工作舎 > 特集 > 消されたのは誰か? > 参考資料 > (3)小川の調査による大江論文から大江本にいたる剽窃証拠書類



資料6[剽窃証拠書類09] 

編集者小沢氏の回答に対する反論

工作舎 十川治江氏による、講談社社長 野間佐和子氏への「抗議および要請書」に対して、編集者 小沢久氏から送られてきた「回答書」には、以下のように書かれています。

「本書冒頭に小川眞里子氏のエッセイ集『うらやましい人』の内容が無断借用されているとのご指摘ですが、執筆にあたり著者が参考にしたのはそれより7年前に書かれたフェルシング著『ノーベル・フラウエン』(1996年)とのことです。小川眞里子氏の『うらやましい人』の中にフェルシングの分析結果を一部整理した箇所があり、確認のために目を通しただけのようです。」

(文中の『うらやましい人』は日本エッセイスト・クラブ編が正しい。小川のものは所収エッセイの一つ「10人の女性ノーベル賞受賞者」)

しかし、以下にフェルシングの該当箇所に言及し、フェルシングのものと小川のものとの相違を示して、大江氏が編集者に伝えた内容は誤っていることを示したく思います。

フェルシング 『ノーベル・フラウエン』田沢・松本訳 学会出版センター 1996 年

6頁 : もし同僚たちへのノーベル賞授賞が行われる4年前に亡くなっていなければ、おそらく彼女は受賞者の中に加わっていたであろう。
17頁 : 仮にロザリンド・フランクリンが1962年まで生きていたとしても、ワトソン、クリックおよびウィルキンスとともにノーベル賞受賞の列に加わっていたかどうかは確実でない。その場合に、彼女の受賞を恐らく阻んだのは、最高3人までしか共同受賞することができないというノーベル財団の規約だけではない。ロザリンド・フランクリンの属する研究部門で行われた、彼女の研究業績に対する組織的な中傷もまた、恐らく不利に働いたことだろう。

『ノーベル・フラウエン』は、6頁と17頁でフランクリンの受賞の可能性について、意見を変えています。ただし17頁での受賞できないと推測する理由を、ダブルスタンダードによるものとはしていません。

小川は、彼女が受賞できなかった理由を、ダブルスタンダードとしており「10人の女性ノーベル賞受賞者」で次のように書きました。

フランクリンは残念ながら62年を待たずに亡くなってしまっているので断言することはできないが、生きていたとしても彼女の受賞を想像するのは非常に難しい。それというのも独身女性として初めて、バーバラ・マクリントックがノーベル賞を受賞することになるのは1983年であり、一流の科学者といえども、まずは良き妻良き母であるべきとする制約が解消されるまでにまだ20年もの歳月があったからである。・・・・しかも彼女たち3人の受賞年齢が、マクリントック、リタ・レヴィ=モンタルチーニ、ガートルード・エリオンそれぞれ81歳、77歳、71歳という高齢であることは意味深長である。彼女たちの業績評価に年月を要することがあったとしても、またノーベル賞委員会が評価にいっそう慎重になってきたことがあったとしても、キュリー母娘が30歳代で受賞し、その後の女性が50歳代で受賞していることを考えると、過去において彼女たちの受賞が見送られてきた可能性は否定できない。

講談社ブルーバックス大江氏の本

不幸にして、ロザリンドは1962年を待たずしてガンで亡くなってるため、「故人は対象とならない」ノーベル賞を手にするチャンスはなかったが、仮に生きていたとしても彼女が受賞できたかどうかは微妙である。・・・・・他方のロザリンドの場合、もちろん早世したということもあるが、やはり「何の後ろ盾もない女性研究者」ということが大きく影響していたかもしれない。独身女性として初めてノーベル賞を受賞したバーバラ・マクリントックが、同世代のメイヤーやホジキンの受賞から20年も遅れたのも、そのことを物語っている。さらに、マクリントックに続く二人の独身受賞者についても、その受賞年齢に注目すると、レヴィ=モンタルチーニが77 歳、エリオンが71歳というように、いずれも高齢であることもそれを裏付けている。キュリー母娘が30歳代で、その後の4人が50歳代で受賞したことを考えると、やはり独身3人の受賞が過去において検討されながら見送られてきた可能性は高い。

別添の資料に示すように、著者大江氏が、上記の本を出版する前に2003 年6 月の『未来材料』(資料2)の原稿を書くに当たって、小川眞里子『フェミニズムと科学/技術』(資料1)から盗用していることは誰の目にも明らかです。彼は、ブルーバックスを出版するに当たって、小川のエッセイ「10人の女性ノーベル賞受賞者」を参照して、新しく情報を付け加えています。2003 年時点で小川にならって大江氏が挙げた新聞の見出し1 例は、講談社本では小川の「10人の女性ノーベル賞受賞者」に連動して3例になっており、「確認のために目を通しただけのようです」というのは、まったくの虚偽としか考えられません。事実確認もしないまま、でたらめな著者の言葉を鵜呑みにして返事をする編集者は、きわめて無責任です。まして、小川がフェルシングの分析結果を盗用しているがごとくに言うのは、事実誤認と言わざるをえません。

小川についての記述一つ取ってみても、小沢久ブルーバックス編集者の「回答」は、講談社社長に宛てた工作舎十川治江氏に対する回答として、まったく不適切なものであると考えます。

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