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「デレク・ベイリーを聴く会」vol.08報告

「デレク・ベイリーを聴く会」vol.8の会場内
「デレク・ベイリーを聴く会」vol.8の会場サウンドカフェ・ズミ。

日本人でデレク・ベイリーを撮影した写真家は何人もいらっしゃいますが、1978年の初来日時に、ツアーやレコーディングの模様を含めて、ほぼ密着するかたちで撮影を担当されたのが、今回の特別ゲスト、五海ゆうじさんです。

第8回を迎えた「デレク・ベイリーを聴く会」では、五海さんに当時撮影された未発表カットの数々をスライドでご紹介いただきつつ、いつものように年代順ではなく、五海さんのご指定によるデレク・ベイリー関連作を聴きました。 (dzumi.list8.pdf)


「デレク・ベイリーを聴く会」vol.8の進行

皮切りは間章プロデュースで、1978年のデレク・ベイリー初来日時にレコーディングされたDuo & Trio Improvisation(Kitty Records MKF1034)。ジャケット写真は五海さんの撮影によるものです。

Duo & Trio Improvisation

「この写真はレコーディング中に撮影したものではなく、コマーシャル撮影などで有名な六本木スタジオの中にある通称<ブラックスタジオ>という壁面が真っ黒に塗られたスペースで撮影したものです。対比させる赤い布はこちらで用意しました。デレクもこのときの撮影が印象的だったようで、十数年後に会ったときに、あのときのフォトグラファーだろと覚えていてくれましたね」。

このアルバムにはタイトル通り、デレク・ベイリーと、日本側の吉沢元治(b)、近藤等則(t)、阿部薫(as)、高木元輝(as, ts)、土取利行(d, perc)らとのデュオ/トリオ演奏全7セッションが収録されています(2003年に日本のみでリリースされた紙ジャケット仕様リマスター版限定CDでは、未発表の4つのセッションがボーナス・トラックとして収録)。セッションの組み合わせなどは、すべて間章氏が指示をしていたようです。それぞれの個性がみごとに発揮されたセッションの内容に、五海氏も「久しぶりに聴きましたが、やはりすばらしいですね」と感嘆。

五海さんはアヴァンギャルド音楽雑誌『G-Modern』(PSF刊)で、1992年の創刊以来、「自由の意思」というフリーミュージシャンへのインタビュー&写真撮影の連載を続けてらっしゃいました(現時点での最新号は2010年刊の29号)。2003年にこの連載を一冊にまとめて写真集を作るにあたって、登場したミュージシャンたちに未発表の音源を提供してもらい、附録のCDを付けることを思い立ち、デレク・ベイリーにも代理人を通して依頼。
「お金は払えませんということを前提で、代理人に頼んだのですが、とんでもないと断られた。それでも、なんとかデレク本人に伝えて欲しいと、食い下がったんですね。そうして少したったら、突然、音源が入ったカセットテープが送られてきました」。

今回、その音源を聴きましたが、溌剌とした勢いが感じられる演奏で、かつてブラックスタジオで撮影してくれたフォトグラファーへの最大限の敬意が込められているのではと感じ入りました。

続いて、1996年にレコーディングされたDerek Bailey/Pat Metheny/Gregg Bendian/Paul Wertico The Signs of 4 (Knitting Factory KFW197)。五海さんが中国の即興演奏家・李剣鴻 Li Jianhongを取材した際(『G-Modern』29号・2010年・PSF刊の巻頭インタビュー)、このアルバムから大きな影響を受けたと語ったことがとても印象的だったとのこと。
「中国にも、こうしたデレク・ベイリーの演奏を聴いて、影響を受けたアーティストがいるんですね」。 http://lijianhong.com/

The Signs of 4

関連して、その中国の即興演奏家・李剣鴻Li Jianhongのアルバム環境即興 Environment Improvisation(C.F.I Records, 2010)も聴きました。3枚組CDのうちの1枚、十二境 Twelve Moods。激しい雨音のなかでのギター即興演奏は、デレク・ベイリーをステップに、自らの世界を切り拓いていく意欲が感じ取れました。

今回もご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

十二境 Twelve Moods

さて、「デレク・ベイリーを聴く会」vol.09の特別ゲストは音楽評論家の湯浅学氏。先ごろサン・ラー生誕100年を記念して、本邦初の研究本『てなもんやSUN RA伝:音盤でたどる土星から来たジャズ偉人の歩み』(Pヴァイン)を刊行されました。vol.09案内はこちらへ

『てなもんやSUN RA伝』

また、年内最後の「デレク・ベイリーを聴く会」は、12月27日(土)の18:00〜で、特別ゲストにKILLING TIME、AREPOS、おU、ヒカシュー等で活躍するキーボード奏者/マルチ・インストゥルメンタリスト/作曲家の清水一登氏(http://www.poseidon.jp/OU/)をお迎えします。引き続き、よろしくお願いします。



五海ゆうじさん 写真家の五海ゆうじさんは1947年、島根県出雲市生まれ。1973年に崔洋一氏、篠毅氏、ヒロヤマガタ氏らとJIM設立。同時期にベース奏者の吉沢元治氏の演奏シーンを追う撮影もスタート。その後、広告、映画、雑誌等を主な活動の舞台にし、1976年には五海ゆうじ写真事務所を設立されました。現在は料理、花、風景、人物ポートレートなど、幅広いジャンルの写真を手がけていらっしゃいます。 http://www.ab.auone-net.jp/~itsumi/index.html

ベイリー初来日時の西武劇場公演チケットの半券 サウンドカフェ・ズミのオーナー泉秀樹氏が大切に保存しているデレク・ベイリー初来日時の西武劇場公演(1978年4月13日PM6:30スタート)チケットの半券。

『自由の意思:アンダーグラウンドミュージシャン達』
デレク・ベイリーを含むフリーミュージシャン29人のインタビューと写真を収録した五海氏の写真集『自由の意思:アンダーグラウンドミュージシャン達』(PSF刊)。掲載アーティスト9組の未発表音源CD付で、限定500部。ご購入はこちらから。

『自由の意思』の附属CD 五海氏の写真集『自由の意思』の附属CDには、今井和雄、吉沢元治、デレク・ベイリー、石塚俊明、灰野敬二、川仁宏、向井千恵、三上寛&浦邊雅洋ら計9組のアーティストの未発表音源を収録。

『OUT TO LUNCH! 阿部薫写真集』 五海さんはサックス奏者の阿部薫とも親交があり、2013年には『OUT TO LUNCH! 阿部薫写真集』(K&Bパブリッシャーズ刊)を刊行。

デレク・ベイリーを聴く会vol.09

「デレク・ベイリーを聴く会 」vol.09 :70年代の音源[7]
ゲスト:湯浅 学(音楽評論家)
2014年11月29日(土)18:00〜

会場:Sound Cafe dzumi サウンドカフェ・ズミ(吉祥寺)
 JR吉祥寺駅南口より徒歩5分
 武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F tel:0422-72-7822
入場料:1500円(ドリンク付)
先着20名 要事前予約:event.dzumi[a]jcom.home.ne.jp([a]を@に変えてください)
件名「デレク・ベイリー」、氏名、人数、お電話番号をご連絡ください。
*満席の場合はお立ち見となりますので、できるだけご予約をお願いします。



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