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カウフマン教授、「アルチンボルド展」講演


  カウフマン教授
講演会場でのカウフマン教授

上野・国立西洋美術館で大好評の「アルチンボルド展」関連イベントとして、2017年8月4日(金)、アルチンボルド研究の第一人者、トマス・ダコスタ・カウフマン氏(プリンストン大学教授)の講演会が開催されました。

アルチンボルド展_パンフ

「ジュゼッペ・アルチンボルド―自然の変容」と題した講演は、平日ながらほぼ満員。当初の講演リストにはありませんでしたが、カウフマン教授が「糸・布・衣の循環史研究会」の招きで来日することになったため、急遽講演が追加されたそうです。

カウフマン教授は、『綺想の帝国 The Mastery of Nature: Aspects of Art, Science, and Humanism in the Renaissance』(1993年:邦訳1995年 工作舎)、および "Arcimboldo: Visual Jokes, Natural History, and Still-Life Painting"(2010) 等のアルチンボルドをめぐる著書をもち、アルチンボルド研究をリードしてきました。

ジュゼッペ・アルチンボルド《春》 1563年 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵

ジュゼッペ・アルチンボルド《春》 1563年 
マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵
© Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid


アルチンボルドというと、ホッケ『迷宮としての世界』で紹介されたことで火がつき、「シュルレアリストの先駆者」というイメージが広がっています。かつては展覧会も現代美術と関連して開かれていました。

しかし、アルチンボルドは16世紀の画家なのです。今回の国立西洋美術館の展覧会(監修者:シルヴィア・フェリーノ=パグデン氏、美術史家、元ウィーン美術史美術館絵画部長)では、アルチンボルドを16世紀に置き、当時勃興しつつあった自然科学、驚異の部屋(ヴンダーカンマー/クンストカンマー)、カリカチュア、ハプスブルク家という側面から捉え直します。

ジュゼッペ・アルチンボルド《夏》 1572年 デンヴァー美術館蔵

ジュゼッペ・アルチンボルド《夏》 1572年 デンヴァー美術館蔵
© Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56
 Photo courtesy of the Denver Art Museum


カウフマン教授の研究も16世紀の自然科学や宮廷の影響を説きます。ただし、寄せ絵はミラノ時代に生まれていたというパグデン氏に対し、カウフマン教授はハプスブルク宮廷で生まれたとし、またカリカチュアを「真面目な遊び」として積極的に肯定するなど、パグデン氏と異なる見解を述べ、アルチンボルド研究の深みを感じさせる講演でした。

「アルチンボルド展」会場 第II室 ハプスブルク宮廷:《大気》と《春》、《夏》と《火》

「アルチンボルド展」会場 第II室 ハプスブルク宮廷:《大気》と《春》、《夏》と《火》

「アルチンボルド展」会場 第III室 自然描写:ヴンダーカマー

「アルチンボルド展」会場 第III室 自然描写:クンストカンマー

アルチンボルド展
会場:国立西洋美術館(東京・上野公園) map
会期:開催中〜9月24日(日)
開館時間:9:30〜17:30(金・土〜21:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、8月14日、9月18日は開館)
主催:国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
観覧料金:当日 一般1600円、大学生1200円、高校生800円

※「アルチンボルド展」チケットを先着5組10名様にプレゼントいたします。
[オーダーフォーム]に「アルチンボルド展」チケット希望とご記入のうえ、送信してください。チケットの発送は8月21日以降になります。※終了:当選した方には発送いたしました。

カウフマン教授の唯一の邦訳『綺想の帝国』は初期の代表作。「第4章 自然の変容 アルチンボルドの宮廷的寓意」では、『四季』(春・夏・秋・冬)と対をなす『四大元素』(大気・火・大地・水)をハプスブルク家を讃えるものと解釈し、読み応え十分です。
これを機に「アルチンボルド」をアピールする帯を新しく作りました。秋以降、順次大手書店の棚に入る予定。出会ったら手にとってご覧ください。


『綺想の帝国』新帯







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