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自然とギリシャ人[詳細]

原子の究極の姿をめぐって、素粒子物理学が混迷の時代を迎えていた1948年、
シュレーディンガーは、ロンドン大学で講演を行った。
「現代物理学の誤りは、ギリシャ哲学の時代にすでに始まっていた──」
パルメニデスが想定し、ピュタゴラスが数学的に発展させ、ミレトス学派が深化させ、
ヘラクレイトスが喝破した「理性的・客観的世界像」。
それがやがて、デモクリトスの「アトム」へと結実し、ガッサンディ、デカルトを経て、
現代の素粒子物理学にまで脈々と受け継がれてきたのだ。
科学者・シュレーディンガーが、「感覚」対「理性」、「科学」対「宗教」、
「私」対「客観的世界」の哲学的問題に挑んだ、
20世紀の名篇。本邦初訳……



■目次より

第1章 古代の思想にたちもどる動機
第2章 理性と感覚の統合
第3章 ピュタゴラスの徒
第4章 イオニアの啓蒙
第5章 クセノファネスの神・エペソスのヘラクレイトス
第6章 原子論者たち
第7章 科学的世界像の特性

付録 年表・地図




■著者紹介:エルヴィン・シュレーディンガー Erwin Schrodinger 1887-1961

ウィーンに生まれ、ウィーン大学に学ぶ。偉大な物理学者ボルツマンの影響の強かった同大学で物理学を研究すると同時に、進化論やショーペンハウエルの哲学を学ぶ。1921年、チューリヒ大学教授に就任。ハイゼンベルク、ド・ブロイらによる新しい量子力学の興隆に刺激され、自らも「波動力学」を開示する。1933年、ノーベル物理学賞受賞。その後、電磁気力と重力の統一理論を考究する一方、『生命とは何か』(岩波新書)や『精神と物質』(工作舎)のような哲学的考察にも優れた成果を発表。
1997年には生誕百年を記念して、シュレーディンガーの業績をたたえるシンポジウムが世界各地で開催された。主な著作はほかに『波動力学論文集』『統計熱力学』『時空の構造』(共立出版社『シュレーディンガー選手』所収)、『わが世界観』(ちくま学芸文庫)など。




■関連図書

精神と物質 意識と科学的世界像をめぐる考察 E・シュレーディンガー 1900円
シュレーディンガーの思索と生涯 波動のパラダイムを求めて 中村量空 2400円
アインシュタインの部屋 上・下 プリンストン高等研究所に集う天才たち E・レジス 各1800円
アインシュタイン、神を語る 宇宙・科学・宗教・平和 W・ヘルマンス 2200円
タオ自然学 現代物理学の先端から東洋の世紀がはじまる F・カプラ 2200円
量子の公案 現代物理学のリーダーたちの神秘観 K・ウィルバー編 2400円
断片と全体 ホリスティックな世界観への実験的探究 D・ボーム 1900円
ホロン革命 個と全体のシステム論 A・ケストラー 2800円
地球生命圏 ガイアの原点 J・E・ラヴロック 2400円
ガイアの時代 地球生命圏の進化 J・E・ラヴロック 2330円



■書評

『毎日新聞』(1992年1月6日)
「本書は1948年の講演をもとにしている。それゆえ必ずしも新進の思想が盛られているわけではない。だが今でも極めて新鮮である。古典とはすべからくこうしたものであろう。
 シュレーディンガーが本書で論じているのは古代ギリシャの自然哲学である。不朽の存在を説いたパルメニデス、数学的な宇宙像を提出したピュタゴラス、それに現代の素粒子論の根源とも言うべきデモクリトスの原子論などが、現代科学の思想的起源として現代に蘇生される。
 とりわけ、デモクリトスの原子論についての解説は魅力的である。
 原子論は17世紀にヨーロッパの思想世界に甦り、近代科学の機械論的思考の基礎となった。著者によれば、近代科学は一般にこの仮説の上に建設されることによって脱魔術的になる。が、この仮説は所詮、仮説にとどまる。デモクリトスは言う。「われわれは真実には何物も知らない。真理は深きに潜むからである」。大きな理論を産める思想的基礎がここにあるのである」



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