11月の新刊
福井栄一『十二支妖異譚』
仏魔一如(ぶつまいちにょ)が人間だけに当てはまると考えるのは、早計である。
子、丑、寅……と小児にさえ親しまれている十二支の生きものたちも、いつも無垢で愛らしいとは限らない。たまさかに、妖しく不気味な貌を見せる。本書ではその刹那を鮮やかに切り取った話ばかりを集めた。怖いことは、往々にして愉しい。(はじめにより)
11月の新刊は、福井栄一著『十二支妖異譚—神様になれなかった動物たち』。十二支の生きものたちをめぐるちょっと怖い話を、記紀神話、説話文学、読本、歌舞伎など古典から選りすぐり、平易な現代語に訳したショートショート、全159話。
著者の福井栄一さんは、関西を中心にテレビ出演もされる上方文化評論家で、『名作古典にでてくる どうぶつの不思議なむかしばなし』など「名作古典にでてくる いきものの不思議なむかしばなし」シリーズ(汐文社)、『かわいいだけがウサギじゃない』などの「福井栄一の十二支シリーズ」(技報堂出版)など、古典を平易に現代語訳した著書を多数出版されています。本書は大人向けの妖怪話を集めました。
なお、カバー絵は、歌川芳虎「家内安全ヲ守十二支之図」(太田記念美術館所蔵)。原画の賛には、「「う(卯)きたつ(辰)や 虎(寅)にをき稲(亥子) とり(酉)込み(巳)て もう(丑)うま(午)いぬ(戌)る ひつじ(未)さる(申)ころ」。 新型コロナウイルス感染拡大の不安が募るばかりだった今年3月、家内安全を守る「十二支が合体した浮世絵」としてSNSで話題になりました。
B6判変型/上製、300頁、挿絵多数。本体1800円+税。11月下旬発売予定。
■目次より
はじめに鼠、指を噛む/大国主命と鼠/呑んだものは何か/空飛ぶ鼠 など
牛へ化する女/霊牛のこと/鬼同丸の待ち伏せ/母牛の怨み など
雪山に消えた息子/荒野で虎に遭う/虎の前世/虎魄(こはく)のこと など
生皮を剥がれた兎/兎の発心/兎は神/波に兎/月と兎 など
梵鐘を愛する龍/登龍のこと/龍王の油断/挨拶に来た龍 など
蛇の執念/笛の音を聴く大蛇/熊と争った大蛇/殺しても殺しても など
幻術使いと馬/物を言う馬/馬上で歌うな/怪死者二名 など
羊の舌を抜いた男/殺した羊の正体/羊乳と地生羊 など
鞠の精の正体/猿になった子ども/猿の剣術/猿の舞 など
頭に生えてきたもの/一本足の鶏/闘鶏の真意/鶏を忌む里 など
天の怪異と犬/六本足の犬/犬に見え、人に見えぬもの/犬の変化 など
源為朝と大猪/青い怪光の正体/霊猪現る/動く墓 など
おわりに