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『星投げびと』復活


星投げびと


2001年11月刊行したローレン・アイズリー著『星投げびと―コスタベルの浜辺から』。品切になっていましたが、最近ネットで話題になることもしばしば。そこで、カバーを増刷して出荷できるようにしました。

ローレン・アイズリーは、ソロー、エマソンの系譜を継ぐナチュラリストにして、20世紀のアメリカを代表するエッセイスト、詩人。数多くの著作のなかでも本書『星投げびと―コスタベルの浜辺から』は、傑作エッセイを厳選して一冊にまとめあげた書。アイズリー入門としてぴったりな本です。とは言っても、アイズリーは口当たりが柔らかいわけではありません。自然との関わりの中で、自然-宇宙とのつながり、生命の本質を思索したもの。深い読後感を味わいたい方におススメです。本書より一節をご紹介します。


「こうして」彼はやさしくそう言いながら、浜辺にころがる漂着物のまんなかあたりをさし示した。「生きているやつだけをね」彼はふたたび身をかがめ、私の好奇心などには無頓着に、あざやかにヒトデを海へ投げこんだ。
 「うまく投げてやれば、助けてやることもできるんだ」彼はそう言った。…(中略)
 海岸の湾曲部についたところでふりかえってみると、彼はふたたびヒトデを投げているところだった。熟練した手つきで荒れくるう波のはるかむこうへと。一瞬、光が変わって、彼の姿が巨大化したように見えた。それはまるで大きな星を、より偉大な海へと投げこんでいるかのようだった。いずれにしろ、彼には神の威厳がそなわっていた。
 (「13 星投げびと」より)



目次

序文 予知かなわぬもの  W・H・オーデン

I 自然と自伝

1 鳥たちの裁判
2 長い孤独
3 惑星を一変させた花
4 無邪気な子ギツネ
5 守護霊
6 鳥と機械
7 火の猿
8 イースター――顔の島
9 蛙のダンス――アルバート・ドライヤー老/科学者の正体/春の夜道/黒手袋
10 隠れた教師――知恵の力/自然
11 五番目の惑星――星のハンター/希望/偉大なる計画/奇妙な影響/消滅
12 最後のネアンデルタール人――心/先祖返り/意思

II 科学とヒューマニズム

13 星投げびと――コスタベルの浜辺/髑髏/孤独な使命/虹
14 科学と聖なる感覚――記憶の化石/畏怖/旅人
15 人間の冬
16 人間対宇宙――衝撃/ふたつの哲学/明日
17 自然へのソローのまなざし――コンコードヤマネコ/地水火風/永遠の目
18 ウォールデン――放浪者/心の跡/文明の鉄則
19 「自然」はどれほど自然か――マスクラット/知恵と倫理/奇跡の隠し味/緑の島
20 内なる銀河――本物の芝居/人間の顔/カモメと木箱


著者紹介:ローレン・アイズリー Loren Eiseley

1907年9月2日、アメリカ・ネブラスカ州に生まれる。画家で巡業芝居の役者だった父と耳の聞こえぬ母のもと、「ひとりっ子」として貧しい家庭に育つ。青年時代には世界恐慌を体験、アメリカ中を旅しながら職を転々とした。やがて学問の道を志し、ペンシルヴァニア大学教授に着任。同大学の学部長、全米人類学会の次長、そして米国科学促進協会の次長およびその科学史部の議長を務め、理系・文系を問わず多くの賞や名誉学位を受ける。著書に『Darwin's Century』『The Immense Journey』『The Unexpected Universe』『夜の国』(工作舎)などの多数のエッセイ集がある。享年70歳。ほかに進化論誕生の舞台裏を探る『ダーウィンと謎のX氏』(工作舎)などが公刊されている。






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