工作舎ロゴ 工作舎40周年企画-4


工作舎40周年ベスト40+10 本は暗い玩具(オブジェ)である

4-想像力を編む匣

音、光、形…美しさを、楽しさを味わい、イメージをはばたかせるために。
想像力を編む匣

*写真上段左より
  • インプロヴィゼーション D・ベイリー/2415円
  • ドラム・マジック M・ハート/2625円
  • ジオメトリック・アート C・シュワーベ+石黒敦彦/4095円
  • メディア・アート創世記 坂根厳夫/3360円
  • TRA タイガー立石/5250円
  • 多主語的なアジア 杉浦康平/2940円
  • 茶室とインテリア 内田繁/1890円
  • 表象の芸術工学 高山宏/2940円
  • 脳科学と芸術 小泉英明=編著/3990円
  • 平行植物 L・レオーニ/2310円



    「想像力を編む匣」の中身を工作舎スタッフの会話でご案内します。
    インプロヴィゼーション
    インプロヴィゼーション

    スタッフA:「想像力を編む匣」では『インプロヴィゼーション』が一番のロングセラーでは。1981年の初版後一度は品切れにしましたが、93年の著者デレク・ベイリーの来日を記念して復刊。以後、増刷を重ねています。インプロヴィゼーション、即興のことですね。

    スタッフB:インプロヴァイザーとして新しいジャンルをつくりあげたデレク・ベイリーが、インド音楽、バロック音楽、ロック、ジャズなどの既存ジャンルの即興演奏家と語り、即興の本質を明かしていくのです。相手に語らせるので説得力があります。

    スタッフA:帯の推薦文が坂本龍一さんなのも魅力ですね。2005年12月にベイリーが亡くなったとき、追悼コンサートでは大友良英さん、灰野敬二さんらトンがったミュージシャンが参集し、影響力の大きさを改めて感じました。

    スタッフB:音楽シーンはもとより広く芸術で即興の重要性が増していることもあるでしょうね。某書店では演劇の棚にも置いてありました。近々、工作舎からベイリー伝記を刊行しますが、大著らしいですよ。

    ドラム・マジック
    ドラム・マジック

    スタッフA:同じ音楽畑でも『ドラム・マジック』は、ロックのグレイトフル・デッドのドラマー、ミッキー・ハートの本。デッドもライブでの即興演奏が有名です。ベイリーとはジャンルが違いすぎていっしょに語ってはいけないのかもしれませんが。

    スタッフB:デッドといえばヒッピームーブメント。デッド辞典である『スケルトン・キー』からは、愛、自由、ネイティヴ・アメリカンへの接近、ドラッグがイメージされます。

    スタッフA:ミッキーも神話学者のジョゼフ・キャンベルを師と仰ぎ、世界各地の民族音楽家やネイティブ・アメリカンのシャーマンと交流するんですね。ドラムのリズムが持つ不思議な力に気づかせてくれます。デッドヘッズでなくても読んでほしい本です。

    TRA
    TRA(トラ)

    スタッフA:『TRA(トラ)』のタイガー立石さんの発想も自由で、既成概念を打ち破るような不思議な魅力にあふれてます。意外なことに『ドラム・マジック』のミッキー・ハートとは同時代人なんです。やはり60-70年代の空気がそうさせるのか。

    スタッフB:『TRA』は、虎をモチーフにした絵画や立体作品など幅広く手がけたタイガーさんのコミック作品の集成。祖父江慎さんの造本が光り、表から裏、天地の逆転等トポロジカルに感覚を刺激します。エッシャーを彷彿とさせるところもありますね。

    メディア・アート創世記
    メディア・アート創世記

    スタッフA:エッシャーといえば生前のエッシャーに会ったという坂根厳夫さん。遺族に見込まれて、『エッシャーの宇宙』など何冊も翻訳していますね。錯視芸術やメディア・アートの紹介者である坂根さんの活動をまとめた『メディア・アート創世記』の中にもエッシャーとの写真が収録されています。

    スタッフB:朝日新聞の記者をしながら、科学と美術の境界領域アートを取材し、その美術展を企画してきたそうです。岐阜にあるIAMASの学長となり教育現場にも。その中で交流してきたアーティストたるや、ものすごい。ナム=ジュン・パイク、チャールズ・イームズ、中谷芙二子さん、岩井俊雄さんなどなど。

    スタッフA:生き字引の坂根さんがメディア・アートの流れを説明してくれるので、工作舎で刊行してきた『映像体験ミュージアム』『イマジナリー・ナンバーズ』『創造性の宇宙』などの位置づけがわかるようになりました。

