
ヴィクトリア朝に始まる魔性の女・短編傑作選
3月の新刊は、『狼女物語―美しくも妖しい短編傑作選』。満月のまばゆい月光のもと、狼から美女へと変身する狼女(She Wolf)。虜にされた男たちは、抱擁とともに心臓を引き裂かれるという。
嵐に遭った学生が避難した家の娘が、真夜中に牙を剥く「狼娘の島」、青い花のなかを歩く少女に惹かれて向こう岸に渡ると、そこは人狼の世界だったという「向こう岸の青い花」、仔狼時代にかわいがってくれた主人の前に、野生の女として現れ無垢な愛情を注ぐ「イーナ」など、計6編を収めた短編傑作選。
19世紀から20世紀初頭にかけての英米作品です。同じ頃、美術界ではラファエル前派が活躍していました。
表紙にあしらった絵は、その代表者、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ画の「レィディ・リリス」。この詩に同伴するソネット「リリス」も発表されています。ウェルズ恵子さんの解説によると、「向こう岸の青い花」(ステンボック作)はロセッティの詩との関わりがあるそうです。
「伝説では、リリスはイヴの前にアダムの妻となった女性で、多産で奔放だったとされます。…ロセッティも、リリスを地に属する原初的な女性として表現していますが、いっぽうで、豊かな金髪の若いリリスが男性の身と心を虜にすることを幻惑的に詩にしています。ステンボックの「向こう岸の青い花」で、少年の名がガブリエル、狼女の名がリリスで金髪であることから、ロセッティの詩がこの物語の下敷きになっているとみて間違いないでしょう」。
発売は2011年3月23日頃の予定。どうぞお楽しみに。
