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フィルカル
『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』を巡る鬼界彰夫氏特別寄稿


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分析哲学と文化をつなぐ思想誌「フィルカル」Vol.4 No.3が2019年11月30日に発売され、巻頭にウィトゲンシュタイン研究者、鬼界彰夫先生の特別寄稿「演劇と哲学—谷賢一『従軍中のウィトゲンシュタイン』を巡る哲学的随想—」が19ページにわたって掲載されています。鬼界先生は、舞台『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』の稽古場で俳優陣にレクチャーをしてくださった方だけに、『論考』の思想を演劇によって表現することの意義について論じ、書評以上の読み応えある論考となっています。

今回書物としての『従軍中のウィトゲンシュタイン』を読んだことによる大きな収穫は、この戯曲(作者)が『論考』の思想そのもの(及びその生成)を主題としているということを確信できたことである。つまりこの作品は、ウィトゲンシュタインの哲学的思考の生成の劇的再現を介して何か別のことを示そうとするものではなく、『論考』という彼の哲学的思考の生成そのものを主題としているのである。つまり、この作品は、戯曲という形式を用いた『論考』の哲学的思考に関する「考察」だと言ってもいいだろう。書物『従軍中のウィトゲンシュタイン』という形で示された戯曲と作者インタヴューから私は以上のことを確信した。

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鬼界先生、ありがとうございました!
なお、特集1「『論理哲学論考』と文化をつなぐ 古田徹也『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』出版誌上ブックフェア」では、古田氏をはじめウィトゲンシュタインに詳しい方々によって、『論考』関連の「哲学書」以外の本や映画などが紹介される楽しい企画です。その中で、舞台の『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』を菅崎香乃氏が選び、「その観劇体験は、『秘密の日記』の読書体験と驚くほど近い」と。

さらに今号には『ライプニッツ著作集』第II期第1巻「哲学書簡」翻訳者の根無一信氏が、「新しい民俗学のための妖怪弁神論—妖怪の存在意義、そして伝承の可能性の条件に関する形而上学的考察」を寄稿。ライプニッツの『弁神論』を妖怪の存在意義に援用するという、目からウロコの論考です。「共同体が『最善』であるためには、共同体には妖怪という『悪』を含まなければならなかった…」






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