ケプラーの憂鬱 [詳細]
Kepler
孤独な天文学者の半生
81年度ガーディアン小説賞受賞作品
「初めに形ありき!」
宇宙における調和は幾何学に基礎があると信じ、
天球に数学的な図形を探し求めたヨハネス・ケプラー。
本書は、天文学に捧げた彼の半生を追いながら、
科学的真理は幻想から生まれることを描いた
ヒストリオグラフィック〈歴史記述的〉・メタフィクションである。
■関連情報 |
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◎バンヴィル氏、2005年ブッカー賞受賞
ジョン・バンヴィル(バンビル)氏が、幼少時代の記憶についてつづった小説「ザ・シー」で、英文学界最高の名誉とされるブッカー賞を受賞した。 1969年に創設された同賞は英国、アイルランドと英連邦加盟国の作家の作品の中で、その年もっとも優れた小説に与えられる。(2005.10.10発表)
◎舞台化:青年劇場『ケプラー あこがれの星海航路』
本書を元に『ケプラー あこがれの星海航路』(篠原久美子作/1999年文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作受賞)として舞台化されている。青年劇場が、2002年2月初演以来、演劇鑑賞教室や、子ども・おやこ劇場例会、文化庁「本物の舞台芸術体験事業」など、2006年12月まで全国各地で上演。青年劇場サイトヘ>>>
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎2010.9.26 紀伊國屋・書評空間 加藤弘一氏(文芸評論家)
現代アイルランドの作家、ジョン・バンヴィルによるケプラーの伝記小説である。バンヴィルは本作の前後に『コペルニクス博士』(白水社、絶版)と『ニュートン書簡』(未訳)という科学者の生涯に取材した小説を書いていて「科学革命三部作」と称している。
バンヴィルは実験的なポストモダン作家として知られており、解説によると本作にもいろいろな仕掛けがあるということだが、仕掛けに関係なく(仕掛けにもかかわらず)、おもしろい小説である。紀伊國屋・書評空間サイト全文
◎1991.12.23 京都新聞
……夢想に導かれるようにしてあらわになる惑星公転の三法則。夢から書き起こされ夢で閉じられる円環的構造のうちに、『宇宙の神秘』から『夢』に至るケプラーの主著のタイトルを掲げた五つの章が、時間を交錯させつつ緊密に仕組まれてゆく。
宗教紛争や魔女裁判といった時代の波にほんろうされる人間ケプラーの苦悩を写しとめる筆力もさることながら、注意して読むと、著者の尋常ではない「形式」への執着ぶりに何より驚かされる。「初めに形ありき」。そう、そこにはいうまでもなく形=数学的調和によって宇宙の神秘を解き明かそうとした、ケプラー自身の精神が濃厚に透けて見えるのだ。
語られる形式が、語られる内容と目配せを交わし合う奇妙な世界。本書が通常の小説を超えてざん新であるゆえんは、ケプラーの幾何学的精神を小説の構造それ自体に反映させた、スリリングな語り騙 (かた)りと歴史のせめぎ合いにある。
本書は本邦初登場のアイルランド作家。知的刺激に満ちたその作風によって、現代英国ポストモダン作家の一翼を担う実力派である。本書を機に、他作品の紹介が望まれる掛け値なしの逸材であろう
◎ウォルター・アレン「アイリッシュ・プレス」
掛け値なしにすばらしい。実に稀なる小説だ。
◎「ガーディアン」
交響曲的レベルの語りの芸術。
◎ジャニス・エリオット「サンデイ・テレグラフ」
驚嘆すべき作家の登場。
◎ポール・テイラー「タイムズ・リテラリー・サプリメント」
バンヴィルはケプラーのそれぞれの発見に崇高さと詩趣をみなぎらせることに成功している
◎バーナード・レヴィン「サンデイ・タイムズ」
感受性に富み、信念を貫き、時には悲嘆し、時には意気に燃える天文学者。
すばらしく人間味に溢れた人物造形だ。
◎スティーヴン・ヴォーン「オブザーバー」
なりふり かまわず宇宙の調和の秘密を追い求めたひとつの精神の肖像画。
人間、時代、そしてあくなき知識への探求を壮麗に描き出している。