ノーベル物理学賞受賞後の南部陽一郎博士

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南部博士2008年11月7日シカゴにて
南部博士2008年11月7日シカゴにて 撮影:大野和基

『素粒子の宴』30年後の再会

劇的な、南部陽一郎博士のノーベル物理学賞受賞ニュースから約1ヶ月、11月15日『素粒子の宴』がようやく復刊を果たした。
さらに劇的なのが、本書で司会を担当した十川治江が、シカゴに飛び、南部博士にインタビューを行うという機会に恵まれたのだ。2008年11月7日、30年ぶりの再会が果たされた。帰国直後の十川に、南部博士の近況と『素粒子の宴』収録当時のエピソードを寄稿してもらった。

「まさか! と驚いたのが正直な感想です。毎年そういう話がありますから」
シカゴ大学に『素粒子の宴』新装版復刊を報告にうかがった折の南部先生の第一声は想像したとおりのものでした。
『素粒子の宴』の初版刊行は1979年。前年の78年夏、東京で開催された高エネルギー物理学会のために来日する南部、ファインマン、ポリツァーの3氏に、日常語で素粒子について語り合ってもらおうというのが当初の企画でした。当時クォーク理論に対して批判的だったファインマンは体調を崩して来日できなくなり、南部=ポリツァーという推進派同士の対談となりました。
その結果、後にノーベル物理学賞受賞の対象となる「対称性の自発的破れ」(南部:2008年受賞)、「漸近的自由」(ポリツァー:2004年受賞)のアイディアはどのようなもので、いかにして生まれ、周囲の反応はどのようなものだったのかユーモアをまじえて徹底的に語り合った歴史的な対話篇が成立することになったのです。
日頃は数学を表現手段とする物理学者が、自らのアイディアや物理学の醍醐味を日常の言葉でいきいきと語ってくれるので、その場に居合わせた者もわくわくしながら自然に話題に参加できる素敵な宴となりました。
南部先生は、当時からすでにノーベル賞の噂がささやかれていましたが、権威めいたところはまったくなく、あらゆる話題に少年のような好奇心で発言されているのが印象的です。 ノーベル賞受賞の騒ぎで、日常生活が乱され、いささか嫌気がさしているとのことですが、受賞がきっかけで、長い間品切れ状態にあった本書が復刊するのは、ありがたいことだと話してくださいました(十川治江)。

『素粒子の宴』司会者・十川治江と
『素粒子の宴』司会者・十川治江と

※なお、インタビューは2009年春刊行の『JAPAN NOW』に掲載予定。
『素粒子の宴』南部陽一郎+H・D・ポリツァー [2008年11月15日復刊出来]




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