
『植物の神秘生活』で紹介された
天才の研究が明らかに!
6月の新刊『インド科学の父 ボース』がまもなく発売になる。19世紀後半、イギリス統治下のインドに生まれながら、無線や植物生理学に多大な貢献をしたジャガディス・チャンドラ・ボースの伝記である。
小社のロングセラー『植物の神秘生活』第6章「一億倍に拡大された植物生命」が彼に捧げられていることから、ボースの名は日本でもそれなりに知られているだろう、13刷も数えるロングセラーなのだから。と思っていたのだが、驚くほど無名だった。
インド人でボースといえば、革命家のボース、中村屋のボース、ちょっと科学をかじっている人なら、「アインシュタイン=ボース統計」のボースになってしまう。しかし、もうひとりボースがいたのである。
そこで我らが、ジャガディス・チャンドラ・ボースについて簡単に紹介したい。無線の発明というと、マルコーニや悲運なテスラの名が挙がるが、実はマルコーニが大西洋横断無線電信を成功する前に、ボースは実験に成功していたし、そのボースの発明した機器(水銀コヒーラ)をマルコーニが盗用していたという指摘もある。
ボースはこうした電磁波研究から、金属や岩石などの無機物が外部刺激にどう反応するか、生物と無機物の境界は何か、さらには植物の反応へと関心が移っていった。そして、植物の運動を記録する実験機器を開発し、植物の神経伝達は動物と見分けがつかないことを証明している。まさしく『植物の神秘生活』の世界!
ボースはインド初の近代的な科学研究所「ボース研究所」を設立し、後進の育成に力を注いだ。今コンピュータ業界、産業界ではインドが注目されるが、その「インドの飛躍はここからはじまった」という帯の惹句のとおりである。
なお、著者はボースと同時代を生きたパトリック・ゲデス。近代都市計画の祖と呼ばれる建築家がボースに共感し、書き上げた。そして訳者は、ニコラ・テスラの研究者として数々の著作がある新戸雅章氏。ちょっとは興味が湧いてきたなら、下の目次もチェックしてほしい。『植物の神秘生活』ファンのあなたも、『テスラ』ファンのあなたも、不思議な科学者好きのあなたも、「こんな天才がインドにいたなんて!」と驚いてほしいから。
■目次より
序文第1章 子ども時代の教育
東ベンガルの文化的伝統盗賊の冒険譚に胸躍らせる
荒れ狂う「流れ」の魅惑
第2章 カルカッタ、イギリスでの大学生活
ラフォン神父の実験手ほどきイギリス留学
レーリー卿との出会い
第3章 苦闘のはじまり
不当な差別学生たちを魅了する
最初の科学的成功
第4章 最初の物理学研究・電波の謎に挑む
科学という理想都市の建設マクスウェルの予言とヘルツの実験
ポアンカレも評価したボースの受信機
第5章 ヨーロッパ科学界の称賛
王立研究所で講演発明で個人的利益を追求しない
旧来の偏見を払拭
第6章 物理学研究の発展
分子ひずみ理論とその解釈電波と光の類似
人工網膜の発明
第7章 生物と無生物の反応
パリ国際物理学会で講演タゴールの祝福
敏感な植物たちとの出会い
第8章 休暇と巡礼
巡礼のもたらすものボース夫妻の聖地巡礼
精神の共同体としてのインド
第9章 植物の反応
植物の興奮状態を記録する植物生理学の本格的研究
マイハギの自動運動とオジギソウの反応
第10章 植物の感受性
高倍率の共振レコーダーの開発欧米での植物実験と講演の反響
アルコールでも水でも酔っぱらう植物
第11章 成長の自動記録
カタツムリより遅い植物の成長運動植物に体罰は有用か?
磁気クレスコグラフの発明
第12章 植物のさまざまな運動
植物たちの生きる知恵植物学用語の迷宮
神経インパルスの二重性
第13章 あなどれない植物たち
人間の舌先より敏感な植物平衡型クレスコグラフの発明
無線に対する反応
第14章 屈性
巻く、光に向かう、天をめざす芽と根はなぜ正反対をめざすのか
植物はどこで重力を感知するのか
第15章 植物の睡眠
スイレンの夜警祈るヤシの謎
植物の睡眠と覚醒
第16章 精神物理学
物理、生理から心へイメージの再現
過保護は生命をスポイルする
第17章 人柄と交友
つつましいけれど活動的な家族二人の女性
タゴールとの友情
第18章 ボース研究所の開所式
失敗と成功/生物と無生物/二つの理想進歩と知識の普及/生命の昂揚/展望
インドの特別な能力と科学への貢献/植物の生活と動物の生活
第19章 研究所の発展
マスメディアの反響インドの最先端科学の推進センター
王立協会フェローとなる