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花の知恵
[詳細]

目次著者紹介関連図書書評



花には、人間の忍耐強さ、粘り強さ、自尊心があるらしい。
人間と同様の微妙に異なる多様な知性をもち、
人間とほとんど同じ希望と理想をもつらしい。
花は、人間と同様、最後にようやく助けの手を差し伸べてくれる
超然たる大きな力に対して闘っているのである。

(「想像力」より)

ゼラニウム
巻頭口絵より:ゼラニウム



■目次

花の知恵

1 植物  2 運命  3 種子  4 果実  5 根  6 ダンス  7 浮遊
8 悲劇  9 炯眼  10 婚礼  11 花  12 発明  13 天才  14 機械
15 ラン  16 昆虫  17 受粉  18 改良  19 想像力  20 単純化
21 密腺  22 細工  23 適応  24 一般知性   25 自然  26 幸福
27 地球霊  28 洞窟  29 意志  30 精神

香り

図版出典一覧(図版・資料提供=荒俣宏)



■著者紹介:

モーリス・メーテルリンク  Maurice Maeterlinck 1862-1949

ベルギーのガン市に生まれる。イエズス会の名門校サント・バルブ校からガン大学に進学し、法律を学ぶ。弁護士を目指してパリに向かうが、リラダンはじめ文壇で活躍する詩人たちと出会い、文学の道へ。1889年、27歳の時に詩集『温室』を出版。以後、詩や戯曲をつぎつぎに発表。世界的に親しまれている戯曲『青い鳥』は1906年の作。1911年ノーベル文学賞を受賞。『蜜蜂の生活』(1901)、『白蟻の生活』(1926)、『蟻の生活』(1930)の昆虫三部作や本書など、博物神秘学者としても名作を残す。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 蜜蜂の生活 巣の精神に生きる M・メーテルリンク 2200円
  • 白蟻の生活 人間の予言的社会 M・メーテルリンク 1800円
  • 蟻の生活 聖なる生命宇宙 M・メーテルリンク 1900円
  • 植物の神秘生活 緑の賢者たちの新しい博物誌 トムプキンズ+バード 3800円
  • 恋する植物 花の進化と愛情生活 J=M・ペルト 2500円
  • 植物たちの秘密の言葉 ふれあいの生命誌 J=M・ペルト 2200円 
  • 地球の庭を耕すと 植物と話す12か月 J・ノルマン 1900円 
  • ダーウィンの花園 植物研究と自然淘汰説 M・アレン 4500円 



  • ■書評

    福原義春氏『本よむ幸せ』(2013年3月刊/『花椿』2006年12月号 柳京名義書評を再録)
    『花の知恵』は、メーテルリンクの自然観察の書だが、この一冊の中には哲学者であり、美学者であり、自然観察者であり、若い頃には法律を学んでいた作者の全てが盛り込まれていて、原書の初版刊行(1907)から百年以上経った今日でも一層新鮮に感じられる。
    …植物と花の知恵の、人智を超えた不思議さに驚いたことを次々と記述する。例えばタヌキモは一生の内に水面に浮かんだり水底に沈んだりする。それを彼らはどうやって実現しているのか。バルブ、弁の機能、アルキメデスの原理などのように、人間が発見したと思っていることは、すでに遥か昔から存在していた植物に仕組みに組み込まれているのだ。
    …メーテルリンクのような自然への崇敬の念があれば、人間は今のような自然破壊への道は辿っていかなかっただろうに。このゆたかな心がチルチルとミチルのストーリーを作り上げているのだ。

    福原義春氏(「私の読書」『毎日新聞』2001年5月21日夕刊)
    「たくさんの人たちは、子供のころファーブル昆虫記の世界に魅了された記憶をもっているだろう。それなのにメーテルリンクの描写したハチやアリたち、そして花や植物の精密な観察についてはあまり知られていない。 
     このすばらしい本も1907年に発行されたのに、邦訳で紹介されたのは何と1992年のことであった。(高尾歩訳、工作舎)
     なぜなのだろうか。メーテルリンクはこの本の出版の翌年「青い鳥」をモスクワ芸術座で初演した。チルチル・ミチルが犬のチロ、猫のチレットたちと幸福の青い鳥を求めて遍歴し、青い鳥は遠いところにいるのではなく、身近にいるのだと知る物語はあまりに有名になり、ノーベル文学賞を受賞した。自然観察者としてのメーテルリンクは「青い鳥」のかげにかくされてしまったのかも知れない。
     かれは南仏の香料の町グラースの別荘やニースの邸の庭で一日中昆虫や植物を観察し、自然界にはあたかも知性があるかのようにびっくりするのである。……
     タヌキモは季節に応じて水面に浮上したり、水底に沈む。それは人間の発見したアルキメデスの原理やバルブと弁の機能をとっくに応用している。セキショウモの雄花は中心に閉じ込められた空気の泡を利用して花柄から自らを切り離して水面に浮き上がる。いろいろなランの花はそれこそ知恵の限りを尽くして昆虫をだまし、利用する仕掛けをつくり上げる。
     徹底的なフィールドワークを詩人の眼で描いた作品から自然の法則と人間の知性が快く響き合う。
     自然環境の中に人間が生きる思想は百年後のいま新鮮だ」

    遠藤周作氏(「万華鏡」『朝日新聞』1992年9月13日)
    「仕事の合間、草のなかにディレクター・チェアをおいて、花や樹について細かい観察と詩的な洞察を示したこの本を舌なめずりをしながら毎日頁をめくった。そして私はその本のお蔭で、樹々や花のなかにある眼にはみえぬが、確かに存在する生命の秩序を感じた。花を通し、樹を通し、蛾の羽の洒落た模様を通し、カケスの巣の形を通し我々に語りかけてくる何か深い秩序。この本のランテリジャンスという言葉を訳者が知性という人間の傲慢な用語ではなく、知恵という宇宙の声と結びつけた訳語にしたのが私には嬉しかった。
    「植物にとって最も重い掟といえば明らかだ。それは植物が終生の不動を宣告されているということだ」
     当然といえば当然だが、こんな言葉ひとつだって森のなかでそれを読んだ私には、体を何か大きな力が突きぬけたぐらい新鮮だった」




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