『インド科学の父 ボース』宗教新聞にて書評、
IT大国の基礎をつくった人
宗教新聞 2009年8月5・20日合併号にていただいた『インド科学の父 ボース』書評の冒頭の文章である。そして次のようにボースの業績へと続く。本書で紹介されるボースは、「中村屋のボース」でも独立運動家のボースでもない。しかし、今日IT大国となったインドにとって、その貢献は二人のボース以上だと言えよう。
この成果に対して生理学者たちが一斉に反発した。インドでの地位さえ危うくなり、不名誉を回復するため英国で奮闘するのだが、ここが本書の山だと指摘する。1857年、今のバングラデシュ・ダッカで生まれたボースは、カルカッタの大学で当時、最先端の電磁波の研究に取り組み、ミリ波を使ったコヒーラ(電波検出装置)の開発で宗主国、英国でも注目された。98年には無線の公開実験を成功させ、マクウェル、ヘルツ、マルコーニらに匹敵する役割を果たしている。
コヒーラの実験中、金属が筋肉疲労と同じような反応を示すことに注目したボースは、生物と無生物の境界を超える科学の可能性を感じ、植物を使った生理学の研究を始める。電波や光、圧力、重力などの刺激に、植物がどう反応するのか、系統的に調べたのである。
これが冒頭の一文へとつながる。植民地支配下のインドで科学者として成功をおさめることは、いかなる困難があったのか、ボースがどのように立ち向かったのか、ぜひ一読願いたい。なお、本書はインド文化交流センター刊行の「インド通信」にも紹介された。反発の背景にはインド蔑視もある。やがてボースは戦いに勝利し、一般紙までが、インド人にはヨーロッパ人に欠けた、物事を統一的に把握する力がある。と評価するに至った。
