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2月の新刊『三つの脳の進化 新装版』


三つの脳の進化 新装版

2月の新刊は、ポール・マクリーン博士の『三つの脳の進化 新装版』です。

人間の脳は長い生物進化の歴史を内臓し、爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳の相互作用で働くと唱えたポール・マクリーンの「三位一体脳モデル」。

「三位一体脳モデル」とは、ヒトの脳を3層で考え、一番内側は爬虫類から継承して反射をコントロールする脳、その外側に哺乳類から受け継いだ「情動脳」、一番外側の新皮質が人間が獲得した「理性脳」で構成され、相互作用で働くという説。カール・セーガン『エデンの恐竜』に影響を与え、アーサー・ケストラーが引用するなど、各界を震撼させた理論です。その全貌が、ついに新装版で甦ります。

本書の復刊の要因は、近年増えた問い合わせでした。1994年邦訳なのに、と思い、ネットを調べると、脳を活性化させて学習能力を高めるアプローチに引用される一方、安易な応用を危惧する専門家たちの意見も。本書の復刊は、改めて賛否両論を呼び起こしそうです。
発売は2月下旬予定。どうぞお楽しみに。



■目次より

第I部 三つの脳の進化:知性の前駆活動に果たす役割

まえがき
1 主観脳の学:主体的認識論“エピステミクス”に向けて
  1・1 はじめに

  1・2 客観性と主観性   1・3 “エピステミクス”
2 脳研究の新しい展開
  2・1 三位一体モデル
  2・2 用語の操作論的定義
  2・3 脳の臨床比較神経行動学
3 中枢神経系と前脳の役割
  3・1 前脳の発生
  3・2 前脳と動物行動
4 自律神経系と大脳辺縁系の役割
  4・1 自律神経系の同化・異化作用
  4・2 自律神経系の同化・異化作用と情動
5 反射脳の構造とはたらき
  5・1 反射脳の構造
  5・2 反射脳と動物行動
  5・3 反射脳の異縁性認識と瞬間学習
  5・4 爬虫類の行動戦略
6 反射脳の臨床観察
  6・1 反射脳の損傷による精神障害
  6・2 神経科学的考察
  6・3 結果の要約
7 反射脳と人間の定型行動
  7・1 前言語的思考としての行動
  7・2 人間と爬虫類の行動比較
  7・3 人間と爬虫類の戦略比較
8 哺乳類型爬虫類セラプシド
  8・1 哺乳類型爬虫類の進化
  8・2 進化への問題点
  8・3 絶滅の原因
  8・4 定向進化
9 哺乳類型爬虫類から哺乳類への進化
10 情動脳の構造とはたらき
  10・1 情動脳の構造
  10・2 辺縁系という考えの発展
  10・3 情動脳の実験的・臨床的観察
11 情動視床体と家族行動
  11・1 神経行動学的発見
  11・2 母性行動
  11・3 アソビのはじまり
  11・4 音声交信のはじまり
  11・5 コメント:文明の萌し
12 情動脳の障害と心身性てんかん
  12・1 心身性てんかんの歴史
  12・2 病因と病理
  12・3 主観の脳神経機構に向けて
13 心身性てんかんの現象論:基本的・個別的情動の顕在化
  13・1 心理学的情報の主観的表現
  13・2 情動の分析
  13・3 基本的欲求に関連した情動
  13・4 心身障害と基本的情動の異和
  13・5 個別的情動の異和をともなう発作
14 心身性てんかんの現象論:一般的情動の顕在化
  14・1 一般的情動の型
  14・2 発作時にあらわれる一般的情動
  14・3 超越感覚
  14・4 快・不快に分類できない情動
  14・5 発作にともなう複合症候
  14・6 結びと検討
15 心身性てんかんの現象論:定型的・情動的行動の顕在化
  15・1 心身性てんかんと無自覚行動
  15・2 単純な身体・内臓の反射運動
  15・3 単純な擬模倣反射
  15・4 単純そして複雑な擬情動反射
  15・5 無秩序な反射行動
  15・6 結びとコメント
16 自意識と記憶に結びついた辺縁系のはたらき
  16・1 進行性記憶喪失の歴史的考察
  16・2 臨床病理学的考察
  16・3 自意識の神経機構
  16・4 記憶の抗原・抗体モデル
17 情動に結びついた理性脳の進化とはたらき
  17・1 理性脳と前脳顆粒皮質
  17・2 前頭拡大と頭蓋骨の定向進化
  17・3 前脳障害の歴史的症例に対する臨床的考察
  17・4 ロボトミーから得られた知見と反省
18 理性・情動脳系の進化と知性の前駆活動
  18・1 知性の前駆活動としての泣き・笑い・アソビ
  18・2 泣き・笑いの脳神経機構
  18・3 利き腕と言語機能の偏在
  18・4 涙の進化論
  18・5 アソビの進化と創造行動
19 理性脳:小脳系と計算・予測機能の進化
  19・1 運動機能に関する仮説
  19・2 言語機能に対する機械的・数量的欲求
  19・3 計算と予測に果たす役割
  19・4 未来の記憶
  19・5 人間にとっての脳の意味
20 エピステミクスとエピステモロジーの将来
  20・1 R-複合体(反射脳)の比較行動学的再考察
  20・2 大脳辺縁系(情動脳)とエピステミクス
  20・3 認識論の袋小路からの脱出

第II部 三つの脳と現代 法橋登

1 品格と三つの脳
2 恋愛と三つの脳
  2・1 恋愛の三点セット
  2・2 反射脳による求愛行動の定型化と擬行動
  2・3 反射脳に萌した恋愛の母性愛的要素
  2・4 反射脳の異縁性(よそもの)認識から求愛へ
  2・5 社会行動としての求愛
  2・6 理性脳による恋愛の進化と断片化
3 三つの脳と三つの言葉:シンボル、サイン、シグナル
4 宿命、自由意志、確信、五蘊説
5 ハミルトンの包括適応度とマクリーンのエピステミクス
6 自由意志の進化論と心の物理学
  6・1 はじめに
  6・2 自由意志の進化
  6・3 自意識の臨床医学
  6・4 心の物理学
7 三つの脳と現代
  7・1 情報科学時代の新しい天才たち
  7・2 人工世界と現実世界
  7・3 宇宙と神
  7・4 無からの創生ということ
  7・5 分子生物学の夢
  7・6 脳の高次機能と超越体験
  7・7 息念の法


■著者紹介: ポール・D・マクリーン Paul D. MacLean

神経生理学者、臨床精神科医。「大脳辺縁系」の命名者。1913年、ニューヨーク生まれ。エール大学、ワシントン大学、ハーバード大学等を経て、57年に米国国立精神衛生研究所に入所。同所神経生理学研究所所長、同所脳進化と行動研究所所長を歴任。米国神経病理学協会特別賞、米国哲学会カール・スペンサー賞等を受賞。2007年逝去。






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