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5月の新刊 古賀弘幸著『文字と書の消息』
表紙と「十万年後へのメッセージ」


『文字と書の消息』


古賀弘幸著『文字と書の消息』の表紙デザインができました。「筋入りターポリン紙」というテクスチャーのある紙。クラフト紙にブロンアスファルトをサンド加工したもので、つくりたては色が浅く、時間が経つにつれて深い緑がかった色合いになるそうです。本書では深い緑のものを用いますが、紙の特性上、1冊1冊の色合いが微妙に変わるかもしれません。タイトルと著者名は白箔で置かれ、『文字と書の消息』の佇まいにふさわいしいデザインとなりました。

さて、本書の魅力をより知っていただくために、本文の一部をご紹介します。
帯コピー「文字百景」のとおり、漢字や書道等さまざまな文字と書を扱う本書では、文字の未来にも思いを馳せます。それが「第一章 文字の場所・文字の風景」からの一節「十万年後へのメッセージ」。フィンランドのドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」で紹介された、高レベルの放射能性廃棄物を永久に貯蔵する世界初の地下施設「オンカロ」と10万年後の文字をめぐる思索。



十万年後へのメッセージ 「第一章 文字の場所・文字の風景」より

(前略)廃棄物の十万年間の半減期を待つことになるのだが、十万年とは人間にとってどのような時間だろうか。…(中略)
「ここは危険な場所だから、近づいてはいけない」というメッセージを未来の人間に伝える必要がある。
 ところが数万年後に人間が生き残っていたとして、彼らが文字を使ってコミュニケーションをするかどうかなど、まったく保証はない。人類最古とされるシュメールの楔形文字ですら五千年前、最古の漢字である甲骨文も三千五百年前のものにすぎない。文字が読めなければ、もし読めたとしても未来の人間は「近寄るな」というメッセージを無視してしまうかもしれない。石碑のようなものに、文字または絵文字や絵画によるメッセージを刻むことなどが検討されているが、まだ結論は出ていない。
 文字も書も私たちが考えているほど、長い長い時間には耐えられないのかもしれない。


十万年後へのメッセージ『文字と書の消息』より
本文より「十万年後へのメッセージ」:クリックするとpdfに移動します。


※なお『文字と書の消息』の進行が遅れ、5月中旬の刊行になりました。またサブタイトルを「落書きから漢字までの文化誌」へ変更しました。ご了承ください。



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