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ピカソの椅子

ピカソが1973年4月8日に没した後、写真家デイヴィッド・ダグラス・ダンカン(1916〜2018)は南フランス、ムージャン、ノートル・ダム・ド・ヴィのピカソのアトリエを撮影した。

そこでは空の椅子が、住む人のいなくなったアトリエのパルス・プロ・トトとして、この美術家を暗示している。それに添えたテクストは、ここで略述した関係を言いかえている。「ここでは、ある日曜の朝、彼を知っているすべての人にとって時間が止まったままになっている。このアトリエは固化して、ピカソの最後の自画像になった」。

ピカソ自身、この演出を前もって準備していた。例えばパリのピカソ美術館所蔵の1955年10月29日の鉛筆素描がそのことを示している。この素描は、カンヌの別荘ラ・カリフォルニのアトリエの一角を描いたものと考えられる。よく似た空の椅子が、パレットの載る、背もたれのない椅子と向きあっている。ピカソは自分の不在を主題にしているのである。マダム・タッソーのロンドンの蝋人形館において再度、このメタファが椅子に座るピカソの〈生きた〉姿に置きかえられたことはよくわかる。


ダンカン《ピカソのアトリエ》 ピカソ《パレットと向きあう空の椅子》
左)ダンカン《ピカソのアトリエ》 1977 ムージャン、ノートル・ダム・ド・ヴィ
右)ピカソ《パレットと向きあう空の椅子》 1955 パリ、ピカソ美術館

《椅子に座るピカソ》
《椅子に座るピカソ》
ロンドン、マダム・タッソーの蝋人形館

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