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09-c 硫黄 |
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| 「賢治と鉱物」本文:硫黄 | ||||||||||||||||||||||||
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硫黄の地殻存在度は酸素、珪素、アルミニウムなどに比べると圧倒的に低く0.026%に過ぎません。しかし、硫黄は珪酸塩鉱物にはあまり含有されず、火山ガスに濃集するほか石膏などの硫酸塩鉱物や、黄鉄鉱に代表される硫化鉱物、そして自然硫黄として出現し、存在度が低い割には確固たる存在感を示しています。自然硫黄は、“黄色だから硫黄”、“硫黄は常に黄色”といった、極度に単純化された鑑定基準とともに、広く知られています。 硫黄は、酸素や水との反応や温度によって千変万化します。水素と結びついて硫化水素 H2S(温泉地の香り。腐卵臭をもった毒性の高いガス。硫黄は-2価)をつくり、元素単体で硫黄 S(0価)を、また、酸素と結びついて二酸化硫黄 SO2(高温火山ガスに含まれる刺激性の強いガス。硫黄は+4価)をつくります。比較的高温で二酸化硫黄と硫化水素が反応するとガス状の硫黄ができ、それが硫黄の融点より低温の噴気孔に達したところで硫黄の結晶になります。温泉環境では、硫化水素は硫黄バクテリアの作用でも酸化され、硫黄や硫酸へと姿を変えます。酸素と結びついた硫黄が水に溶けむことによって、強い腐食性をもった硫酸H2SO4(硫黄は+6価)ができます。温泉地から流れ出す川や火口湖が強烈な酸性を示すのはそのためです。 単体硫黄は、低温から高温に向かって、斜方硫黄→単斜硫黄→溶融硫黄と状態を変えます。水の沸騰温度(1気圧では100℃)と硫黄の溶融温度(112.8℃〜119.0℃)は近いため、結晶状態の硫黄と、溶融状態の硫黄とを同時に見られる場所もあります。 地表下で沸騰した水から分離した蒸気とともに噴気孔に達した硫黄ガスは、そこで斜方硫黄の針状結晶を昇華します(写真1)。圧力が高いところでは水の沸騰点が高くなり、硫黄の溶融点以上の温度が実現されることがあります。たとえば、噴気帯の地下や火口湖の水底では硫黄の融点以上の温度になっていることがあります。 これは圧力鍋で調理するときに似ています。鍋を密封することで蒸気の発生を抑制し、鍋の中を高温に保つことができるため、調理の能率が上がるのです。密封した鍋を加熱し続けると、圧力はどんどん高くなりますので、安全弁を設けて鍋の耐圧限界よりも低い圧力で蒸気を逃がしています。安全弁から噴き出す蒸気は、火山・温泉地帯の噴気に喩えることができるでしょう。 噴気活動が長期間にわたり継続すると、地表に昇華硫黄が蓄積されたクラスト(殻)ができます。硫黄の昇華は蒸気の流路を狭めるため、マウンド下部は次第に“圧力鍋状態”に近づいてゆきます。クラストは蒸気の圧力で押し上げられドーム状のマウンドとなり、クラストの下部には溶融硫黄が溜まります。水蒸気圧がマウンドの重量に打ち勝つだけの強さに達したとき、マウンドを突き破って溶融硫黄が流れ出します。この現象の最も劇的な例として世界的に著名なのが、知床硫黄山の1935年噴火です。溶融硫黄は、噴火口からオホーツク海に至る延長1400mの谷を高純度硫黄で埋め尽くしました。硫黄の噴出は8ヶ月間で20万トンにも及びましたが、噴火後、徹底的に採掘され、今日ではその痕跡さえ見ることができません。 噴気孔では蒸気の圧力と温度が急激に低下するため、硫黄は急速に成長し、通常、結晶面よりも稜が飛び出した骸晶状になっています(写真2)。これに対し、温度勾配の小さい水溶液中では結晶成長が緩慢に進むため、平滑な結晶面を備えた大型結晶になります(写真3)。 硫黄は重要な鉱物資源で、火薬、肥料、殺虫剤、医薬品、合成ゴムの原料として広汎に利用されています。 |
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