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生物への周期律[詳細]
Biological Periodicity

目次著者紹介関連図書


コウモリの飛行

トンボ、トビウオ、コウモリを結ぶ 機能と形態の進化

生物の諸性質は、単一の様々な原子や結晶が命ある細胞のあらわれる前に獲得し、その形成に影響を与えた周期的秩序の反映である——本書「序」より

飛行、視覚、発光、水生への回帰、高等知能……
進化の途上に繰り返しあらわれる生物機能。
その周期性の出現は必ずしも、生物の系統学的な位置や複雑さ、
あるいはその一般的な環境と関係を持つわけではない。
ネオダーウィニズム批判の急先鋒が、
生体高分子の外殻電子が支配する物性に着眼。
生物の周期性出現のメカニズムを解き、
科学としての進化論の新たな可能性を拓く。

トンボの飛行



■目次より


謝辞

I 化学元素と無機物の諸性質の周期性

第1章 化学元素の周期性

  化学元素の秩序の理解には100年以上かかった
  諸性質の周期性
  化学元素の周期性の裏に潜むメカニズム
  化学的な周期性の図示
  多くの性質が周期性を示す
  例外は化学的な周期性のレベルですでに存在する

第2章 無機物の周期性

  無機物(鉱物)の周期性は化学的な階層性に基礎を持つ
  元素の周期性は鉱物の性質の周期性を決定した
  構造と機能の周期性──クラスの異なる無機物に出現する同一のパターンと原始機能

II 生物の機能の周期性

第3章 周期性飛行

  生物の周期性を図示するための準備
  昆虫の飛行はどこからともなく出現した
  飛行は生物進化において五つの時期に独立して出現した
  飛行は構造的で機能的なプロセスである
  飛行は羽以外にも多くの構造と機能を必要とする
  昆虫と鳥類の飛行の類似性
  コウモリと鳥の飛行の比較
  プテロサウルスと鳥の飛行の比較
  魚類の飛行は環境との直接的な関係から出現したのではない
  魚の飛行
  羽もひれも骨の有無にかかわらず形成される
  昆虫の翅も鳥の翼も同じ遺伝子からつくられることがわかった
  飛行の周期性の特徴

第4章 周期的視覚

  光感受性は細胞の構造自体に組み込まれている
  植物の葉は微細なレンズのモザイクである
  昆虫の複眼と葉の光感受性細胞との比較
  視覚の周期性の特徴
  原生動物から原始的な脊索動物に備わる眼の種類
  ヒトと頭足類の眼の比較
  昆虫の視覚は周期性を示す
  独立した眼の進化
  視覚と環境
  昆虫の眼とヒトの眼は、同じタイプの遺伝子の産物である
  視覚の周期性の一般的な特徴

第5章 周期的胎盤

  胎盤の定義
  顕花植物の胎盤
  無脊椎動物の胎盤
  魚類に存在する胎盤
  両生類と爬虫類の胎盤
  有袋類では、胎盤は存在しないか痕跡的である
  胎盤の周期性

第6章 周期的生物発光

  鉱物の発光
  生物発光に関わる化学的プロセス
  生物発光の出現
  生物発光の特徴
  生物発光の周期性

第7章 周期的陰茎

  陰茎の出現の周期性
  ヒトと無脊椎動物の陰茎の類似性
  水は骨やその他の支持組織と同じくらい有効に機能する
  陰茎の出現は一般的な環境や生物の複雑さと直接関連しない

第8章 水生への周期的回帰

  水は鉱物や高分子の構造を変化させる
  植物は流線型である
  新しい流体力学的な形態と機能の産出に遺伝的構成の変化は必要ない、ということを植物は明らかにする
  水中型から水上型へ、水上型から水中型へ、植物の変形
  水が葉の形状を決定するということの実験的例証
  無脊椎動物が水に回帰する際に生じた変形は、のちにもっと高等な哺乳類で生起したものに類似している
  両生類による陸の征服と水への回帰
  爬虫類が水生に転じた際に生じた構造と機能の変化
  鳥類の流体力学的な形態と機能は陸生の近縁種に由来する
  哺乳類はいくつかの目で幾度か水生へと回帰した
  有蹄動物の水生への回帰:クジラの場合
  食肉動物の水への回帰:アザラシの場合
  セイウチはゾウの祖先に由来している
  ブタとペッカリーがカバの近縁である
  水生への回帰の周期性

