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国境のない国から[詳細]

目次 著者紹介書評



アメリカ・ヨーロッパ・アジア

オリンパスを世界企業にしたサムライの真情!

……馴れない現地法人の創業と経営は泣き笑いの連続であったが、
できるだけ冷静にヨーロッパの社会事情や地域性、
人々の発想方法、行動様式を観察して、
いかに適合していくかを考えるようにした。……

……通算十二年間の外国駐在で日本を外から眺めてきた。
日本を知るには外から見ると良いとよくいわれるが、
私の見方にも多分に社会人類学的な視点から、
日本人論のようなものが含まれている……
(あとがきより)




■目次より

序文 米国式グローバリズムの危うさ

第一章 地球を歩けば─

上司はベレー帽の時代の人
東欧の血がかよう「知識の橋」 
ドイツ、国境の春  
ブダペストの民宿の温もり
世界史のはじまりモンゴル
プラハの秋のユダヤ人墓地
オリンパス・クロアチア訪問
ハンニバルとスキピオ 
ローマで塩野七生さんに会う
「血涌き肉踊る」戦闘場面 
フィレンツェ・オペラの醍醐味
北イタリアのヴァイオリン工房
懐かしのオードリー・ヘップバーン  
考古学者シュリーマンを語ろう 
ペルシア湾の土産話
神秘的なトルコの旋回舞踏(メヴラーナ)
欧州共同体の母、クーデンホーフ光子
ハプスブルグ家の水戸黄門
ナショナリズムと国境
ミニ国家、リヒテンシュタインの財宝 
ジャンヌ・ダルクと魔女裁判 
田園の息吹、バルビゾン
ミュージカルのとりこ 
心象のアイルランド 
アメリカ1ドル札の謎 
アーミッシュの生活文化 
さすらいのジプシー

第二章 近隣の朋友たち

日本に来た伝説の人、徐福
楊貴妃の茘枝(ライチ)を守る
台湾でいだく郷愁
春節を祝う香港
真紅の花を想う
中国の英雄、客家の人 

第三章 凛々しい日本を希う

大虐殺からユダヤ人を救った日本
野茂投手と小野田少尉と木村摂津守
何が彼らを堂々とさせたのか
アメリカを見てきたジョン万次郎
国境のない国、日本
彦島を渡さなかった高杉晋作
世界史の中の信長の軍事革命
蒙古来る 我は怖れず
アダムとイブの残したもの
お山の大将、月ひとつ  
お風呂の文化史
過剰な清潔は病気である
百年後の日本人の顔
痛快な知の巨人、南方熊楠

第四章 味わい深いエピソード

ハンブルグで「目玉焼き」を
コーヒーは永遠の課題
タバスコが欠かせない
クラウン・ラウンジでマティーニを 
緑のチョコレートではいかがなものか
日本海の鱈と大西洋のタラ
越後村上の塩引鮭は日本一 
日本人には牛乳より味噌汁がよい
ヘチマコロンという名の妙
ガラス越しの花火見物
シーラカンスのままに
恐竜絶滅の謎

第五章 きたるべき日本をめぐる対論  塩野七生さんと

日本型の経営システムがある
二一世紀は「質の時代」
望まれるリーダー像
アジアの中の“サムライ”日本へ



■著者紹介:下山敏郎 (しもやま・としろう)

1924年5月4日、新潟県生まれ。陸軍航空士官学校を卒業した昭和20年、近代中国東北部(旧満州)に赴き終戦を迎える。戦地に向かう多くの先輩や友人を見送った記憶は今も鮮明。
1949年、東京大学文学部を卒業してオリンパス光学工業株式会社(現・オリンパス株式会社)に入社。55年、ニューヨークに渡りJapan Camera Centerを設立。翌年にはオリンパスの米国駐在員事務所、代理店設置に従事する。63年には渡独し、ハンブルグにオリンパス・ヨーロッパ駐在員事務所を開設。64年から6年間、オリンパス・ヨーロッパ支店長を勤める。84年、社長に就任。93年には会長となり、引き続き最高顧問として会社の繁栄を見守る。現在、オリンパス(株)取締役、(財)マイクロマシンセンター理事長などを務め、海外出張もしばしば。




■書評

2004.6.28 公明新聞 上妻英夫氏(経済ジャーナリスト)
国際人として縦横無尽の日本人論を展開
国際化時代が叫ばれている割に、そう簡単にわが国では真の国際人は育たないものである。本書は、「国境を持ったことがない日本は国境の持つ意味、国境の重さが理解できないできている」と指摘し、豊富な国際経験を持つ著者が思う存分に綴ったビジネス・エッセーである。
日本を知るには外から見るほうがいいといわれるが、著者の発想の源には海外経験を踏まえた社会人類学的な視点からの日本人論が含まれているようだ。
世界企業に成長しているオリンパスの最高顧問で活躍し続けているビジネスマンであり、国際派の著者だからこそ気づく「これからの日本人の行方」を考えさせられる視点が随所に述べられている。
「アメリカ1ドル札の謎」では図柄に秘められた秘密結社との関連性、「さすらいのジプシー」についての考察、「楊貴妃のライチを守る」ではエピソードを面白く綴っている。
海外での話だけではない。「野茂投手と小野田少尉と木村摂津守」のところでは、三人を真の日本男児と評価し、それぞれの時代を代表する「国際人」と言い切っている。下山氏にとって、大ファンであり、愛読書「ローマ人の物語」の著者・塩野七生さんとの対談(日本経済新聞に掲載されたもの)も読み応えがある。
「いま日本人に求められているのは言葉で伝える才能です。自分が考えていることを他者にうまく伝わるように努力することで、黙っていてもわかってくれる、なんて思わないでほしい。大切なのは説明することだと思う」(塩野さん)
米国に5年、ヨーロッパに7年の海外駐在で日本を外から眺めた独特の視点。しかもその土地の社会機構に飛び込み、会社をつくり現地職員を採用し販売網をつくってきた豊富な経験からの生きたビジネス・エッセーである。学べる視点が縦横無尽に展開されている書である。

