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宇宙の調和[詳細]
Harmonice Mundi

目次著者紹介関連図書関連情報書評


ヨーロッパ思想史上の至宝

地球もふくむ6つの惑星は、調和音を奏でながら
太陽の周りを運動する。
処女作『宇宙の神秘』(1596)で提唱した
5つの正多面体による宇宙モデルと、
ティコ・ブラーエとの共同研究により第1、第2法則をうち立てた
『新天文学』(1609)の成果を統合し、
第3法則を樹立した歴史的名著。
ラテン語原典より本邦初の完訳。
ヨーロッパ思想史上の至宝が、ほぼ400年の時をへてよみがえる。




■目次より

献辞

第1巻 調和比のもとになる正則図形の可知性と作図法から見た起源、等級、相異


正則図形の作図法

第2巻 調和図形の造形性


正則図形の造形性

第3巻 調和比の起源および音楽に関わる事柄の本性と差異

〔序〕 ピュタゴラス派のテトラクテュスについての余談
第1章 協和の原因
第2章 弦の調和的分割
第3章 調和平均と協和の3要素
第4章 協和音程より小さな諧調的音程の起源
第5章 協和音程の諧調的音程への自然な分割と名称
第6章 調性、長調と短調
第7章 各調性における1オクターブの完全な分割とすべての諧調的音程の自然な順序
第8章 1オクターブ内の最小音程の数と順序
第9章 記譜法すなわち線と文字と符号による弦や音の表記および音組織
第10章 テトラコードとウト、レ、ミ、ファ、ソル、ラの用法
第11章 音組織の複合
第12章 不純な協和音程
第13章 自然に諧調する適切な歌唱とは
第14章 いわゆる調つまり旋法
第15章 どの旋法ないし調がどんな情調に役立つか
第16章 和声による歌唱つまり装飾的な歌唱とは
3つの平均についての政治論的余談

第4巻 地上における星からの光線の調和的配置と気象その他の自然現象を引き起こす作用

序言および順序変更の説明
第1章 感覚的調和比と思惟でとらえられる調和比の本質
第2章 調和に関わる精神の性能はどのようなものがいくつあるか
第3章 神もしくは人が調和を表現した感覚的もしくは非物質的対象の種類と表現
第4章 第4巻の調和と第3巻で考察した調和の相異
第5章 有効な星位の原因および星位の数と星位の等級の序列
第6章 数とその原因において星相と音楽的協和にはどんな親縁性があるか
第7章 結語。月下の自然と精神の下位の性能ことに占星術を支える性能

第5巻 天体運動の完璧な調和および離心率と軌道半径と公転周期の起源


第1章 5つの正多面体
第2章 調和比と正多面体の親縁性
第3章 天の調和の考察に必要な天文学説の概略
第4章 創造主は調和比をどんな惑星運動の事象にどのように表現したか
第5章 (太陽から見た)惑星の視運動の比に表れる音組織の位置つまり音階のキイと長短の調性
第6章 惑星の極限運動に表現されているいわゆる音楽の調つまり旋法
第7章 全6惑星の普遍的調和は一般の対位法同様4声部からなる
第8章 天の協和でディスカント、アルト、テノール、バスになるのはどの惑星か
第9章 各惑星の離心値の起源は惑星運動間の調和への配慮にもとづく
第10章 終章 太陽推論
付録 

訳注
解説 岸本良彦
索引



■著訳者紹介

ヨハネス・ケプラー Johannes Kepler
1571年、ドイツのヴァイル・デァ・シュタット生まれ。テュービンゲン大学で学んだ後、グラーツの神学校で数学・天文学を教える。処女作『宇宙の神秘』(1596)に示された数学的才能を評価したティコ・ブラーエに招かれ、プラハで共同研究した成果を『新天文学』(1609)に発表。いわゆるケプラーの3法則のうちの楕円軌道の法則(第1法則)、面積速度一定の法則(第2法則)を確立。さらに本書『宇宙の調和』(1619)で第3法則(惑星の公転周期の2乗と太陽からの平均距離の3乗が比例する)を提示し、近代科学の基礎を築く。またガリレオが発見した木星の「衛星(satelles)」の命名者、星形多面体の発見者、最密充填問題の予想者としても科学史に名を名を残している。1630年レーゲンスブルグにて客死。