第9章 有胎盤類と有袋類の周期的等価性

  有胎盤類と有袋類は互いの「カーボンコピー」である
  サーベルタイガーとアリクイの出現にともなう構造と機能の一貫したパッケージ
  滑空種で反復した同一の構造と機能のパッケージ
  周期性はほとんどの性質に影響をおよぼす変化の結果である

第10章 周期的高等知能

  高等な知能の周期的な出現

III 物質とエネルギーに内在する秩序は、いかにして生物の周期性へと続く道を切り開いたか

第11章 生物進化に先行した三つの進化

  太陽系の構造の秩序
  原子と太陽系の構造の類似点と相違点
  素粒子の自律進化を支配する原理
  化学元素の進化
  化学元素の電子が、形成しうる鉱物の種類をコントロールした
  結晶の性質はそれを形成する原子の性質が決定する
  鉱物の進化の例
  鉱物の変形を導いてきた厳格な秩序
  鉱物の進化の原理
  生物進化に先行した三つの進化の類似点

IV  様々な組織レベルにおける「カーボンコピー」の生成

第12章 原子と分子と生物の擬態と周期性に対するその重要性

  原子は他の原子の性質を擬態する
  鉱物の分子擬態
  分子擬態の要因となる電子メカニズム
  鉱物中の原子プロセスは、最終的なパターンを変化させることなく化学的変異を可能にするとともに、基本的な分子構成を変化させることなくパターンの変異を可能にする
  ヨードホルムの結晶は氷の結晶の「カーボンコピー」である
  植物と動物の擬態が依存しているのは、類似したDNA配列に加え、タンパク質やその他の分子の鍵となる原子の電子構造である可能性がある

第13章 鉱物と遺伝子産物の共同

  鉱物を構成している金属やその他の元素は細胞の産物ではないし、遺伝暗号の一部でもない
  鉱物は多くの高分子が持つ触媒作用の鍵となる構成要素である──遺伝子は必ずしも基本的な機能を生み出さない:単に促進させるだけである
  カルシウム原子は鉱物のタイプを決定し、タンパク質は生物構造における結晶系を決める
  鉱物とタンパク質と糖類は、結晶化学的なメカニズムに従って結合し、軟体動物の貝殻を形成する
  鉱物と遺伝子の協調

第14章 素粒子と化学元素から受け継いだ細胞プロセス

  右旋型と左旋型を消し去ることはできなかった──それは素粒子からヒトにまで生じている
  あらゆる組織レベルにおける場の生成
  物質は量子場から構成される
  磁場の性質は他のレベルにある場の理解を容易にする
  結晶と鉱物の場
  分裂途中にある卵、動物胚、体器官の場
  分子勾配の存在により、核は分化の場で自身が占めている位置を見つけることができる
  植物の成長における勾配と場は可視化することができる
  染色体の場とその場に潜在する分子的な基礎
  様々なレベルで見つかった場に共通する特徴
  場は因果的に関連する:あるレベルの場は次のレベルの場を創発する
  鉱物、細胞、生物が発生する電気

第15章 細胞への鉱物の秩序の継承──鉱物から受け継いだ細胞プロセス

  細胞内の水はタンパク質とDNAの性質を支配する
  水に見つかった新しい性質は、細胞の機能を決定する要因として自身の重要性を高めている
  結晶の複製とDNAの複製との間の基本的な類似性:DNAは鉱物の方向を改良したにすぎない
  RNA分子の成長には他のレベルで再現する性質を見ることができる
  筋肉の結晶構造
  細胞分裂
  規則的なパターン変化をともなう成長
  全体的なパターンを維持した成長
  分岐をともなう成長
  双生の形成
  末端領域の再生
  植物と動物のキメラ
  動物と鉱物における雑種形成
  植物と鉱物における雑種
  優性は結晶レベルでも生物レベルでも生じる
  鉱物、植物、動物に共通する雑種形成の原子的原理

