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5月の新刊『哺乳類の卵』


『哺乳類の卵』大

5月の新刊は、『哺乳類の卵——発生学の父、フォン・ベーアの生涯』
哺乳類の卵の発見し、近代発生学の父と言われるフォン・ベーア。「哺乳類の卵!?」と、感じる人も少なくないと思いますが、人工授精などで日常的に取り扱われている「卵子」のことです。こうした生殖医療やiPS細胞などの再生医療は、発生学の長い歴史の賜物です。

この近代発生学の始祖と言ってよい人物、カール・エルンスト・フォン・ベーア(Karl Ernst von Baer , 1792-1876)は19世紀の偉大な学者であり、ダーウィンは『種の起源』で尊敬をこめて言及しているほど。現代においてもっと注目されるべき科学者の一人ですが、なぜか日本ではほとんど紹介されてきませんでした。そこで、脳の発生を研究してきた著者、石川裕二さんが本邦初の評伝を記しました。

ベーアの『伝記』をもとに、その人となり、人々や社会との関わり、そして発生学上の功績を平易にまとめています。最終章の「第17章 現代に続くベーアの仕事」では、発生学、遺伝学、分子生物学、iPS細胞などの再生医療など現代に続くベーアの研究について記述しており、目が開かれます。

発売は5月中旬予定。四六判上製、176頁、本体2000円+税。どうぞお楽しみに。



■目次

はじめに
第1章 デリンガー教授との出会い
第2章 ロシア生まれのドイツ人
第3章 子供時代
第4章 高等学校時代
第5章 ドルパト大学時代
第6章 大学卒業と遍歴修業の旅
第7章 デリンガー教授をめぐって
第8章 ヴュルツブルク大学―パンダーと発生の研究
第9章 ベルリン大学と帰郷
第10章 ケーニヒスベルク大学―はじめの数年間
第11章 発生の研究
第12章 哺乳類の卵の発見
第13章 ブルダッハとの不和と主著の出版
第14章 ケーニヒスベルク大学―ドイツを去るまでの数年間
第15章 ペテルブルク科学アカデミー―ロシアでのベーア
第16章 晩年および進化論について
第17章 現代に続くベーアの仕事
 1 生き続ける彼の研究
 2 発生学、遺伝学、そして分子生物学
 3 現代的な発生生物学
 4 生殖工学技術の発展
 5 生殖医療の発展と問題点

索引
おわりに



■石川裕二(いしかわ・ゆうじ)

東北大学大学院理学研究科修了。琉球大学助教授(医学部解剖学)、科学技術庁放射線医学総合研究所主任研究官、定年退職後に上智大学理工学部非常勤講師。専門は神経発生学、神経解剖学、解剖学、放射線生物学。著書に『メダカで探る脳の発生学』(恒星社厚生閣、2018)、訳書に『ブレイン・アーキテクチャ』(東京大学出版会、2010年)。




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