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イマジナリー・ナンバーズ[詳細]
Imaginary・Numbers

栞より著者からのコメント著者紹介関連図書関連情報書評


数と式の抽象思考の果てに、
こんなにも精緻で、
かつリリカル(叙情的)な空間が現れるとは!
勝井三雄
(グラフィックデザイナー/武蔵野美術大学名誉教授)




■栞より

数学者にしか許されなかった贅沢を、私はもう羨むこともない、彼女が叶えてくれたのだから。
ミルキィ・イソベ
(グラフィックデザイナー/ステゥディオ・パラボリカ主宰/『2マイナス』発行人)


芸術家KKはコンピュータ・グラフィクスというワークスペースを得て、「心地よい空間」を求めて抽象表現の旅を続ける。
桂 英史
(東京芸術大学美術学部先端芸術表現科助教授)


木本作品の断片の前後を想起してみよう。それは薄っすらとした記憶の淵に光を当て、意識の辺縁の感触を呼び起こすのに似ている。
河本英夫
(東洋大学教授・システム論)


コンピュータライズド・デザインは、木本作品という具体的なアウトプットを得て、“新しい表現”とよべるようになった。
永原康史
(グラフィックデザイナー/国際情報科学芸術アカデミー教授)


木本作品の生む銀河系は目を開けて見る夢となりついにはCAVE(没入型三次元可視可装置)で見る光景さながらに私たちを取り巻き、降り注ぐだろう。
森山朋絵
(東京都写真美術館学芸員、東京大学大学院情報学環客員研究員)





■著者からのコメント

本書は一種の絵巻物、文字のない絵本と言ってもいい。一点一点の鑑賞というよりもページを追う流れを意識した。手に取られた方は、実験室の中で生じている出来事を観察しているようにご覧いただければと思う。それも、見る人自身が出来事の一部になって、自分も変化の一部であるという感覚で。




■著者紹介:木本圭子 (きもと・けいこ)

ヴィジュアル・アーティスト。
多摩美術大学テキスタイルデザイン科卒業。1988年頃から、コンピュータを使った数理的な手法による造形を始める。1997年頃から、さらに一歩進んで、動的表現を探る制作、研究を開始する。現在、東京大学駒場オープンラボラトリーにて、独立行政法人科学技術振興機構ERATO合原複雑数理モデルプロジェクトの技術員として研究活動中。自身のホームページEmotional Fieldでは、本書のもとになった映像をはじめ、インタラクティブな動画映像も公開している。


○個展/企画展
 1995年「木本圭子展」INAXギャラリー2
 2000年「Image Sight 2000」銀座PEPPER´S GALLERY
 2001年「触覚的視覚─木本圭子展」武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科
 2002年「数・フォルム・リズム─木本圭子展」情報科学芸術大学院大学+国際情報科学芸術アカデミー
 2003年「時の触覚---イマジナリー・ナンバーズ」art space kimura ASK?
 2004年「Imaginary・Numbers」ニューヨーク MIKA GALLERY Tokyo Art Projects,Inc.
○『2-:+』の「ドラッグ特集」でも注目される。動画映像こちら>>>
○工作舎サイトRecommended Imageにて、作品を紹介。動画もあり。



■関連図書(表示価格は税別)

  • 映像体験ミュージアム【増補版】  イマジネーションの未来へ 東京都写真美術館 2200円
  • フォトモ 路上写真の新展開 非ユークリッド写真連盟(糸崎公朗+森田信吾) 2800円



  • ■関連情報

    東京都写真美術館「恵比寿映像祭」著者参加
    東京都写真美術館で開催中の「恵比寿映像祭」に、木本圭子さんが参加しています。著書『イマジナリー・ナンバーズ』は残念ながら品切れ重版未定ですが、「動画」をお楽しみください。入場無料 事前予約制。 「恵比寿映像祭」
    日時: 2021.2.5(金)〜21(日)
    場所: 東京都写真美術館

    イマジナリー・ナンバーズ、文化庁メディア芸術祭・大賞受賞
    木本圭子氏の「イマジナリーナンバーズ2006」が、平成18年度(第10回)文化庁メディア芸術祭・アート部門で大賞を受賞しました。 2/24からは、受賞作を一堂に会した文化庁メディア芸術祭が、東京都写真美術館で開催。 受賞作品一覧
    文化庁メディア芸術祭
    日時: 2007.2.24(土)〜3.4(日)
    場所: 東京都写真美術館

    2006年 東京都写真美術館「ポスト・デジグラフィ」展へ出品
    2006.8.12〜10.15 東京都写真美術館で開催された「ポスト・デジグラフィ」展は、「デジタルコンテンツ」と呼ばれる多様な視覚分野を、歴史的作品を含む写真的リアリティ作品、リアルを超えた現代作品、体験型作品など、3つの切り口で展示を行なう画期的な展覧会。木本圭子氏は「イマジナリー・ナンバーズ」最新作を出品。大きな話題を集めました。
    東京都写真美術館「ポスト・デジグラフィ」展については、展覧会カタログとして販売された『映像体験ミュージアム 【増補版】』ページをご覧ください。

