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狼憑きと魔女[詳細]
悪魔学の「幻の書」ついに復活

映画や劇画・文学を見渡してみてみれば明瞭だが、
「魔女」や「吸血鬼」にくらべて、「狼男」は今ひとつ冴えないし、イメージも鮮明ではない。
だが人間と動物との境界線を溶解し、われわれに根源的不安をつきつけるかれらは、
本書によって、たんに薄気味悪い怪物であることをやめて、
そのウルトラ-モダンな相貌を露わにした。
狼男とは、社会と心における追放と回帰の象徴的手段であり、
普段の炸裂の危険を体現しつつ、象徴的統合作用をもつかさどる神話的形象なのである。

池上俊一(本書序文より)


■目次より

序文 自然の人間のはざまに 池上俊一

『妖術師の狼憑き、変身、脱魂について』 ジャン・ド・ニノー
献辞

第1章 悪魔の作り出す幻覚と涜神
第2章 妖術師の膏薬、その薬草と効能の概略
第3章 第一の膏薬の成分と用法について
第4章 第二の膏薬の成分と用法について
第5章 第三の膏薬の成分と用法について
第6章 自然に起こる狼憑き
第7章 実在しない想像物を描き出す自然界の物質

  付 ボダン『悪魔崇拝』第6章への反駁
ジャン・ド・ニノーの略歴 マクシム・プレオー
    ニノーのジャック・ミゴンへの贈与証書
    本書の諸版について
ニノーとボダン:悪魔学者たちにとって「変身」とは ニコル・ジャック = シャカン
    序論
    悪魔の力、あるいは哲学的問題
    ボダンの例と異端の問題
    「幻覚」が信じられるための諸条件
    ニノーの記述の奇妙なかけひき
    アンチ・プロメテウスとしての狼男
引用、剽窃、黙秘:先行文献とニノーの戦略 ジャン・セアール
補遺Ⅰ クリシエの狼憑き マクシム・プレオー
補遺Ⅱ トルコを起源とするヘライン・リュックということばについて フレデリック・マックス
狼男とその目撃者:「狼憑き」なる事実はいかにして構築されたか ミシェル・ムルジェ
    狼憑き信仰の偏向性を脱する試みの所産
    狼憑き信仰のステレオタイプ
    仮面の強制:容疑者の発見
    本物の狼と自己告発
    記号による現存
狼男、あるいは人間と動物との教会 ソフィー・ウーダール
狼に関する物語 リーズ・アンドリー




■著者紹介:ジャン・ド・ニノー Jean de Nynauld  1588 頃-?

 フランス・トゥーレーヌのブルィイ= スュル = クレーズ(現在のアンドル = エ = ロアール県)に生まれる。貴族ピエール・ド・ニノーの次子。医学博士。敬虔なキリスト教徒。本書では著名な悪魔学者ボダンを反駁。
ほかに『精気について』『妖術師について』『霊魂について』があるとされる。


■関連書籍

バロックの聖女  聖性と魔性のゆらぎ 竹下節子 2400円
セイレムの魔術 17世紀ニューイングランドの魔女裁判 C・ハンセン3800円
ヴァンパイアと屍体 死と埋葬のフォークロア ポール・バーバー 3200円
犬人怪物の神話 西欧、インド、中国のドッグマン伝承 4800円
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眠りの魔術師メスマー 近代精神医療の先駆者 ジャン・チュイリエ 2900円
英国心霊主義の抬頭 19世紀末の魂の高揚 ジャネット・オッペンハイム 6500円
子どもの神秘生活 生と死、神・宇宙をめぐる証言 ロバート・コールズ 3800円
サイケデリック・ドラッグ 向精神物質の科学と文化 L・グリンスプーンほか 5000円



■書評

大滝啓裕氏(『図書新聞』1994年12月3日)
 「本書はきわめて斬新で、すこぶる贅沢な本だといわざるをえない。もっとも中核になっているのは、17世紀に出版されたジャン・ド・ニノーの『妖術師の狼憑き、変身、脱魂について』なので、お世辞にも新しいものとはいえないが、これをとりまく豊富な論考の構成に注目すべき妙味があるからだ。なるほど古いものも、こういう形で出版すれば、若い読者に訴えかける力をもつということを、本書は何よりも雄弁に物語っている。……
 ニノーの論文は、悪魔論反対論者の意見をなまの形で現代の読者に伝えるものとして、はなはだ興味深いものがある。そしてありがたいことに、本書に収録された種々の論考が多角的にニノーをとらえ、現代の読者がニノーにとりくむにあたり、その読解を深める助けとなるとともに、魔女裁判の時代における狼憑きの実体を鮮明に浮かびあがらせ、現代人のいだく狼男のイメージを修正してくれるのだから、狼憑きのみならず魔女に興味をいだく読者なら、必ずや得るものがあるだろう……」



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