    ジオメトリック・アート
    ジオメトリック・アート

    スタッフB:『ジオメトリック・アート』もまさしく境界領域アートに位置づけられますね。杉浦康平さんがプロデュースした神戸芸術工科大学レクチャーシリーズの最後の本で、オールカラーの鮮やかなビジュアル本です。

    スタッフA:バックミンスター・フラー設計による多面体バッキーボールを巨大化した「BBBB(ビッグ・バンブー・バッキーボール)」などフラー好きの人にもおすすめです。幾何学がこんなに美しく、機能的なのか!目からウロコが落ちまくります。

    表象の芸術工学
    表象の芸術工学

    スタッフB:杉浦さんの神戸芸術工科大学レクチャーシリーズからはもう1冊入りました。それが『表象の芸術工学』、高山宏さんの講演録です。

    スタッフA:なんといっても高山さんはライブ(講演)がいい。観相学、マニエリスム、ピクチャレスク、庭園、グロテスク、驚異の部屋など、次々とテーマを変奏していく話術は天下一品。

    スタッフB:今年羽鳥書店さんから『新人文感覚1 風神の袋』が刊行され、もうすぐ『2 雷神の撥』も刊行されるそうです。ここ15年間の集大成で、ともに1000頁前後、1万円以上の大著です。高山さん、すごすぎます。

    多主語的なアジア
    多主語的なアジア

    スタッフA:『表象の芸術工学』では杉浦デザインとのコラボも新鮮です。杉浦康平さんの自著は「書物と遊ぶ匣」と分かれて入っています。こちらには『多主語的なアジア』、テクストを精選したシリーズ「杉浦康平デザインの言葉」の第1弾です。第2弾の『アジアの音・光・夢幻』も1年ぶりに刊行されました。

    スタッフB:『多主語的なアジア』には、ドイツ・ウルム造形大学に赴任した際、日本/アジアを意識されたそうです。それまではバリバリの西洋合理主義的なデザインだったのに。そのいきさつを綴ったエッセイも収録されています。

    スタッフA:「私」を主張する西洋と、アジアでは主語がない、というより数多くの主語「多主語」があり森羅万象をみたしている。こういう世界観は今こそ受け継ぎたいものですよね。

    茶室とインテリア
    茶室とインテリア

    スタッフB:西洋モダニズムから日本の伝統を見直したのが、内田繁さんの『茶室とインテリア』。世界的に活躍するインテリア・デザイナー内田繁さんが、靴を脱ぎ、床に座りたがる日本人の身体感覚、伝統的なデザインについて綴った本です。

    スタッフA:内容もさることながら、表紙が美しいと評判でした。表紙の写真は内田さんの作品「和紙の茶室」です。定価も本体1800円と手頃で、ページ数も少なくて読みやすそう。増刷を重ねている良書です。

    平行植物
    平行植物

    スタッフB:アートデザイナーとしても有名な絵本作家、レオ・レオーニも人気があります。『平行植物』は遊び心あふれる架空の博物誌です。

    スタッフA:想像上の「平行植物界」に棲息する植物を創り出し、○○大学の××先生に発見されたとか、こんな学説があるとか神話伝承まで編み出しているのです。

    スタッフB:イタリアで発売したときは専門書のようなカタイ作りで販売したそうです。だまされる人も多かったのでは。日本版も根強い人気があり、工作舎からは10数年ぶりの復刊。印刷会社の計らいで活版印刷で復刊できたこともファンの心をくすぐり、もうじき増刷ができます。

    脳科学と芸術
    脳科学と芸術

    スタッフA:こうした音楽、絵画、デザイナーなど、第一線で活躍した(し続けている)アーティストたちの、イマジネーションあふれる本の中に、科学からアプローチした『脳科学と芸術』が入るとピリリとした刺激が生まれますね。

    スタッフB:音を聴いたり、美しいと感じると、脳の中で変化が起きるのでしょう。それがどのような仕組みなのかを31名の脳科学者とアーティストの論考・エッセイによって解き明かそうとするのが、この本。

    スタッフA: 硬めの本ですが、なぜ感動するのか?とか、脳の病がもたらす芸術的表現など興味深い論考が集まっています。

    スタッフB:文章を寄せくれたアーティストの多くは音楽家です。左手のピアニストとして有名な舘野泉さんや高橋アキさん、作曲家の湯浅譲二さん、吉松隆さんなど。こうしたアーティストの体験的考察と、脳科学者側からの研究成果からなります。

    スタッフA:数々の論考から「芸術とは何か?」が浮かび上がっていくのですね。






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