6月の新刊1 ケストラー
『ホロン革命 新装版』
6月には新刊が2冊でます。その第1弾が、アーサー・ケストラー著『ホロン革命—部分と全体のダイナミクス』。
「それだけでは自律的存在とは言えない断片的で不完全なもの」を暗示する「部分」と「それ自体完全でそれ以上説明を要さないもの」とされる「全体」。
生物、社会、あるいは宇宙全体において、絶対的な「部分」や「全体」はまったく存在しない。
有機体は部分と全体の両面をもつ「ホロン」からなる多層システムなのである。「ホロン」の創造性の鍵は、「部分」としての自己規制と「全体」としての自律性のダイナミクスにある。
「部分」と「全体」、「全体主義」と「還元主義」の矛盾を超える画期的コンセプト「ホロン」を提示した書。 1983年に刊行した話題作です。フリッチョフ・カプラの『タオ自然学』(1979年刊)、ライアル・ワトソンの『生命潮流』(1981年刊)と並ぶ工作舎ニューサイエンス3本柱として13刷を重ねながらも、ここ数年は品切れに。
翻訳者の田中三彦さんに新たな「あとがき」9頁を書き下ろしていただき、新装復刊となりました。その新たな「訳者あとがき」は、旧版『ホロン革命』の出版と相前後してケストラーがみずから命を絶ったことについて。必読です。
四六判上製、416頁。テキストを起こし直し、レイアウトを組み直したため旧版より減りました。お値段は据え置きの本体2800円。6月上旬刊行予定。
*本書は工作舎50周年記念出版(記念プレゼントはこちらをご覧ください)。■目次より
プロローグ◎新しい暦
1 ポスト・ヒロシマの課題2 借りものの時間のなかの虚構
3 ホモ・サピエンスの四つの症状
4 ワニとウマとヒトが同居する人間の脳の矛盾
5 人間の悲劇を生む過剰な献身
6 もっとも恐るべき兵器「言語」
7 死の発見と死の拒絶
8 人間の創造性と病は動物に還元できない
第一部 システムとは何か
第1章◎ホロンがつくる開かれたシステム
1 還元主義は疲れた旅人を救わない2 還元主義とホーリズム(全包括論)を超える第三の方法
3 〈ホロン〉が層をなす有機体のヒエラルキー
4 一般システム論の登場
5 部分と全体の二面の顔をもつホロン
6 ホロンが構成するホラーキー構造
7 ホロンはあらゆるシステムに適用できる
8 固定された規則と柔軟な戦略
9 個体発生のゲームの規則と戦略
10 進化の規則と戦略
11 意識と心の謎を解く規則と戦略
12 ヒエラルキー・システムの相補性原理〈樹枝化〉と〈網状化〉
13 経験によって強化されるアブストラクト的記憶の貯蔵法
14 情動を反映するスポットライト型記憶
15 自意識過剰なムカデの苦境
16 存在のホラーキーは両端が開いている
第2章◎エロスとタナトスを超えて
1 ホロンの統合傾向と自己主張傾向2 人間ホロンの情動の二面性
3 物質界をつらぬく二面性
4 自己主張傾向の保守性と統合傾向の未来指向性
5 フロイトのエロスとタナトス説の限界
6 ルイス・トマスの共生進化説
第3章◎イマジネーションと情動の三次元
1 情動をいろどる三変数2 純粋な情動を切りとることはできない
3 同情と共感の情動プロセス
第4章◎善意にみちた集団精神の恐怖
1 〈真の宗教〉の破壊性2 利他主義が集団のエゴイズムを生む〈悪魔の弁証法〉
3 真理追究のためのおぞましい実験
4 人間はたまたま属した集団のために戦争する
5 社会的ホロンとしての人間
6 集団は情動を喚起し知性を単純にする
7 古い脳と新しい脳
第5章◎絶望の彼方に
1 救済は生物学研究所から2 「大衆ニルヴァーナ」という幻想
3 問題は理性と和解しない情動にある
4 人間の本質を操作する可能性
5 ホモ・マニアカスからホモ・サピエンスへ
第二部 創造的精神
第6章◎ユーモアとウィット
1 創造性の深奥に通じる裏口2 ぜいたくな反射作用、笑い
3 ユーモアの論理構造
4 情動のダイナミクス
5 思考に見捨てられた情動の解放
6 ジョークや風刺のゲームの規則
7 人間をとりまくさまざまな笑い
8 ユーモアを左右する三つの基準
9 科学・芸術・ユーモアをつなぐスペクトル
第7章◎科学における発見術
1 科学的創造性の本質2 道化師と芸術家のはざまで
第8章◎芸術と科学の創造性
1 笑いと泣きの対照2 神秘体験につながるAh…反応
3 創造の源はひとつしかない
4 悲劇作家、コメディアン、医者の創造活動
5 悲劇と日常性のバイソシエーション
6 無意識は創造性を手引きする
7 創造的ジャンプのための撤退
8 科学と芸術の相補性
9 科学と芸術の進化サイクル
第三部 創造的進化
第9章◎崩れゆく砦
1 ネオ・ダーウィニズムの矛盾2 自然淘汰と適者生存の堂々めぐり
3 だれが進化のルーレットに賭けるか?
4 行動の進化の謎
5 ダーウィンのためらいとメンデルの夜明け
6 サミュエル・バトラーの嘆き
7 遺伝子の原子論のあやまち
8 遺伝子のミスプリントを修正するもの
第10章◎ラマルク再訪
1 遺伝学的原子論の滅亡2 獲得形質の遺伝をめぐる攻防
3 覆されたセントラル・ドグマ
4 ラマルキズムの意味するもの
5 獲得形質を保護する要因
第11章◎進化における戦略と目的
1 生命界の相同現象2 有袋類と有胎盤類の驚くべき相似
3 ゲーテの原型論の系譜
4 進化の目的を設定するのはだれか?
5 進化を推進する生命の独創力
6 サルの胎児とヒトはなぜ似ているのか?
7 科学や芸術における幼形進化
8 ヒトデからヒトにいたる再生能力
9 エントロピーとシントロピー
第四部 新しい地平
第12章◎自由意志とヒエラルキー
1 人間をロボットに変える習慣のワナ2 精神的人間と機械的人間の相補性
3 「自分」と自分の果てしない鬼ごっこ
4 自由意志と責任感
第13章◎物質と精神の対話
1 ESPは非科学的か2 現代物理学が描く物質のイメージ
3 量子論のパラドックス
4 確率的世界像
5 創造的アナーキーの時代
6 ブラック・ホールと超空間
7 精神化する物理学と現実化する超心理学
8 テレパシーよりも神秘的なユングの同時性(シンクロニシティ)
9 カンメラーの連続性の生物学とパウリの非因果的な物理学
10 因果性を超える宇宙観
11 無秩序から秩序への流れ
12 ESPのフィルター装置
第14章◎宇宙的作用につつまれて
1 人間の脳にひそむ潜在能力2 崩れゆく合理主義者の幻想
3 地球愛国主義を超えて
4 高次のリアリティからの信号
訳者あとがき
参考文献
著者・訳者紹介