2004.7.26 日経ビジネス 著者に聞く
…私は55年、31歳の時に初めて渡米しました。…戦後間もない頃の米国や、民主化される前の東欧、勃興し始めたばかりのアジア諸国などでいろいろな人に出会い、その文化に刺激を受けてきました。これらの経験は、私の人生に大きな影響を及ぼしています。
…グローバル時代だからこそ、逆に日本人は民族意識を大切にすべきだと思います。企業経営にしても、米国式の手法にすべて合わせるのではなく、米国式と日本式の良い点を融合させて高めることが必要でしょう。

(株)日立製作所社長 庄山悦彦氏(以下は6月2日出版記念パーティーへの祝辞からの抜粋)
このたびはご出版、おめでとうございます。私にとりまして、下山さんは、ビジネスではもちろんのこと、高田高校の先輩でもあります。
この本『国境のない国から』は、12年の長きにわたる豊富な海外勤務を通じて得られた実体験に、ときに歴史観を、ときに絵画的な色彩を織りまぜ、大変に深みのあるものとなっております。一方で、日本固有の素晴らしさを顧みず、闇雲にグローバル化へと急ぐ日本人への警鐘でもあり、われわれにとって大変に示唆に富む内容となっています。下山さんの日本を愛するこころに深く感銘し、そして共感を覚えた次第です。
私事で恐縮ですが、今年、高田高校も創立130周年を迎えており、私自身、講演を依頼されております。私の演目は、「世界にはばたけ、日本の強さ」ですが、下山さんの思いを紹介し、後輩を大いに勇気付けたい、と思っております。

2004.6.4 日刊ゲンダイ
オリンパス前会長が、豊富な国際経験をもとに語るビジネス・エッセー。
競争優位の米国式グローバリゼーションの広がりが社会的崩壊の一因と指摘。人間がかかわる企業経営には文化的要素と文化的判断が介入するのは当然との視点から、日本を世界の中に位置付けていく。
1ドル紙幣の図柄に垣間見える米国建国の舞台裏で暗躍した秘密結社の存在をはじめ、日本人と西洋人の労働観の相違や各地で味わった食の思い出まで。縦横無尽の話題が楽しい好読み物。

2004.6.4 日経産業新聞
オリンパス前会長の筆者は1950年代半ばから米欧アジアに拠点を築き、同社を国際企業に育ててきた先駆者。国際ビジネスマンとしての長期間に及ぶ様々な経験や現地の人との交流をもとに、国境の概念が薄く民族間の壁に疎い日本人に世界の中の「日本」の姿を問いかける。
陸軍航空士官学校を卒業、旧満州で終戦を迎えた筆者は愛国主義的な側面を隠さない。十年間にわたって執筆した社内報のコラムや90年代半ばまでに新聞紙上に掲載された対談などを軸に構成しており、部分的に古さも否めない。それでもジャーナリズムのオブラートを通さず自分で見聞きした材料で語る日本論は、豊富なエピソードで飽きさせない。

2004.6.12 週刊現代
著者はオリンパスの前会長。国境のない国に住む日本人に向け、世界の価値観と日本の価値観のズレを指摘しながら、日本のよさや特性にも言及。最終章は作家、塩野七生との対談で構成され、「リーダーに必要なのはイマジネーション、それを言葉で伝える能力です」と、「沈黙は金」の日本的美意識を否定する。

2004.5.22 フジサンケイ ビジネスアイ
モータースポーツの最高峰F-1(フォーミュラワン)。そのトップチーム、フェラーリのスポンサーの一社として今シーズンから世界に「OLYMPUS」ブランドを訴求しているのが、光学・医療機器のトップメーカー、オリンパスだ。今でこそ同社は国際的な企業として広く認知されているが、言うまでもなく一朝一夕にグローバル企業へと発展したわけではない。どの企業にもいえることだが、海外市場という未開の領域を開拓した先駆者がいる。それが前会長(現取締役最高顧問)の著者だ。氏は1947年にオリンパスに入社後、50年代から60年代にかけて米国や欧州に現地事務所を相次いで開設、その後もアジアに拠点を整備するなど今日のグローバル企業の基盤を築いた。
現役生活55年。この間に、さまざまな国の慣習や現地人との考え方の違いに直面する。「国境を意識しない日本人。だが、ひとたび海外に出れば国境の重大さ、民族間の壁の厚さを痛感させられる」という。単なる回顧録ではない。グローバル時代を生き抜くビジネスマンへの熱いメッセージ集といえる。

2004.5.17 読売新聞 自著紹介
欧米での12年間にわたる駐在生活や海外出張を通じ、日本の姿を外から眺めてきた。国境を感じずにすむという地理的な特性から、日本人は国に対する意識が希薄になっている。日本の文化や歴史について勉強がもっと必要だ。
企業にしても、競争優位のアメリカ式グローバル経営が最も優れているるとする見方があるが、終身雇用など日本に根ざした経営哲学をもっと大事にして、両者の良いところを合わせるよう心がけるべきだ。






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