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身長の神話[詳細]
大きいことはいいことか?

バイオで作られたジャイアントネズミ、宇宙を創造した巨神ガイア、
巨人を退治する英雄ヘラクレス、お姫様を守る七人の小人たち、
知識欲の権化巨人パンタグリュエル、
世界を旅する巨人ガリバー、
小さいけれど知恵のある親指小僧………


■目次より

身長の問題
1 身長を伸ばすことは可能か
  人間の成長に適用されるバイオテクノロジー
  「遺伝子移植」や「遺伝子変換」された動物たち
  遺伝子治療
  生合成した成長ホルモンは長身の妙薬?
  
2 身長の市場
  かつて身長は倒錯的な意味での関心事だった
  身長の〈密売人〉によって作り変えられた人々
  かつて行われていた身長の〈遺伝子〉操作
  小人への権力、巨人ゆえの権力
  
3 科学的規準を作りだす測定装置
  標準的身長はあるのか?
  神話の中の身長から科学的規準への移行点
  アリストテレスの統計:規準は大多数の事例に由来する
  測定と統計的手段によって規準を設定した科学時代
  毎年高くなる平均身長
  早まる身長の成熟年齢
  数値にバラつきのある平均身長

行き過ぎと後退の間で
4 評価の手段としての規準
  「規準」から「不文律」へ
  人間を計る規範としての英雄
  さまざまな英雄像
  大きさの規範としての英雄:より小さいがより強い
  英雄の身長を示唆する怪物たち
  巨人と小人の占める特別な位置
  フィクションが真実にとってかわる

5 フィクションの中の巨人
  巨大さは起源を示す方法である
  巨人化は神格化の表現
  世界の秩序のために、神は巨人と戦う
  ポリスの英雄と神話の巨人
  自我に目覚めた英雄と巨人
  
6 フィクションの中の小人
  目に見えない力を宿す小さな身体
  小型化のもたらす二つの効用:鎮静とダイナミズム
  意識の中に住んでいる小人:精神内部の神話的半世界
  乳母役をする小人、または母性の半世界
  神話の小人:普遍的な内面性と魔法の力
  アルベリッヒ:金の番人、栄光に包まれた乳母役
  ケルトの小人
  オベロン:機知に富んだ乳母役
  宮廷の小人:文学作品の中に占めた彼らの「位置」
  顔のない小人「顔」
  「不安な疎遠感」という感情
  悪のイメージの刻印
  悪魔の顔をした小人、フロサン
  大きな人物の小さな側面:批評者としての小人
  不死身の従僕
  行き過ぎと後退の間で、「身長計」の針は揺れている
  
後退と侵犯の間で
7 侵犯への誘惑
  社会的成功の要因としての身長
  背を高くするための広告
  映画のヒーローは背が高くてルックスがいい
  イメージを強制的にメディア化する
  
8 プロメテウスの帰還
  巨人パンタグリュエル:知識欲という名の巨大化
  支配者交代劇の主役、巨人プロメテウス
  理性、それは第三次世界大戦へ向けて兵器を蓄えつつある
  相対性の尺度を持った小人と巨人
  新しい憲章
  
9 身長の問題、そして人間の特殊性
  約束された人間、親指小僧
  創造的知性
  瓶の中の精、あるいは限界を見きわめる知性
  限界の問題




■著者紹介

:カトリーヌ・モンディエ = コル Catherine Mondiet-Colle
ボルドー第三大学のほか、カリフォルニアとコロラドの大学で教鞭をとる。博士論文は、『16〜18世紀間のフランス文学における小人と巨人のイメージ』。

:ミッシェル・コル Michel Colle
内分泌を専門とする小児科医。ボルドー小児専門病院に勤務。ボルドーのロバート・G・グリーンブラッド研究所発育センターの責任者でもある。


■関連書籍

希望の遺伝子 ヒトゲノム計画と遺伝子治療 D・コーエン 2500円
森の記憶 ヴィーコの巨人からソローの森まで 3800円
迷宮 都市・巡礼・祝祭…迷宮的なるものの解読 4200円
不死テクノロジー 科学がSFを超える日 E・レジス 2500円
愛と支配の博物誌 ペットの王宮・奇型の庭園 Y-F・トゥアン 2800円
科学の罠 過失と不正の科学史 A・コーン 3107円
科学の運 発見と逸機の科学史 A・コーン 2800円
眠りの魔術師メスマー モーツアルトを癒した男 J・チュイリエ 2900円
ニュートンと魔術師たち 科学史の虚像と実像 P・チュイリエ 1900円



■書評

『東京新聞』(1994年10月4日)
 「若い女性がよく結婚相手の条件の一つに挙げるものに背の高さがある。身長をめぐる悲喜劇は洋の東西を問わず枚挙にいとまがないほど。
 著者は古代人が「小人を所有」した歴史を振り返る。ホルモン異常などで発育不全の人たちが、金持ちの個人財産としてペット同様に扱われ、売買されたという。さらに「巨人」や「小人」の登場する欧州の神話・伝説などを数多く引きながら、その正・負のイメージを紹介、「身長が高いことはいいこと」という価値観に疑問を呈する。
 今ではホルモン投与で背を高くできる場合がある。さらに遺伝子操作などで身長を伸ばすことも可能になりそうだ。このような問題にも触れながら、身長について広く考えさせる」



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