    トヨタ自動車LEXUSのメイン・ヴィジュアル・アーティストに
    2006年4月、イタリア・ミラノで行われたデザイン展「ミラノサローネ」で、木本氏がトヨタ自動車LEXUSのメイン・ヴィジュアル・アーティストに起用され、アートエキジビションが開催されました。詳しくはトヨタ自動車リリースへ>>>

    『美術手帖』2005.1月号 斎藤環「境界線上の開拓者たち」にて
    前半4頁は木本氏モノローグ、後半は斎藤氏の解説の構成。作品も多数収録され、11頁にもおよぶ力の入った記事です。

    【木本圭子モノローグ「分泌物が現れ出る】
    「この作品のどこに『私』が入っているのかって言われてもそんなの答えようがないよねえって思うんですけど、なにかそういう思考過程の分泌物が現れ出ているのではないか。」

    【斎藤環 解説「エロスと運動のダイヤグラム」】
    「『文脈なき触覚』としての純粋なテクスチャーを作りだし、わたしたちを盲目化へといざなうこと。盲目化とはすなわち、意味と投影によるロゴス化を封じ、学習と記憶を抑圧することである。その試みこそは『思考の分泌物』を蒸留する試みではなくて何だろうか」

    Imaginary・Numbers
    ニューヨーク MIKA GALLERY Tokyo Art Projects,Inc.
    会期;2004年10月15日〜11月30日

    【展覧会カタログ 木本圭子インタビューより】
    IMAGINARY と NUMBERS の2重螺旋から現われて来た作品であり、
    また、この螺旋構造からしか生まれない作品だったのです。
    動的表現におけるこの2重螺旋とは、何なのか。
    生物的・有機的ダイナミクス、とは、表現の大きな地平であり、
    それはまた異分野を繋ぐ重要な交点ではないかと思いました。
    そして、はじめの一歩として、この「問い」を
    提出することが重要なのではないかと考えたのです。-----

    時の触覚---------「イマジナリー・ナンバーズ」
    *Chameleon Project 03/4
    *プロデュース・会場構成 陣内利博
    会期:2003年11月10日〜21日
    場所:art space kimura ASK?

    【展覧会の概要】
    『イマジナリー・ナンバーズ』に収録されたビジュアルを空間に展開する。コンピュータによってヴィジュアライズされた数と式は、光となって空間のなかに解き放たれる。網膜的次元を超えて呼吸する時のゆらぎが、さまざまな空間の肌理を顕在化させてここに定着する。

    【作者のことば】
    新しい道具のなかに、空っぽがあった。
    見える形そのものより、背後の空間、時間の構成が出来ることが新鮮だった。
    このアプローチのために、出発点で形やイメージを抱くことを極力避けたかった。
    数式で定義される点、それは単独では何のイメージも意味も形も持ちえない。
    その集まり方で、刻々と変わる性格を生み出していく。
    集まり方を定める数式は、構造に関わる言語であり、
    一瞬定着される点群は、さまざまなフィールドに新しい肌理を生成する。
    時間は物差しだが、時は測れぬ肌理をもつ。
    イマジナリー・ナンバーズはこのことばかり考えた。




    ■書評

    2003.9月号 『芸術新潮』
    y=xという方程式をみたす点は座標軸の原点を通る直線を形づくる。2次方程式は放物線、とここまでは学校で習った。では、さらに高次の式はどんな形をつくるのか。コンピュータ・グラフィックスはこの問いに容易に答えてくれる。式にさまざまな変数を与え、空間を歪めたり撓めたりすると、CGに表れる運動は刻々と変化する。著者はその絶えまない運動の、ある一瞬を切り取り、解像度を上げてフィルムに定着させた。ここには、「運動の断面」の驚くべきイメージが200頁にわたり収録されている。それは禅画の一閃する筆先を思わせ、また、花弁の緻密なミニアチュールと化し、時にエロチックな陰影さえ醸し出す。著者によれば「動きとは、物が動くことではなく、空間の様子が変わっていくこと」という。あとがきには、CG上で形を構成していく方法が、数式を交え解説されているが、ほとんどわからない。それでもこの本の魅力が減ることはいささかもない。

    2003.8.10付 朝日新聞 都築響一氏
    …アーティストが用意した数式を、コンピュータがモニター上に点や 線の流れとして描き出していく、その動きをページという静止画面に定着させた作品集。子供のころに遊んだスピログラフ(お絵かき定規)の超高精度版みたいなものだが、そのミステリアスな美しさにまず息を呑む。巻末には描画生成の基本となる数式が解説されているが、ぜんぜん理解できないのが惜しい。画家が絵筆の先を尖らせるように、版画家が彫刻刀を研ぐように、コンピュータのプログラムをチューニングして彼女が描き出すのは、スピログラフ図形のような、かたちのおもしろさを探す作業のはるか彼方にあるイメージだ。点や線の動きそのものを一枚の画面で表現しようという、けなげな努力。目の前で動き続けるなにか、言い換えれば「気配」を写しとろうとする試み。それは現代の書芸術が到達した地点に、恐ろしいほど近い。




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