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普遍音樂[詳細]
Musurgia universalis sive ars magna consoni et dissoni

目次内容 著者紹介関連図書書評



私の蔵書で、一番の自慢はキルヒャーのほぼ完全なコレクションである。
──ウンベルト・エーコ


キターラ

『普遍音楽』は、17世紀に記された最も重要な論考のひとつであり、
バッハやヘンデルら後代の作曲家たちに多大な影響を与えた。
しかし、好奇心のかたまりであり、奇事異聞のこよなき
愛好者であるキルヒャーの想像力は、
音楽史の枠にとどまることがない。彼は彼の時代までに行われていた
ほとんどの作品形式について、ていねいに論を進める一方、ひとたび古代音楽を
俎上にあげると、その空想力と妄想力は全開となる。
ナマケモノの歌、歌う魚、猫オルガン、拡声器、盗聴装置、
会話する彫像、イオリア竪琴、
自動作曲機械などの不可思議な事物が次々に登場。さらに実験的音響論は、
「音は光をまねる猿である」という主題のもとに語られ、
宇宙の神秘と真理はパイプオルガンの音と構造の中に見出される。
驚異に満ちたアタナシウス・キルヒャーの伝説的代表作、本邦初登場。




■目次より

第一巻 解剖学

第二巻 文献学

第三巻 楽器

第一部 絃楽器
第二部 気鳴楽器、あるいは空気、風、息を吹き込んで鳴らす楽器
第三部 クルーサあるいは打楽器

第四巻 比較 新旧の音楽、二種

第一部 問題提起
第二部 実戦論
第三部 情動的音楽 

第五巻 魔術

第一部 自然哲学
第二部 協和音と不協和音の魔術
第三部 劇場の音楽
第四部 音響の魔術
第五部 奇蹟論の学智
第六部 音楽の隠匿術、秘密の記譜法

第六巻 類比 自然のデカコルドンすなわち十管の楽器

第一部 十管の楽器


*本書はアタナシウス・キルヒャー著『普遍音楽』(Musurgia universalis,1650)のアンドレアス・ヒルシュ篇のドイツ語版(1662)を基にした日本語訳である。
ヒルシュ篇で割愛された部分は、概要の解説を作成し、巻末に補説として掲載した。図版もほとんど再録されていないため、ラテン語版原著から補った。



目次・内容より抜粋

◎スコットランドの不思議な石◎ナマケモノの不思議な声
◎肉体はその気質を音や声からどのようにして推測するのか
◎古代ヘブライ人とその音楽◎ダビデの歌と詩篇の詩句
◎十七のパルムラを持つ楽器をどのように調絃すべきか
◎動物の舌と人間の舌◎猫オルガン◎エルフルトの大鐘
◎古代音楽の「驚きの仕掛け」 について書かれていることは真実か否か
◎種々の音が種々の心の状態を引き起こすかどうか その原因は何か
◎あらゆる情動を動かす作曲をどのように行うのか
◎音楽の実験—一方の絃が隔たっている他方の絃を動かす
◎治療術、すなわちどのようにして重病が音楽により治癒するのか
◎音楽によって狂乱に陥ったデンマーク王をめぐる不思議な話
◎タランチュラと音楽の不可思議な治療
◎マメルティン海で捕獲されたプシュピアという魚もしくはメジキについて
◎野原での叫び声やラッパの響きによってエリコの壁が崩潰したのは如何にしてか
◎ハーメルンの子どもたち—冒険のような連れ去りは笛によって起きたのか
◎スウェーデンの海岸の不思議な音
◎木霊の性質と不思議な作用◎ウィトゥルウィウスの劇場及びその不思議なエカエ
◎全ての言葉を繰り返す像をどのように作ったらよいのか
◎ひとりでに音を発する自動打鐘装置をどのように作ればよいのか
◎ピュータゴラースの鍛冶屋の自動音楽を比率に従って表現するにはどうしたらよいか
◎ガラスを使って、触れていない絃をどのように鳴らすか
◎神はオルガン奏者であるから、世界はオルガンと比較される
◎六日間でどのように被造物を作り上げたのか
◎石、草木、動物の天とのシンフォニー◎人間の音楽、あるいは大・小世界の照応
◎脈のハルモニアと人体の脈の動き◎愛の病を音楽でどのように癒すか
◎統治界の調和性、統治の世界音楽
◎天使はどのようにして天上の音楽を指揮するのか



