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感じる・楽しむ・創りだす 感性情報学[詳細]

目次監修者紹介 まえがきより関連図書書評




感性の妙に迫る、ヒトに優しい技術

人の指さしはいいかげん? 会話にも長調・短調がある?
眼は動くモノを3つも4つも同時に追えない?
顔は似せれば似せるほど違和感がめだつ? 視線やうなずきも会話のうち?
察しのよいロボットとは? デジタル情報空間の記憶のキイは?
仮想実験室の可能性はどこまでひろがる? 読書スピードはどこまで速められるか?
人の意図や行動を見きわめるには? 「わざ」や「こつ」を伝えられるか?
演奏会の「ゾクゾク感」の謎は?




■目次より

まえがき 心と心のコミュニケーションにむけて  原島 博(東京大学大学院情報学環教授)

第1部 身体化される知と心

1-1 身体化による認知メカニズム  乾 敏郎(京都大学大学院情報学研究科教授)
手と物のダイナミックなインタラクション過程の特性から身体化による認知メカニズムに迫る。

   [コラム#01] 「手のばし」と「手づかみ」のダイナミズム  林 武文

1-2 メンタルモデルの生成と活用  波多野誼余夫(放送大学教授)
他者のメンタルモデルに応じて会話や演奏をしている暗黙のシステムの解明。

1-3 イントネーションにひそむ本音  ノーマン D.クック(関西大学大学院知識情報学教授): 音楽理論に基づく新手法があかす発話のイントネーションにこめられた感性情報。

1-4 世界はなぜそこにあるように見えるのか  齋木 潤(京都大学大学院情報学研究科助教授): 動きながら変化するモノの視覚認知の不確かさを追求する。

第2部 共感・協調するパートナー

2-1 キャラクタエージェント百花繚乱  石塚 満(東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻教授):多彩な顔の表情をもち、柔軟な対話のできるキャラクターエージェントはいかにつくられるか。

2-2 表情豊かな顔をつくりだす  森島繁生(早稲田大学理工学部応用物理学科教授)
リアリティのある表情豊かな顔と感性あふれる音声をもつエージェントづくりの全容。

   [コラム#02] 似顔絵エージェント  金子正秀

2-3 共感するヒューマノイドロボット 
 2-3-1 いつか心が伝えあえる日まで  橋本周司
(早稲田大学理工学部応用物理学科教授/早稲田大学ヒューマノイド研究所所長)
 2-3-2 場の雰囲気や相手の気持を察するロボットをつくる  小林哲則(早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科教授)

2-4 仮想空間に遊ぶ「もうひとりの私」  苗村 健(東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻助教授):共有空間、遠隔空間の中を自由に移動できる「もうひとりの私」=ビデオアバタ技術の最前線。

第3部 ひらめきを促す直観的インターフェース

3-1 直観的アクセス空間を構築する
 3-1-1 メディア空間の構築法と直観的アクセス法  田中 譲
(北海道大学大学院情報科学研究科教授/北海道大学知識メディアラボラトリー長)

   [コラム#03] ウェブに公開されているサービスをキャラクタのガイドで気軽に活用する  伊藤公人

 3-1-2 直観的アクセス空間のビジュアルデザイン  須永剛司(多摩美術大学教授)

3-2 データサイエンスにおけるメンタルモデルの活用  田中 譲
科学者・技術者のメンタルモデルと直観的感性に整合する表現・操作システムの開発。

3-3 曖昧模糊にはじまるアクセス  堀 浩一(東京大学先端科学技術研究センター教授)
漠然としたアクセス要求をアクセス過程のなかでしだいに明確化する空間表示法。

3-4 メディア空間の演出法と物語データベース 原口 誠(北海道大学 大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻教授):「元型の存在」と「自在な抄録圧縮」のできる物語の威力とメディア空間における活用法。

   [コラム#04] 似ている文書を探しだす 山本章博

3-5 速読支援メディアの彼方へ  川嶋稔夫(公立はこだて未来大学システム情報科学部教授): 人間の潜在的情報受容能力をあかし、速読支援など情報受容能力を飛躍的に高めるインターフェースの展望。

第4部 感性交歓の場をつくりだす

4-1 高精細画像技術から感性創発システムへ

 4-1-1 インタラクションにより感性創発の場をつくりだす  谷内田正彦(大阪大学基礎工学研究科教授)

   [コラム#05] 散歩ができる空間づくり  長原 一 

 4-1-2 人の意図や行動を見きわめる  岩井儀雄(大阪大学基礎工学研究科助教授)

   [コラム#06] 気づきのスキルを初心者に伝達する 山口智浩 

4-2 初心者でも楽しめる演奏システム  才脇直樹(奈良女子大学生活環境部助教授)
あらかじめ用意された音楽のパート構成を変化させ、表情づけながら演奏できるシステム。

4-3 竹管の宇宙に遊ぶ  片寄晴弘 (関西学院大学教授)
音楽の演奏者の生理指標計測センサの構築とそれを応用したインタラクティブメディアアートの創出。

    [コラム#07] 意匠曲線の「味わい」の違いをきわめる  金谷一朗 

4-4 日用品をつかむように情報をつかむ  木村朝子(立命館大学情報理工学部メディア情報学科助教授):日用品の形状と動作を模した装置により、情報をつかんだり吸い込んだりできるデバイスの開発。

