版 比較文明 』(東京大学出版会)など多数。






土星の環インタビュー 一覧


ALL RIGHTS RESERVED. © 工作舎 kousakusha