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白蟻の生活[詳細]
La Vie des Termites

目次著者紹介関連図書書評


『青い鳥』の作者メーテルリンクが綴る

超越の博物誌

奥井一満=推薦

今日のわれわれ人間と同じ程度の文明に到達することのできた唯一の生物、
それこそがシロアリであると説くメーテルリンクは、
人間に先行すること一億年のかれらの文明に想像をめぐらせる。
『蜜蜂の生活』の発表から26年後、社会的昆虫の
生活をテーマにした博物文学の一つに本書が加わる。
後続の『蟻の生活』と合わせた昆虫三部作の中でも、
シロアリという盲目の生物を扱った本書は、ひときわ異彩を放つ。




■目次より

序 運命の予言者
われわれの眼前には、火星や金星や木星にみつけるようなファンタスティックな予言的社会がある。
1章 シロアリの巣
数千年の歳月によってやせほそり、蝕まれ、風化したピラミッドやオベリスクにもみえる。
2章 食物
かれらは木や根やイバラや草があるところに無尽蔵に食糧を見出しているのだ。
3章 ハタラキ・シロアリ
自然が提案しているように思えるきたない理想が、この共和国では経済的見地から実現されている。
4章 兵隊シロアリ
角製の楯と、力強い筋肉によって動く海ザリガニ、まるで悪夢からとびだしてきたような怪物たち。
5章 国王夫婦
王と女王の結婚がどのように成就するのか、シロアリ学者も意見の一致をみない。
6章 分巣
満たされることなき愛を求めて、婚約者たちは大空にむかって上昇する。
7章 被害
イスがくずれ、テーブルがつぶれ、屋根がおちる。すべてが道化の精によって仕組まれているかのようだ。
8章 神秘の力
コロニーの異常な繁栄、安定、協調、無限の存続は、一連の幸福な偶然にのみよるのではない。
9章 シロアリ社会のモラル
最後のねむりのなかにしか休息はない。病気さえも許されず、衰弱は死刑判決同然である。
10章 運命
全体は完璧になろうとし、無限に長い年月があった。だが、なぜ完璧ではないのか。
11章 本能と知能
一つの理性的行為があったのなら、複数の理性的行為があるのは自然だ。一切が無である。

文献 メーテルリンク年譜



■著者紹介:モーリス・メーテルリンク Maurice Maeterlinck

1862年8月29日、ベルギーのガンに生まれる。イエズス会の名門サント・バルブ校からガン大学に進学。法律を学び、弁護士になるためパリへ。そこでヴェリエ・ド・リラダンをはじめとする象徴主義運動の指導的詩人たちと出会い、文学に傾倒。89年、第一詩集『温室』を発表。最初の戯曲『マレーヌ王女』、さらにドビュッシーの作曲で知られる『ペリアスとメリザンド』を発表するにいたって、19世紀末の文壇に踊り出る。世界的に有名な戯曲『青い鳥』は1906年の作。1911年ノーベル文学賞受賞。49年没。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 蜜蜂の生活  モーリス・メーテルリンク  工作舎 2200円
  • 蟻の生活  モーリス・メーテルリンク  工作舎 1900円
  • 花の知恵 モーリス・メーテルリンク 1600円
  • ガラス蜘蛛 モーリス・メーテルリンク 1800円
  • 生物関連図書
  • ネイチャーライティング関連図書



  • ■書評

    奥井一満氏(北里大学教授・動物行動学)
    「生命」を透察した象徴詩人メーテルリンク
    人間のおののく魂を好んで描き、運命の神秘性と人の無力さを痛感していた象徴詩人メーテルリンクは、またこよなく自然を愛する孤独の人であった。彼にパリの耽美や喧噪よりも田園の逍遥が似合ったにちがいない。
    実際に蜜蜂を飼育し、田園の別荘での生活を楽しんだメーテルリンクは、自分の作った戯曲に影をさす人間のむなしさを払拭するように、昆虫の世界を観察し、その生きる社会の論理に驚嘆した。
    自然科学者が実証と客観性を重視する方法論にふり回され、生命を見つめる目が鈍っていたとき、じっくりと生命を考えたのが、この三部の博物誌である。




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