座談会 感性情報学から人間学へ
乾 敏郎 石塚 満 田中 譲 谷内田正彦  原島 博 井口征士 三宅なほみ

あとがき さまざまなインタラクションの契機に  井口征士(広島国際大学人間環境学部 感性情報学科教授)


本書の元になった日本学術振興会・未来開拓学術研究推進事業「感性的インタフェース」については >>>



■監修者紹介
:原島 博 (はらしま・ひろし)

1945年9月12日生まれ、1973年東京大学大学院博士課程修了。ヒューマンコミュニケーション工学、つまり「人間と人間の間のコミュニケーションを技術の立場からサポートする」ことに関心をもち、その立場から、「空間共有コミュニケーション」や「感性コミュニケーション」の研究を行っている。また、1995年に「日本顔学会」を発起人代表として設立、「顔学」の構築と体系化に尽力している。主要著書に、『情報と符号の理論』(岩波講座情報科学4)、『画像情報圧縮』(オーム社)、『人の顔を変えたのは何か』(Kawade夢新書)、『顔学への招待』(岩波科学ライブラリー)などがある。

:井口征士 (いのくち・せいじ)

1940年、広島県福山市生まれ。1964年大阪大学大学院修士課程修了。1985年大阪大学基礎工学部制御工学科教授。1997年より同大学院基礎工学研究システム人間系専攻教授。2003年より広島国際大学人間環境学部感性情報学科教授。(財)イメージ情報科学研究所関西研究センター所長兼任。編著者に『感性情報処理』(オーム社)、『三次元画像計測』(昭晃堂)など。パリ留学時代(1966)、バロック音楽練習用の伴奏レコード(MMO)を見つけて、ブロックフレーテ(縦笛)で合奏を楽しもうとしたものの、速い曲にはついてゆけず、いつか速さを自由に設定できる伴奏システムを作りたいと思ったことが、感性研究の原点となる。




■まえがきより

心と心のコミュニケーションに向けて    原島 博

画像処理技術や音声処理技術の進展で、仮想(バーチャルリアリティ)空間の精度はあがり、「マルチモーダル(さまざまな感覚系)」を合い言葉にさまざまな商品も開発されています。しかし、あまりにも多くの刺激を外部から与えすぎると、想像力のはたらく余地もなくなりそうだと心配になります。できれば外部からの刺激をきっかけに、皆それぞれ心に抱いているものがふくらんで、お互いに通じ合いたい。そこで生まれた感動は外からの刺激がなくなっても永続して、心と心がつながっているという意識として残る……そんな理想にむけて感性を捉えてみようと試みました。




■関連図書(表示価格は税別)

  • ヒューマン・インフォマティクス  長尾 眞=監修  2800円
  • 恋う・癒す・究める 脳科学と芸術  小泉英明=編  3800円
  • 身体化された心  フランシスコ・ヴァレラ  2800円
  • 色彩論  ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ  25000円



  • ■書評

    『映像情報メディア学誌』(2004.10月号)
    ……感性とは本来、主観的であり、直感的反応や心の創造活動を含むため、論理的な取り扱いが難しく、従来の情報科学の範囲を超える部分があるかもしれない。そのような新しい技術分野を開拓する課題に取組む各研究者の姿勢や情熱を感じ取ることができる人間味あふれる書籍となっている。

    2004.8.25/9.8合併号 SAPIO
    「モノづくりや技術に求められる哲学とは何かを考える」本として推奨

    今やコンピュータに代表されるテクノロジーは人間の感性に深くコミットしている。刺激し合いつつ進化、発展する。模倣、再現が起こす精緻な情報システム、豊かな表情と対話力を備えた電子メディア。さらに本書では、仮想実験室がもたらす可能性など先端技術者の最新の知見を具体的に紹介しており、感性(心)と技術の交錯による現実と理想が予見できる。

    2004年8月号 WEDGE
    ピュータ。20世紀は知的情報処理がその課題であったが、21世紀に重視されるのが「感性情報」だ。察しの良いロボット、遊びながら学べる教育システム……。感性情報学の先端研究を探る一冊。

    2004年7月12日号 日経コンピュータ
    ……山盛りの図版を駆使し、堅苦しくなりがちなテーマを分かりやすくまとめている。空間認識やコミュニケーションといったテーマを扱う中で、研究者たちは人間の心理の奥底に踏み込んでいく。議論は、人間らしい対話を実現するためのハード、ソフトの実装へと続く。例えば「2次会に行かない?」という誘いに「明日追試なんだけど」と答えた学生は、断っているのか、参加してもいいとほのめかしているのか……。あいまいな会話をコンピュータが認識するには、話者が生まじめな勉強好きか、怠け者かの背景情報が必要になるという。
    人間の能力の奥深さを改めて認識する一方、現代のコンピュータがいかに未熟かを思い知らされる。

    2004年7月号 月刊ASCII
    ……私たちの認識のしくみを解き明かすことから始まり、そのしくみを応用した人間とコンピュータとのインターフェイスを紹介する。圧巻なのは、ディスプレイから情報を吸い取る注射器型のデバイス(スピーカの前で注射器を押し出すと楽曲も流せる!)、情報をふき取るスポンジ型デバイスだ!
    トンデモ話だと思うアナタは、既存のPCの固定概念に捕らわれすぎだろう。もっと自由な、もっと自然なインターフェイスが実現するほうが、むしろ自然なことではないだろうか?






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