岸本良彦(きしもと・よしひこ)
1946年生まれ。1975年、早稲田大学文学研究科博士課程修了(東洋哲学専攻)。明治薬科大学教授(史学・医療倫理・薬学ラテン語担当)。
上代中国思想史および古典ギリシア語・ラテン語による哲学・医学・天文学関係の著作の翻訳研究に従事。訳書にケプラー『宇宙の神秘』(共訳、工作舎)、『ヒポクラテス全集』(共訳、エンタプライズ)、プリニウス『博物誌』「植物編」「植物薬剤編」(共訳、八坂書房)。
*訳者解説 2009/3/24更新[今週の1枚へ] >>>




■関連図書(表示価格は税別)

  • 宇宙の神秘  ケプラー 大槻真一郎+岸本良彦=訳 4800円
  • ケプラーの憂鬱  ジョン・バンヴィル 2500円
  • 星界の音楽  J・ゴドウィン 3200円
  • ガリレオの弁明  カンパネッラ 澤井繁男=訳 2800円
  • 奇蹟の医書  パラケルスス 大槻真一郎=訳 3800円
  • 奇蹟の医の糧  パラケルスス 大槻真一郎+澤元 亙=訳 3800円
  • ヨハネス・ケプラー  A・ケストラー 小尾信彌ほか訳 ちくま学芸文庫 1500円
  • ケプラー疑惑  J & A-L・ギルダー 山越幸江訳 地人書館 2200円
  • ローマのガリレオ  W・R・シーア & M・アルティガス著 浜林正夫ほか訳 大月書店 2800円
  • コペルニクスの仕掛人  D・デニス 田中靖夫訳 東洋書林 3200円
  • 誰も読まなかったコペルニクス  G・オーウェン 柴田裕之訳 早川書房 2300円
  • 磁力と重力の発見 1・2・3  山本義隆著 みすず書房 2800円〜3000円
  • 古代音楽論集  アリストクセノス/プトレマイオス 山本建郎訳 3600円



  • ■関連情報

    2009年度 日本翻訳出版文化賞 受賞
    ケプラー『宇宙の調和(Harmonice Mundi,1619)』の出版に対して、今年度の翻訳出版文化賞(日本翻訳家協会主催)を受賞いたしました。日本翻訳家協会・森泉弘次 審査委員の講評と受賞の辞、および記念写真はこちら >>>

    2009.6.5〜7.4 ジュンク堂書店9店舗にて「天文学の夜明け:魔術から科学へ」フェア
    出版社111社が集う専門紙「出版ダイジェスト」(出版梓会発行)主宰で、世界天文年にあわせ、「天文学の夜明け:魔術から科学へ」フェア開催。天文学の揺籃期の思想を軸に、地球と宇宙をどのように捉えてきたのか、コスモロジーの変遷をたどるフェアに、工作舎から『宇宙の調和』と『英国のプラトン・ルネサンス』を出品。
    ジュンク堂池袋本店での「天文学の夜明け」フェア 写真はこちら

    2009.4.16〜7.30 ジュンク堂書店新宿店フェア
    新宿のジュンク堂書店7F思想書棚で、工作舎の関連図書を集めたミニフェアを開催。
    ケプラー/ジュンク堂新宿フェア 写真はこちら




    ■書評

    2009.7.25 図書新聞・上半期読書アンケート 金森修氏
    素晴らしい本がでた。いわゆるケプラーの第三法則を提示した本だ。だが、それよりもむしろ、細部の記述によってケプラーを当時の思想史的文脈の中に位置づけることができる。それは、科学史としても、思想史としても、極めて興味深い知的体験になる。重厚な古典の出版を実現した訳者と出版社に心からのエールを送りたい。

    2009.6.12 週刊読書人 金子 務氏書評
    天体運動の完璧な調和を求めて
     17世紀科学革命の旗手の代表作

    …この表題「宇宙の調和」といい、執拗なまでも音楽理論の解明に力点をあてた内容といい、ケプラーの理論的哲学的意図がどこにあるかは明白である。的確な訳注を参考にして操っていけば、宇宙の調和とは、自由七科の実践的分野、算術・幾何・音楽・天文の四教を貫く調和比問題を指すことがよくわかる。
    ケプラーは幾何学図形を手始めに、音楽理論の調和論に徹底的に踏み込み、占星術研究を進め、天地の光の調和を吟味してから、終章に至って、これまでの長い宇宙的調和比論の成果の一つとして、輝かしいあのケプラーの第三法則、「惑星の公転周期の自乗は平均軌道半径の三乗に比例する」が示される。第五巻結論の中で、「調和的整序は単純な幾何学的整序に優る」という言葉で、自分の長い研究史を総括している。問題の第五巻は本書全体の四分の一を占めるに過ぎない。しかし、あの時代のケプラーの思考と時代を追体験するには、まことに希有な証言の書である。… 週刊読書人サイト