V 差異のある生殖と死の周期性に対する寄与

第16章 染色体の振る舞いは内的に統制されたプロセスである

  減数分裂における染色体の独立した分配は、方向の決まった事象である
  交叉は統制された分子プロセスである
  周期性における生殖の軽微な役割

第17章 細菌や高等生物の突然変異は方向性のあるプロセスである

  原核生物と真核生物の突然変異
  遺伝構成の違いと食物摂取との関連
  方向性のある突然変異の一形式としてのDNA修復
  特殊なタンパク質がDNAのパターンを強制的に維持する
  5SリボソームRNAの突然変異の方向はその塩基が決定する
  分子が示す自律的な進化
  遺伝的な変化の方向は細胞の内部構成により決定されている
  差異のある死が進化の周期的傾向に与える影響は少ない

VI 周期性の確立における発生の役割

第18章 発生と進化は同じ現象の二つの側面である

  進化と発生には同一の分子機構が用いられている
  いわゆる変態とは個体内部で生じる進化である
  腔腸動物の幼生と考えられていた動物が他の動物門の成体であることが判明する
  幼生は生殖しないが、成体とほぼ同程度に進化している
  幼生の進化は自身の経路を辿る
  昆虫とヒトの進化の源としての幼生と幼若の変形

第19章 ある発生時期が進化的事象なのか発生学的事象なのかを決定するのは生殖のはじまりである

  発生段階と進化段階との区別は容易でない
  脊椎動物の祖先は幼生段階を成体へと変化させた

第20章 同じタイプの幼生から異なる門が生じる

  同じタイプの幼生から異なる目、綱、門に属する全く異なる成体が発生する

第21章 同じ種に属する胚や成体でも、遠く離れた動物群に属する個体と同じくらい異なる

  自然発生説の受容はパスツールの実験よりも容易だった
  同じ種に属する幼生と成体は普通、構造的にも機能的にも全く異なっている

第22章 尾索動物と脊椎動物の幼生との類似性

  尾索動物と両生類の幼生は似ているし、両者とも劇的に変化する
  ヒトは生後、三つの段階を経る

第23章 植物の幼若段階と生殖のはじまり

  植物の単相期と複相期は、昆虫と同様に、構造的にも機能的にも異なる
  植物がいつ生殖をはじめるかは物理的要因や化学的要因が決定している
  甲殻類と昆虫類の変態のホルモンによるコントロール
  発生はいかにして、周期性の確立に関与しているのか

VII 環境と周期性の関係

第24章 環境とともに変化する生物の能力はすでに鉱物に存在している

  温度による性質の変化は原子構成によって調節される
  圧力と原子構成が形を決める
  塩濃度はすべてのレベルにおいて形を変化させる
  鉱物と生物の色の変化

第25章 遺伝的変化と環境

  環境からの分子シグナルが酵母の遺伝子発現を変化させる
  環境は植物アマのゲノムを永続的に変化させることができる
  生物には未経験の環境に対応できる内的なメカニズムが備わっている
  熱ショックタンパク質は体温調節よりも前にあらわれた
  環境と周期性

VIII 構造の周期性:原子、分子、生物に規則正しく付加された構成要素

第26章 原子と分子に対し規則正しく付加された構成要素

  構造と機能は同一の現象の二つの側面である
  水は、一定の形状と特定の変異をつくり出すのに遺伝子を必要としない
  水の結晶の形状における不変性と変異の特徴
  結晶化学は雪結晶の構成を充分に説明するほど発展していない
  炭素原子は二〇面球体をつくる
  ケイ素原子はその数が増加しても放射状の構成を維持する
  核酸は、その構成要素の数が増えても規則正しい構造を維持する

第27章 鉱物の規則正しい変形

  結晶の結合プロセス
  鉱物の双晶化メカニズム──エネルギーは秩序を決定する
  結晶の物理化学的な性質は、生物の変形に関するわれわれの理解に対して道を開いてくれる

第28章 植物の規則正しい変形

  鉱物と花の変形
  鉱物と根の構造
  葉や果実の構成要素は、鉱物の原子の秩序に従って増加する
  キク科は花の構造を決める堅固な秩序の一例である
  偽花は真の花の性質も備えている
  花の配置は特殊な数列と対数らせんに従う
  同一の解法が別の亜科や別の器官で生じた
  キク科の花の変形の特徴

第29章 無脊椎動物における構成要素の統合

  現生のヒトデと化石のヒトデの腕の数
  同一の動物群内部における構造の変化の特徴
  腔腸動物における触手の分布
  体腔の区画は典型的な数に従う
  クモと昆虫の脚の数は決まっている

