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屋久島の時間[詳細]
「屋久島の時間」がどういうものなのか、じつは定住十三年目にしてまだうまく表現できない。
もちろん都会のあわただしさとは別な時間感覚があるのだが、
かといってもっと南の止まったような時間の流れともちがうし、
冬の厳しい北国のめりはりのきいた時の移ろいとも異なる。
とくに照葉樹の森に囲まれたわが家は、一年中どこへ目を転じてもことごとく緑で、
「緑に染まる時間」とでも呼ぶにふさわしい暮らしのリズムが刻まれる。
(あとがきより)


■目次より

1月 雪見の湯
   海辺の温泉で迎える新年/白銀の奥岳/安房林道のヤクザル
   屋久杉の倒木上更新/ヤクジカの声
2月 着地の儀
   わが身から出たものを土に返す/木の芽流し(2月〜3月期の梅雨)をつげるアオモジ
   モッチョム岳/半農半著生活
3月 春一番
   潮汲みからはじまる米づくり/桜流し(3月〜4月期の梅雨)
   アブラゼミの初鳴き/常緑照葉樹林の森
4月 夢時間
   沖合にやってきたイルカの大群/竹の子狩り/サシバの北帰行
   代かき/夏野菜の植え付け/ポンカン・タンカンの花の香
5月 岩穿つ
   非木材紙のパルプ原料ケナフの種を蒔く/森と共存する農業の道へ/草刈地獄
   ハゼまけ(ウルシかぶれ)/カワラサツキの赤と漆黒のアゲハチョウ
6月 エコツアー
   “遠いまなざし”との出会い/ジオラマとしての屋久島/千尋滝(せんぴろだき)
   アブラギリの白い花/ウミガメの産卵
7月 星天井
   黒味岳山頂360度のパノラマ/梅雨(本流し)明け/ホタル
   発光キノコ/ヒメシャラの巨木/プレアデス
8月 風の道
   台風シーズンと重なる収穫時期/稲刈り/7メートルの大波見物
   ペルセウス座流星群/マングローブの花
9月 至福の海
   マツムシの大合唱を求めて夜の観音ドライブ/冬野菜の種蒔き
   エンツァイなど夏野菜の「ばっかり食」の終わり/トウガン/磯遊び/アクアマリンの宇宙
10月 鷹柱
   南の島に向かうサシバたちが螺旋状に昇ってゆく/ヤクシマフヨウのピンクの花
   ヒヨドリ/カライモの収穫/在来植物への配慮
11月 目から鱗
   出力100ワットの「モッチョム発電所」の誕生/オリオン
   ツワブキの黄色い花/ビワの花の甘い香/カブ・大根・青菜・ニンジン
12月 舌鼓
   旬のシマアジ/冬台風/山紫水明のエコロジー
   12月8日=ジョン・レノンの命日




■著者紹介:星川淳 Jun Hoshikawa

1952年東京生まれ。九州芸術工科大学(環境設計)、米国ワールドカレッジ・ウエスト(地球科学/適正技術)中退。生活に根ざした心と社会の“緑化”をライフワークとする作家・翻訳家・屋久島環境政策研究所主宰。
 著書に『地球生活』(平凡社ライブラリー)、『エコロジーって何だろう』(ダイヤモンド社)、小説『精霊の橋』(幻冬社)など。訳書はラヴロック『地球生命圏』『ガイアの時代』、ノルマン『地球の庭を耕すと』(以上工作舎)、リフキン『地球意識革命』(ダイヤモンド社)、ベイトソン『天使のおそれ』(青土社)、メイシー『世界は恋人 世界はわたし』(筑摩書房)、フォックス『トランスパーソナル・エコロジー』(平凡社)、ネスほか『地球の声を聴く』(ほんの木)ほか多数。


■関連図書

地球生命圏 ガイアの原点 J・E・ラヴロック 2400円
ガイアの時代 地球生命圏の進化 J・E・ラヴロック 2330円
地球の庭を耕すと 植物と話す12か月 J・ノルマン 1900円
鳥たちの舞うとき 市民科学者の最後のメッセージ 高木仁三郎 1600円
遺伝子組み換え食品は安全か? 欧州エコロジー研究所からの警告 J-M・ペルト 1600円
滅びゆく植物  失われた緑の楽園 J-M・ペルト 2600円
自然をとり戻す人間  21世紀のエコロジー経済学 J-M・ペルト 2800円
本朝巨木伝 日本人と「大きな木」のものがたり 牧野和春 2200円
桜伝奇 日本人の心と老巨木めぐり 牧野和春 2800円
新ターニングポイント ポストバブルの指針 F・カプラ 1900円
タオ自然学 現代物理学の先端から東洋の世紀がはじまる F・カプラ 2200円
生命潮流 来たるべきものの予感 L・ワトソン 2200円
ホロン革命 個と全体のシステム論 A・ケストラー 2800円
精神と物質 意識と科学的世界像をめぐる考察 E・シュレーディンガー 1900円
断片と全体 ホリスティックな世界観への実験的探究 D・ボーム 1900円


■書評

西脇尚人氏(bk1 2001年9月22日)
「この本は何月から読んでも楽しめる。同時にあらゆる角度からも愉しめる。その独自の自然に驚くこともできる。著者の裏打ちされた教養に知的興奮を味わえる。親子の何気ない会話に頷くことも出来る。こんな贅沢なエッセイも珍しい。
 エコロジーが、生態系が、緑が、水が、肥料が、ここでは楽しく踊っている」
全文はこちら>>>

『西日本新聞』(1995年7月23日)
 「有機農業に汗を流しながら執筆する「半農半著」の生活ぶり、忍び寄る環境汚染への警告などが、鋭い観察眼と批評精神で、味わい深くつづられている。
 屋久島も観光地化が進んでいる。ヤクザルが人を恐れず、エサをねだるようになった。
 「野生動物に餌をやることは彼らをスポイルし、その社会や文化を変質させてしまう」から「心を鬼にして石つぶてを注ぐ」著者なのだ。
 屋久島に住んでいると「圧倒的に植物の息吹が強い自然と接し、野菜や果物を育てるうちに、少しずつ気が長くなってきた」「植物のスピードで考えるようになった」「自然といっしょに考える、ということかもしれない」
 そう著者は言う。
 屋久島の素晴らしさだけを歌い上げているわけではない。島に家族と住んで、地球全体を眺めている、そんな好著だ」



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