    2009.5.25 鏡リュウジ氏ブログ
    ケプラーの占星術
    すんごい本の翻訳が出ました。…これを読めば、ケプラーの独創の下には、プトレマイオスから多くのアラビアの占星術が存在しており、さらにそれをプラトン主義と接続させようとしていることがわかるでしょう。 …地球の自然も壱個の精神であり、精神には神が定めた調和的なコスモスのイデアが存在している。 天空でそのイデアと呼応する惑星の配置(つまり数学的イデア)が形成されると地球の魂はそれを直感的に想起して、自らを動かすのだ、ということ。 この考え方は、400年以上のちのユングの元型論やシンクロニシテイ論へと流れ込んでいくものですね。 近代人が失ってしまった、緊密で、ある種色っぽい天と地の響きあいをこのなかに感じます。
    そしてそれは、確実にぼくたちの占星術のなかで生きているのです。 全文はブログ「鏡リュウジのRyuz-cafe」

    2009.5.31 中日新聞/東京新聞 三田誠広氏書評
    惑星が奏でる美しい音楽
    …今回、初めて完訳が出たこの本では、ケプラーはより完璧で、より美しい構想を提示している。それが宇宙の音楽という構想である。惑星は音階と和音を奏でながら楕円軌道を描いている。この美しいプランは、ニュートンを知っている現代のわたしたちにとって、物理学としては意味のないものだが、文学としては大いに刺激的なものだ。これはダンテの『神曲』に匹敵する仮想のオペラといってもいい。
     翻訳の文章がいい。宇宙論というよりもひたすら音階と和音の原理を追求しつづける執念のようなケプラーの探求心と半ば酔ったような法悦が、文章からあふれ出してくる。無人島にもっていくただ一冊の本に、わたしはこれを選びたい。昼間はこの本を読み、夜は星空を見上げる。するとケプラーが聴いた宇宙の音楽がわたしの耳にも伝わってくることだろう。全文は中日新聞/東京新聞サイトへ

    2009.6月号 科学 紹介
    日本語で読めることの幸福!…地球はMI-FA-MIと歌うので、「MIseria(悲惨)とFAmes(飢餓)が勢威を振るう

    2009.5.3 毎日新聞 村上陽一郎氏書評
    地球は「ミ・ファ・ミ」 六惑星の壮麗な音楽
    …伝統的なリベラル・アーツの七つとは何か。論理学、修辞学、文法からなる「三科」と、天文学、幾何学、算術、音楽からなる「四科」がそれに当たる。だれでも判るように、三科は言葉についての基礎であり、四科は自然に向かう際に求められる基礎である。いや、まて。天文学はもちろん、幾何学も算術も数学の一部だから、それはよいとしても、音楽とは何事だ。
    このもっともな問いに対する、最も適切かつ明確な回答が、ここにある。通常近代天文学の創始者の一人に数えられるケプラーの、重要な三部作の最後を飾る書物である。
    …ケプラーが生涯の主題としたのは、まさしく、これら「四科」を総合しながら、自然、あるいは宇宙に向かうことだった。そしてこの『宇宙の調和』という書物こそは、こうした試みの頂点に立つ。因みに、そうした点を考えれば、ケプラーは決して「近代的」天文学者ではなく、彼が生きたルネサンス時代を代表する、最も傑出した自然哲学者だ、と考えるのが妥当ではないか。…全文は毎日新聞 書評サイトへ

    本のメルマガ/ウラゲツ☆ブログ 五月氏
    ケプラーの『宇宙の調和』を出版することはある意味でとてつもなく時代的遅れのように見えるかもしれないが、それは全く違う。科学技術の進歩に無自覚に乗っかってきた現代人が平然と忘却したままでいるところの何ものかを取り戻すために、あの「分水嶺」に私たち自身も立ち会うことがついに今許されようとしているのだ。現代人が自滅する前にこの幸運を享受できるというのは、誰が認めようと認めまいと、またとないまれなチャンスなのである。 「本のメルマガ」バックナンバーへ

    感動で鳥肌がたつ思いです。21世紀の初頭にまさかこうして完訳を手に出来るとは思いませんでした。しかも、『ライプニッツ著作集』を出した工作舎さんからですから当然造本も装丁も、愛蔵するに足る堂々とした出来栄えです。今回、同時に『宇宙の神秘』(大槻真一郎+岸本良彦訳)の新装版も刊行。『調和』は『神秘』の倍のお値段なので安くはありませんが、購読する人を選ぶでしょうから仕方ありません。全文は「ウラゲツ☆ブログ」へ




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