■著者紹介:アタナシウス・キルヒャー Athanasius Kircher, 1601─1680

ドイツ出身の学者、イエズス会司祭。その好奇心の対象は多岐にわたり、古代エジプトとその言語と象形文字、光学や磁気学をめぐる自然学、音楽、天上界と地上界、地質学、光と影、医学、暗号論、中国学など幅広い分野の著作を残した。ヒエログリフ解読の先駆者、あるいは伝染病微小生物原因論を初めて実証的に示し予防法を提案したことでも知られる。その著作群は、一時はデカルト的合理主義の立場から批判にさらされたが、20世紀後半には、その業績の先進性と多彩さが再評価されるようになり、「遅れてきたルネサンス人」とも呼ばれるようになった。
キルヒャーの事跡の全貌については、伝記および、その著作を図版を中心に解説したジョスリン・ゴドウィンによる『キルヒャーの世界図鑑』(1986、工作舎)がある。

訳者紹介:菊池賞(きくち・ほまれ)

1965年、花巻市生まれ。東京大学卒。訳書にE.G.バロン著『リュート—神々の楽器』、V.ガリレイ『フロニモ』(いずれも東京コレギウム)他がある。



■関連図書(表示価格は税別)

  • キルヒャーの世界図鑑 ジョスリン・ゴドウィン 2900円
  • 星界の音楽 ジョスリン・ゴドウィン 3200円
  • 音楽のエゾテリスム ジョスリン・ゴドウィン 3800円
  • 宇宙の神秘 ヨハネス・ケプラー 4800円
  • 宇宙の調和 ヨハネス・ケプラー 10,000円
  • ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統 フランセス・イエイツ 10,000円



  • ■書評

    みすず2014年1・2月号 読書アンケート特集
    金森 修氏:「驚嘆すべき怪作だ。世界の本質を諧調の中にみる、いわば一般化されたピュタゴラス主義なのだが、そんな理論的規定よりも、とにかく聴覚、音、楽器などの詳細極まりない説明が執拗な博識風の列挙になっているところが面白い。それは近世から近代初頭にかけての知のあり方の一つの典型を開示している。特に後半の科学と奇想が混在した思弁が堪らない」。
    谷川 渥氏:「キルヒャーの名高い著作の邦訳がついに出た。音をめぐる精緻きわまりない考察と、荒唐無稽なまでに壮大なキリスト教的コスモロジーとの融合。西洋音楽の背景にあるものが何かを考えさせられる、文字どおりバロック的な書物である」。

    2013.12.21 谷川 渥氏が図書新聞「読書アンケート」
    キルヒャーの名高い著作の邦訳が遂に出た。音についての精緻な考察と荒唐無稽なまでに壮大なキリスト教的コスモロジーとの驚くべき融合。西洋音楽の背景にあるものが何かを考えさせる、文字どおりのバロック的書物である。

    SankeiBiz 松岡正剛氏、キルヒャー紹介
    かつて世界は自由に想像図解されていた
     異才アタナシウス・キルヒャーの驚異的編集術

    『キルヒャーの世界図鑑』には「ともかくも手にとってもらいたい。この本の想像力に富んだ奇抜な図版群を次々に見るだけで、諸君の世界観は一変するにちがいなく、この本の高速解説を読むだけで、諸君のくよくよした社会観は吹っ飛んでいくはずだ」と、『普遍音楽』に関しては、「驚くべき本だ。人類が発想しえた音楽というものの起源を、17世紀の段階で得られる知のすべてを総動員して突きとめようとしているとともに、音楽と人体、音楽と魔術、音楽と学習の比較検討を網羅的になしとげている」と。

    2013.9.21 図書新聞 松本夏樹氏書評
    巨大な巻貝装置に幻惑されて
    壮麗な世界体系に故実珍説を鏤めたキルヒャーの独壇場、
    トロンプ・ルイユ式バロック劇場の如き書

    いったいあの巨大な巻貝装置が仕込まれた建築図を初めて目にしたのは、澁澤龍彦の『夢の宇宙誌』(1964)であったのか、それともG・R・ホッケの『迷宮としての世界』(種村季弘・矢川澄子訳、1966)であったのかは、今となっては最早定かではない。いずれにせよ半世紀近くも昔のこと、相前後して見たには違いないが、この絵から受ける強烈な幻惑の力は今も相変わらずであり、本書を繙いて先ず探したのもやはりこの挿絵(273頁)であった。…

    月刊ぶらあぼ 2013.9月号
    ウンベルト・エーコ、澁澤龍彦、荒俣宏らにより高く評価されてきた、17世紀ドイツの博覧強記キルヒャーの代表作。バッハやヘンデルらに多大な影響を与えた17世紀の最も重要な論考のひとつ。キルヒャーの想像力、空想力と妄想力全開。本邦初訳。






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