第30章 脊椎動物における構成要素の付加

  脊椎動物の場合も、付加された構成要素の数は100に達するかもしれない
  化石の魚類と爬虫類における骨板の放射状配置
  脊椎動物の左右対称性はその卵の対称性と直接関係しない
  ヒトの体は双晶の原子のプランにもとづいてつくられている
  花とヒトのパターンは同じ遺伝子によって決定されている
  対称性の変化における遺伝子の役割
  原子、鉱物、植物、動物に共通した変形規則

IX 周期性を生み出す高分子と原子のメカニズム

第31章 新しいモザイクタンパク質の形成と古いタンパク質の突如とした再出現

  周期性とそのメカニズム
  タンパク質は細胞内の住所を持っている
  ヒトのタンパク質は年代によって分類できる
  新しいモザイクタンパク質は、イントロンとエクソンの組み換えによって、古いタンパク質から形成された
  タンパク質の多様性の原因となったその他のメカニズム
  様々なタンパク質は、その原子の構成にもとづいて、様々な速度で進化する
  発生と進化におけるタンパク質の多様性は同一の分子メカニズムの産物である
  イントロンの数は進化とともに増加した
  イントロンの数が減少している生物集団もいる
  複合的なメッセンジャーRNAの形成による新しいタンパク質の生産
  選択的スプライシングとエクソン─イントロンの組み換えの可逆性は、周期性の出現を理解するために鍵となる現象である

第32章 分子と遺伝子の活性化カスケードは、止まることなく機能と構造の統合パッケージを生じる

  分子カスケード──一つのホルモンが六種の分子を引き出す
  血液凝固は一〇種以上のタンパク質がかかわるカスケードによって生じる
  その他のカスケード──一つのポリペプチドから形成される六つのホルモン
  細胞には自身の安全装置が備わる
  遺伝子産物のカスケードは秩序ある発生のメカニズムである
  ファージが感染する際の遺伝子の活性化カスケード
  胚発生におけるカスケード
  ヒトの発生中に新たな遺伝子がつくり出される
  植物における調節事象のカスケード

第33章 化学的周期性と生物学的周期性との関係

  形態と機能が従う原則はすべての組織レベルで同一である
  生物の周期性は、化学レベルの周期性の特徴を継承してきた
  生物の周期性の要因である分子擬態は、電子構成の似る重要な原子が決めているのかもしれない
  生物の周期性は一般的な規則に従う

第34章 周期性は、生物の新たな変形の予想へとつながる

  科学の予想は暫定的なものである
  医学、畜産業、農業で要望の大きい遺伝子操作は生物の変形へとつながる
  遺伝子工学により、アザラシとクジラを再びつくり出すことができるかもしれない
  有袋類を水生に変える
  有袋類は滑空するが有袋類のコウモリは存在しない
  生物学的周期表の空欄を埋める

第35章 まとめと結論


訳者あとがき
監修者あとがき



■著訳者紹介

アントニオ・リマ=デ=ファリア Antonio Lima-de-Faria

1921年7月4日、ポルトガルに生まれる。リスボン大学生物学科卒、ルンド大学大学院で遺伝学のPh.D.を取得。1954年よりスウェーデン国籍。フィラデルフィア癌研究所研究員、デューク大学、コーネル大学、エディンバラ大学の客員教授、ルンド大学教授および同大分子細胞遺伝学研究所所長を経て、現在は同研究所名誉教授。スウェーデン王室・政府よりノーザンスター勲章を受賞。

1950年代以降、一貫してネオダーウィニズムの限界の突破を目指す研究活動を展開。1954年には「染色体場」の概念を定式化した。本書は、「アンチ・ネオダーウィニズム」に充填が置かれていた前著『選択なしの進化』からさらに進んで、リマ=デ=ファリア独自の進化論を体系化するために、新しい存在論を構築しようとする意欲的な試みである。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 選択なしの進化  リマ=デ=ファリア 池田清彦=監訳
  • 個体発生と系統発生  スティーヴン・J・グールド 仁木帝都+渡辺政隆=訳
  • 動物の発育と進化  ケネス・J・マクナマラ 田隅本生=訳
  • ダーウィン  A・デズモンド+J・ムーア 渡辺政隆=訳






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