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第2回 作品によるオマージュ

カノーヴァのためのモニュメント

ヴェネツィア、フラーリ聖堂北側廊の西正面入口近くには、イタリアの彫刻家アントニオ・カノーヴァ(1757〜1822)のためのモニュメントが設置されている。

葬列がピラミッド前面の扉に向かう。先頭の婦人は彫刻の寓意像で、ヴェールで全身を覆い、遺灰をいれた壺をもち、奥に向かって半開きになった扉からピラミッドの中へ足を踏みいれようとしている。これにつき従うのは絵画と建築の寓意像である。左手では、ヴェネツィアの守護聖者聖マルコのシンボルのライオンがカノーヴァの死を嘆いている。扉の上には大文字でカノーヴァの名前が記され、その上で、飛翔する天使がカノーヴァの横顔の浮彫をいれ、蛇によって囲まれたイマゴ・クリペアータ(円形肖像)を支えている。


ザンドメネギ他《カノーヴァ・モニュメント》
ザンドメネギ他《カノーヴァ・モニュメント》
1827 ヴェネツィア、フラーリ聖堂. 
[© Didier Descouens CC BY-SA 4.0 from Wikimedia Commons]

このモニュメントは、ヴェネツィア美術アカデミア院長で、カノーヴァの伝記を書いた彫刻家レオポルド・チコニャラの主導で、カノーヴァの六人の弟子たちが分担して、1822年から1827年にかけて制作した。フィレンツェ、サンタ・クローチェ聖堂のミケランジェロの墓廟でも、弟子たちが分担して彫刻を制作した。このカノーヴァ・モニュメントはこうした伝統を踏襲している。

しかし、なによりも注目すべきは、それがカノーヴァ自身の作品にもとづいていることである。カノーヴァは1790年、ジローラモ・ツリアンから、フラーリ聖堂に葬られているルネサンス期のヴェネツィア画家ティツィアーノ(1488/90頃〜1576)のためのモニュメントの制作を依頼された。ツリアンはカノーヴァの支援者で、ヴェネツィア大使としてヴァティカンから派遣された人物である。

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